26-7.愛し合う事しかできない
「は……はぁ……ごめんね、こんな外で発情期のネコみたいに……、しかも先にいっちゃって……情けない」
「――ううん。幸せだった、すっごく」
達したせいで疲れたのか、寄りかかってくるガイの頭を撫でながらミミューがにこにこと笑った。寄りかかったままでいるガイの耳元に口づけを落としながらミミューが言った。
「ありがとう、ね」
「ん……?」
「僕の事嫌いにならないでくれて――」
また泣きそうになっているミミューの顔を見上げながらガイが微笑を浮かべる。
「……。だけど俺は止めないよ」
「エ?」
「ヒーローを追うのを止めない。だから……だからミミューも、その、自分の思う形で……正義を貫いて欲しい、というか……うーん……上手く言えない……」
困り果てたようにガイが頬を掻いた。それでミミューがまたちょっぴり笑った。
「もうもう……、ガイってば大好き!」
色々と考えるのは止めて、ミミューがガイに抱きついた。それはいつもの二人と何ら変わりのないやりとりのようで、こうしていると何もかもが無闇に平和になったように思えるから不思議なのだった。
「ちょっとトイレ行ってきてもいい?」
コーラ事件でてんやわんやになっている中、雛木がぼそりと呟いた。
「と、トイレ?……ん、ああ、お好きにどうぞ」
「すぐ戻りまーす」
雛木がワゴンからひょいっと飛び降りて行く。
「何かベタベタする……」
セラが嫌そうに顔にぶっかけられたその液体についての感想を洩らした。
「雛木についてって洗ってきたら?」
「いや、いいよ……」
言いながらセラはミミューの私物なんであろうウェットティッシュを勝手に持ち出した。中身を開いて数枚取り出すと、それで顔を拭き始めた。肌にいいものかどうかよく分からないが野育ちの彼にはあまり関係が無いのだろう。
「あ、あれ」
一真がふと外を指差した。
「何だよ」
創介がシートについた液体を拭きながら聞き返す。
「神父……」
「お、生きてたか」
凛太郎がどこか意地悪く言った。悪意は……まあ、あるのかもしれない。
「どうする〜、めっちゃツヤッツヤの顔で帰ってきたら」
創介がまた馬鹿げた事を告げている間にもミミューはいつもの笑顔で車の戸を開けた。
「ごめんね、お待た……って、何か車の中甘い匂いが充満してないかい? 僕の車で何したんだよ」
ミミューが驚いて叫ぶと創介が一真を真っ先に指差しながら言った。
「一真が発射しやがった」
「は……!?」
ミミューが眉根を潜めて見つめ返すと、一真が残りのほとんどもう空に近いそのペットボトルをおずおずと差し出した。
「あ、あぁ……その発射……」
「ったく気をつけろよバカチンがー」
「あれ? ところでナンシーちゃんと雛木くんは?」
ミミューが問い掛けると創介はウェットティッシュで車内を拭きながら答えた。
「雛木がトイレでナンシーちゃんはメイク直しだよ」
「ふ〜ん……待ってたら来るかな」
よいしょ、とミミューは座席に座りこみながらシートベルトを着用した。