26-5.愛し合う事しかできない
恥ずかしい事にスラックス越しからでも熱が集まっている事がよく分かる。
「い、いや大丈夫だから……」
「本当?……無理しなくていいのに」
ちょっと恥ずかしそうに顔を伏せ、ガイはまたミミューへの愛撫を繰り返した。どちらかというと家事なんか一切しなさそうなすべらかで若い娘みたいなミミューの手とは違って、ガイの手は一般的な男らしいとされる武骨な手だ。
骨ばった感触の手の平で施されるその愛撫はどちらかというと気持ちがいいというよりは痛い、の方が気持ちとしてはよく合っているのだが。それでもミミューは、そんな恋人のちょっとぶきっちょな刺激が愛おしくてならなかった。
「っ……ハァ……ッん」
ガイの指先が、手が、ミミュー自身のその頂きを滑った。白濁に濡れたそこを執拗に指で弄びながらガイはいたって真剣な表情のままでいる。照れ隠しなのかガイはいつもこうやって黙々としている事が多い。
ミミューがガイの肩にぎゅっとしがみついた。
「ん、……っねえガイ、今……今、何考えてるの?」
「何、って……」
我ながらおかしな質問だとは思ったが、ミミューは問い掛けた。事実それは知りたくて仕方の無かった事だ。はぐらかされるかと思ったが意外とガイは、言葉を詰まらせながらも答えてくれた。
「す、好きな人と……もっとどうやったら近づけるのか、とか……」
「それ、本当?」
ミミューが伏せたガイの顔を覗きこみながら笑った。ガイは無言で頷いた。
「――好きな人って、……それって、僕?」
もう一度ガイがこくんと頷いた。
「嬉しいよ……今、僕――凄く嬉しい。多分今までで一番嬉しいと思う」
無闇に、嬉しかった。ミミューはガイにもう一度ぎゅっとしがみついて、その体温と、匂いを楽しんだ。
「おい、何してんだ」
創介の隣で、一真がコーラの入ったペットボトルを両手でしっかりと握ったまま上下に振っていた。ダイレクトに上下運動させながら一真が答えた。
「うん、僕炭酸って苦手で」
「なら飲まなきゃいいのに……」
すかさずセラがもっともらしい事を言った。
「でもコーラって美味しいじゃん」
「だからって炭酸抜けたら美味しくないでしょ」
創介が苦笑混じりに言うと一真はいいや、と真っ向から否定するように首を横に振った。
「炭酸の抜けたコーラが一番美味しいんだよ」
一真はもう、真剣そのものといった様子でそう言ってのけた。引く気は無さそうだ。
「そんなん只の砂糖水じゃねえか!」
その無意味な気迫に押されるところであったが、こちらも負けてはいられないと創介が言い返した。
「それが美味しいんだよ」
「いやいやいや、絶対美味しくない。絶〜〜〜〜っ対に美味しくないよ、ソレは」
創介が首を振りながら否定するのだが一真はやはりコーラのペットボトルをいじくり続けていた。