中盤戦


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26-3.愛し合う事しかできない



 ミミューの目が見開かれた。雨が帽子を外した自分の髪を濡らしていく中で、ミミューは恋人の顔を見た。大粒の雨に叩かれて、ガイはいささか目を開け辛そうだ。

「――いいのかい、君はそれで」

 微笑みつつ、ミミューが問い掛ける。

「分からない……」

 ガイが首を振った――「けど」。

「けど……、俺は、ミミュー。お前と離れるなんて、嫌だ」

――。

 その一瞬抱いた衝動は、ひどく場違いなものに違いなかった。けれども……ミミューは求めるままに、ただその手を伸ばした。触れた、恋人の頬に。

 ガイはそれを拒むでもなく、只黙って受け入れていた。幾分かおずおずとしていたミミューだったが拒否されなかったことで、ちょっぴり安堵した。変わる事がなく、自分を受け止めてくれようとするガイの優しさに、無性に寄りかかりたくなった。

 自分から見て、やや少し高い場所にあるその髪を撫でながらミミューは一つキスをした。当然のことながらとても冷たかった……それでちょっと笑った。

「こんなところでか?」
「……うん。僕もね、寂しかったよ。いい加減。ずっとずっと触れられなかったんだもの」

――もう、この人から離れまい

 どうしようもなくなってミミューはガイの身体にしがみついた。びしょびしょなだけあってそれはあまり心地のいいものではなかったが……いやはや。

 それでも、長らく触れていなかった恋人の体温は感じることはできた。そんな場合じゃないのにも関わらずに、いつしか幸せで満たされてゆく心にミミューはまた涙しそうになった――やれやれ、人の事を言っていられなくなった。 

 今度はガイの方から、少し屈んでミミューの唇に二、三度接吻を落とした。最後はそれが、額に降りた。

 急激にもっと触れたくなって、ミミューはガイの背後に腕を回した状態のままでその自分の手袋に指をかけた。布一枚の隔たりであっても、わずらわしく感じられるほどだった。唇は重ねたままでミミューは手袋を外すと、その手をガイの頬へと戻した。

「……ねえ、今の凄く素敵だった。もう一回して――」

 実に熱っぽい眼差しで見上げながらミミューが言うとガイは何故か頼りなく笑った。ガイがミミューの目元につけられたままのマスクに手を添えた。外そうとするのを、すかさずミミューが拒否した。

「駄目」
「……どうして?」
「つけたままがいい」
「何故だ? 久しぶりに、顔が見れたっていうのに……」

 ハッキリとした理由は告げずにミミューはまた小さく首を横に振った。いささか腑に落ち無さそうではあったが、ガイはまたミミューに口づけた。ひんやりしていた筈の唇がいつしか熱を持ってちょっと温度を持っているのに気がついた。

 何度も何度も、その宛がったままの柔らかい唇の向こうから熱い舌が絡みついて来て、くらくらしてくる。ミミューも息を喘がせながらそれに応じた。もう、背後の金網がひどく邪魔に感じたけれど、これがあるお陰で倒れずに済んでいる事も忘れちゃいけないのだった。

「っ……は、ぁ、……ねえ、お仕事中でしょ。いいの? 始末書もんだよ」
「……何枚だって書いてやるさ。そろそろ上司にもうんざりしてきてな」

 何それ、と言いたかったが喋っているのも勿体ない気がしてきた。ガイは性急にミミューのネクタイを外すと、今度は露わになった鎖骨に唇を宛がった。



あ! エッチなシーンだ!
この章めっちゃ話数多くてすんません。
前半戦もそうでしたがこの章が中盤戦のラストなので
すごく長いザンス〜。
終わりが見えてきている……



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