中盤戦


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22-1.血で出来た轍



『現場は一刻の猶予も争えない状況だ。至急、救援せよ!』



「――それが出来たら何の苦労も無いっていうんだよ」

 苛立った口調で喚きながら、助手席の同僚が無線を投げつけた。

「……くそ! 何だこのクソ渋滞はよ!」

 ハンドルを握り締めながらガイがふうっとため息を吐いた。

「――落ち着け、柏木。現場はどういう状態なんだ?」
「……施設に火の手が回って、更にその周囲にはクソゾンビどもの山。どうだ、クソ面白いくらい分かりやすいジリ貧だろ」

 自嘲っぽい笑いを含ませながら柏木が言った。

「ああ、よーく分かった……」

 ガイが苦笑混じりに呟くと柏木がやはり苛立ったままの口調で続けた。

「何だってゾンビなんかが溢れるんだよ! まったくよお、クソクソゾンビどもが」

 こいつは昔からの癖で苛立つと何にでも「クソ」という言葉を付けたがる。更に、物に当たる。柏木は右の足を許される限りに持ち上げてその扉を思い切り蹴飛ばした。

 昔、サッカーをやっていたという経験が活きているのか中々の蹴りだ。ガコン、と鈍い音が一つ響き渡った。

「……物に当たるのは止せよ」
「あぁ!? そりゃクソどうもすみませんでしたねえ」
「それよりも柏木、この火事は人為的なものなのか? それとも事故か?」

 チッ、とひときわ大きな舌打ちをさせ柏木は携帯を開いた。

「……さぁね。分からないけど――、おっ」
「どうした?」
「こりゃちとヤバイ情報かもしれねえな」
「――はあ?」

 柏木がやけに勿体ぶった言い方をするので、ガイも思わず顔をしかめた。柏木が少しだけ声を潜めながら呟いた。

「何だっけ? 例のおかしなヒーロー……え〜と、ほら、あの、あれ。カス……カスタードみたいな何かそういう響きの」
「<ランカスター・メリンの右手>」
「そう!」

 柏木が指をパチンと鳴らしつつ笑った。

「付近の住民がそいつらと思しき集団を目撃したって話も入ってる」
「何だって?」

 ガイが眉根を潜めた。

「何でもゴテゴテに武装したやたらと目立つトラックが、この辺にある無人のガソリンスタンドで給油してたそうだ」
「それが……?」
「給油してたのが、運転手と思しきヤツだ。特徴はやたらと目つきの悪い三白眼に、片方は眼帯をした二十歳前後のクソガキだとよ」

 会議にて討論されたばかりの、彼らの容姿がガイの頭をふっとよぎった。それは確かミツヒロという名の少年だ――彼にはちょっとした別件でも覚えがあった。




この柏木の名前の由来だけど
イケメンサッカー選手の柏木から取ったんですが
彼がメアドに「unkomonogatari(うんこ物語)」って
使ったのがバレたニュースに爆笑しました。
いや、アドレスにうんこ使う気持ちは分かるよwww
でも物語とは一体何なのだwwww
まあ私もうんこ物語を語らせたら
右に出るものはいないと自負があるけどね。



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