19-2.真実が欲しい
セラがそれを掴みながら引き寄せると、驚愕に目を見開くのが分かった。
「ここは……」
「どうしたんだよ?」
創介が尋ねると、ややあってからセラが顔を上げた。
「……僕のいた、施設だ」
「ええっ!?」
創介が驚いて身を乗り出すと一緒になって覗きこんだ。大方携帯での撮影なのだろう、手ぶれの酷いその動画は解像度もお世辞には良いとは言えない。が、その惨憺たる有様は音声だけでも十分に伝わってくるようだった。ぶつ切れの悲鳴に、被せられるかのような叫び声。
撮影者が淡々と何かナレーションをしているが、非常に通りにくいというかくぐもっていて聞き取りにくい声だ。
セラが一真にスマホを返す。
「……い、いいのかよ」
ごくん、と唾を飲み込みながら創介が尋ねるとセラはちょいと肩をすくめてから、言った。
「言っただろう。……僕はあそこで、ろくな思い出が無い。別に何の思い入れも無いし……」
セラはそう言ったが、果たしてそれは本音なのだろうか?――ちらとセラの表情を窺い見ると、こわばった……もっと言えば無理に無表情でいる事を己に強いているような顔をしている。
「セラくん」
運転中のミミューがぽつりと呟くので、セラが顔を持ち上げた。
「そう遠くはないんだろう? 十分向かえるよ」
「いえ、いいんですよ神父。そのまま目的地に――」
言いかけた時、動画の中で激しい爆音がした。撮影者も思わず声を荒げているのが分かった。
『ば、爆発っ……小爆発が起きた! や・やば、やばいコレ! えー、今、今です今! 何かに引火して爆発が……っ、あ、ああ! 救助に向かった隊員がゾンビに……くそー! 誰か、誰かいないのかぁ……何とかあの子を……神様……っ』
続いて子どもが助けを求める、悲痛な声が小さく響いて来た。
「……なんつう……」
なすすべもない、と言った具合に創介が呟いた。
「ちなみにリアルタイム中継、だよ」
一真が付け加える様に言うと、セラの顔がほとんど秒速で強張った。
「何で笑ってられんだよ、お前」
「笑ってないですよ」
創介の言葉に一真がエヘヘ、と不気味な薄笑いと共に返したのだった。その顔はどう見ても笑っているのだけれども。
「……どうするの?」
そんなやりとりは一旦は無視して、ミミューが尋ねかけるとセラがハっと顔を上げた。まだ迷っているようだったが、かたく目を瞑ったのち意を決したようにその口をうっすらと開いた。
「……。分かった、向かうだけは向かう。――ここからは僕が道案内する」
「うん。了解、まっかして〜」
ミミューが親指を上げて了解のポーズを作ると、ハンドルを切った。
Tシャツのロゴの意味とか
気にしないで着てるけど
いざ他人にその文字を読み上げられたら
急に凄く恥ずかしくなるのは何でかね。