中盤戦


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16-1.シリアル・キラー・ママ



「ママ、帰ったよ」

 店の裏口から入ってくるのは随分と身長の小さな子ども……と、それとは正反対に大きな、というかでっぷりと肥った子ども、のようだった。

「お帰り、トゥイードルディー、トゥイードルダム。外から帰ったらちゃ〜んと、うがいと手洗いをするのよ」

 声だけ聞けばそれはそれは優しい母親の声だった。

 二人の母親は、一見すれば優しそうで上品そうなママ、といった感じのお母さんだ。にっこりとほほ笑むママンの顔は、二人にとってはとても癒されるものであったが……。

 彼女の名は『ママ・ソーヤー』と言って、それが果たして本当の名なのかそうでないのかは誰も知らない。只、気付けばそう呼ばれていた。ママ・ソーヤーことママは安らかな笑みを浮かべたまま、その片手には肉切り包丁を持っている。

「獲物は手に入った? もう大繁盛で、お母さん大忙しなの。いつもいつも材料調達ありがとね」
「女が一人と、男の死体が一人だよママ」
「まあ! 女は生きてるのね? ちゃんと生捕にしてくるなんて、偉いわふたり共」

 本当に心の底から感心した、といった様子でママが言うと二人の頭をそれぞれ撫でてやる。一方、引きずられてきた女は(勿論、口には有刺鉄線がガッチリと巻かれたままだ)叫ぼうにも叫ぶことすら叶わずただひたすらにもがき続けた。

 想像を絶するほどの痛みが、女を襲い続けていたが構いやしなかった。もはや発狂しそうなほどの痛みが絶え間なくのしかかってくる……。

「――でもママ、くそデブ豚野郎のトゥイードルダムが! ゾンビの家来を作らなくちゃいけないのに男の方の頭を潰しちゃったんだ!」

 背の低い方の少年……ソバカスの眼鏡がトレードマークのトゥイードルディーが叫んで非難する。

「う、う」
「あらー、トゥイードルディー。いいのよ、別に。頭だけじゃなく、労働させるのには一部が欠損しちゃって使い物にならないのはほら、この通り」

 そう言って優しげな笑みを絶やさぬまま、ママは肉切り包丁片手にくるっと背後を振り返った。ママが指した先にあったのは、四肢をしっかりと縛られ、猿轡を噛まされた状態のまま泣き叫ぶ男の姿だった。

「ン゛ーッ! ん、んんんんーーっ! ん〜〜〜!」
「ウフフ。こいつね、いつもママが行く洋服屋の店員さんよ。ハンサムで、ちょっとパパの若い頃に似てるのよ。だからママもすごーく気に入ってたんだけど……でもねえ、ママのそんな気持ちを裏切ったのよ! ママよりもずっとずっと若くて可愛い女の子と交際してるんですって。信じられないわぁ」

 にこにこと笑いながらママは縛られた男の方へと向き直る。
 胸元に肉切り包丁をしかと抱きしめたまま、ママは怯えた男ににっこりと笑いかけた。

「それにね。あろうことかママに向かってなんて言ったと思う?……『いつもいつも気持ち悪いんだよ、このババア』ですって。まぁ〜〜〜〜〜、もう! 信じられないったら、ありゃしないッ!」
「ンーーーーーーッ、ンッ゛」

 叫びざま、ママは包丁を思い切り振り降ろした。ドスンッ。……と鈍い音と共に、血しぶきを撒き散らして飛び上がる何かが見えた。

「……毎日通ってあげたのにあろうことか気持ち悪い、ですって! ママの気持ちを裏切ったばかりかこの発言、ママはもう頭にきたわ……許さない――許さないわよ……ママを怒らせると怖いんだから」

 男はもうほとんど白目を剥いていて、意識はほぼ無いに等しいのだろう。男のズボンが濡れているのがここからでもしっかりと肉眼で確認出来た。いつ頃失禁したのかまでは分からないが。

「ボク、残念だったわねェ……君の可愛い可愛い彼女はもう生きちゃいないわよ。私が、とっくに拉致してたっぷり生き血を抜いてから処分したの。あのね、若くて美しい女の子の生き血を浴びると肌が若返るのよ。素敵よね。……え? どうやって処分したか? あらぁ、聞きたいの。そうよね、聞きたいわよね。大事な大事な彼女ですもの。うん、そうよ、想像している通り。肉まんの具にしてあげたのよ、細切れにしてね。骨はダシを取るのにしっかり使わせてもらったから安心して頂戴……ってもう聞いちゃいないわね?」

 そこまで言いきってから、ママは一度その肉切り包丁を置いた。

「それで、女は?」
「ここだよママ」

 トゥイードルディーが女の髪をひっつかんでずるずると引っ張りだすと、ママはご満悦の表情であった。

「まあまあ。じゃっ、またいつものように地下部屋に運んでおいてくれる? 血抜きの用意お願いね」
「う……うう」
「……あら、トゥイードルダム。なぁに? どしたの? 不満気な顔をして」
「うー……」

 大柄な方、トゥイードルダムが上手く発せないその言葉の代わりに、何やら顔を思い切りしかめて見せたようだった。ママが小首を傾げて問い掛けるとトゥイードルダムが口をもごもごと動かした。それははっきり言って人語では無かったが、ママには理解できるのだから不思議である。

「うんうん。……え、もう嫌?」
「うー……うっ」
「人を殺すのも女の子を虐めるのも嫌……あらあら」
「う、う」
「トゥイードルダムは、優しい子ですものね……そうよね」
「う」

 ママがふう、とため息を吐いた。少し悲しそうに、口元に微笑みを浮かべた。……が、すぐにその笑顔が消え去ったかと思うと、手にしていた肉切り包丁を振り上げた。





ファッキューマッマ
マッマのモデルは
ブレインデッドのBBAと
13日の金曜日の母ちゃんを混ぜた感じ?
あとグーニーズにもそんな極悪ママがいたよね
懐かしいなグーニーズ。
あとジュマンジとかもっかい見たいわ。



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