春爛漫、愛燦々


甘(現パロ)
杏樹へ 20400Hit記念



最近は暫く会ってないね、電話先で彼にそう呟いたら突然切れた。何か悪いこと言ってしまったかな、怒らせちゃったのかな、馬鹿な私は訳が分からず途方に暮れる。だって、最近は本当にお互いに忙しくて自分の時間さえもなかなか作れなくて、だから…寂しくて。だけどイタチはそう言うこと言われるのが嫌な人だったっけ?ううん、今までこんなことはなかった。すぐに電話をかけ直したけれど、留守番電話サービスに繋がるだけであなたには繋がらない。どうして?分からない、分からない。私、どうしたら良かった?



ぴんぽーん

私の目から何滴目かの涙がぽろりと零れ落ちた時、玄関のチャイムが鳴り響いた。こんな時間に誰だろう、今は夜中の2時過ぎよ。仕方なく涙を拭って立ち上がり玄関まで行って、ちゃんと聞こえるように少し大きな声で


「どなたですか?」


と尋ねた。けれど扉の向こうの人は静かに


「俺だ」


と言うだけで、名乗りもしない。まさか新手の詐欺か何か?そうだとしたら物凄く危ないわ、気を付けなくちゃ。そう考えたら急に怖くなって、私は震える手でイタチに電話をかけようと携帯電話を手にした。けれどさっきは留守番電話だった、あなたは出てくれなかった、あ、そうか、私たちはたったさっき微妙な関係に成り下がったばかりだったわね。そんなくだらないことをぐるぐると考えているうちに私の携帯電話が無機質な音を鳴らした。びくんと肩を震わせながらも恐る恐るサブディスプレイを覗いてみると、「着信:うちはイタチ」の文字が浮かんでいる。私は迷わず通話ボタンを押して携帯電話を耳に当てた。


「い…イタチ…?」
「○○か、」
「うん」
「…早く…ドアを開けてくれると嬉しいのだが…」
「…え?」


どういうこと?と聞くよりも早くに身体が動き、携帯電話を耳に当てたまま玄関の鍵を開けて扉を開いた。するとそこには私と同じように携帯電話を耳に当てたイタチが立っていて、彼を見た瞬間に私の涙腺は決壊する。そんな私を、彼は苦笑しながら抱き締めてくれた。


「○○があんなことを言うから、余計に会いたくなって…急いで会いに来た。」
「うー…ありがとう…会いたかったー」
「分かったからもう泣くな、折角一緒に居るのに湿っぽくなるだろう?」
「ごめんなさいぃー…」
「気にするな、怒ってなどいない。」


とっても優しいイタチに頭を撫でられて、私の涙腺は更に緩む。私、とっても幸せよ。だってこんなに私のことを思ってくれているあなたが居るんだから。


「忙しくてなかなか会いに行ってやれなくてすまなかったな、」
「ううん、私も忙しかったから…今度は私が会いに行くから、」


キスで言葉を遮られたけど、それでも良い、むしろ更に幸せ。バカップルだと思われるかもしれないけど全然平気、私たちは幸せなんだから。ある春の日の小さな出来事、だけど私には大事な大事な思い出になっていくんだ。私も今まであなたにもらった沢山の幸せを、少しずつお返ししていけたら良いな。


もう散って地に落ちた桜の花びらが、春風で舞い上がり私たちの目の前を通り過ぎていった。




(I love you. I need you.)


2009.4/2
- 36 -

prev  +  next
(back)

thank you!! :)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -