止まらない飛行機



ナツミ様へ 18800Hit記念



「…今日も任務なのかな…」


朝起きて隣にイタチの姿がないことに溜め息をつく。最近は特に忙しいらしく、深夜に帰ってきて早朝に出ていくことがほとんど。たまに顔を合わせたかと思ったら、私の頭を撫でてすぐに出ていってしまう。彼は男だし強いから、様々な任務に引っ張りだこになっているのだと思う、だからこそ私は彼に文句の1つも言えずにいた。私に出来るのは彼に食事を用意してあげることくらいで、いつも空になったお皿を見るのだけが最近の楽しみになっている。

どうせまた今日も空のお皿が待ってるんだろうな、なんて思いながら、私はのろのろとベッドからおりて居間に足を運んだ。すると微かに良い香りが鼻をかすめる。何事かと下階におりる足を速めると、そこには朝食を作っているイタチの姿があった。


「…イタチ?」
「あぁ、おはよう。やっと起きてきたか。」
「今日…任務は…?」
「今日は休みだ。」
「だから…朝ごはん作ってくれたの…?」
「○○には劣るがな。」
「そんなことない!」


私がイタチに抱きつくと、彼は笑いながら私の頭を撫でる。それがあまりにも嬉しくて仕方なくて、私はどうしようもなく幸せな気持ちになった。こんなのまるで夢みたいだ。


「…ねぇ、いつまで休み?」
「今日だけだ。」
「そっか…」
「だが、明日はお前と同じ任務だ。」
「え?私聞いてないよ」
「今聞いただろ?」
「…うん」


『任務が一緒』

それだけで私の頭は薔薇色に輝く。イタチと任務を共にするなんて何日ぶりだろう、どんな任務なのかな、ミスしないように頑張らなくちゃ。色々なことで頭がいっぱいになって、イタチに「子供のようだ」と笑われたことなんてちっとも気にならなかった。


「どんな任務なの?」
「隣の国にいる抜け忍の暗殺だ。」
「へぇー…ちょっと簡単すぎない?」
「俺とお前ならな。」
「うん!」


暗殺任務に胸が高鳴るなんてかなり不謹慎だとは思うが、私はそれくらいイタチが好きで、一緒に居たくて仕方がない。休みの日になるとイタチは必ず実家に顔を出すために2人きりの時間は限られてしまう。もちろん私も連れていってくれるのだが、実家デートなんてデートとは言わず、ぶっちゃけてしまえば私はちっとも楽しくなんかないのだ。しかし弟サスケに会うのを楽しみにしているイタチに抗うことなど出来るわけがないし、そうなると必然的にイタチと2人きりになれる任務が楽しみになってしまう。それがあまりに滑稽で、私は私を自嘲した。


「今日は何かしたいことあるか?」
「イタチと一緒に居たい。」
「相変わらず○○は高望みしないな…たまにはワガママくらい言ったらどうだ。」
「私より忙しいイタチにワガママ言うなんて出来ないよ、お仕事お疲れさま。」


そう言ったら、突然抱き締められて一瞬呼吸が止まる。背に腕を回すと更に強く抱き締められて、彼の胸で窒息しそうになった私は顔を上げる。すると途端に降ってきた口付けが私を酔わせていく。
嗚呼、こう言う堕ち方も悪くはないのかもしれない。今日の午前中の予定はもうこれで決まりね。


寝室の扉が、ゆっくり閉まった。




(ずっと青い空を貴方と2人で)


2009.4/16
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