宣誓、私は彼と結婚します



丹沌様へ 18700Hit記念



私の小さい心臓が、大きい音を立ててどくん、と鳴った。通学途中、電車の中、必死につり革に掴まる私の目の前に、密かに憧れていたイタチ先輩が立っている。途中から乗ってきたのかな、だったらどこの駅から乗ってきたのかちゃんと見ておけばよかった、そんなことを考えていたら電車が突然大きく揺れ、油断していた私は思い切り体勢を崩し、つんのめって先輩の胸に飛び込むような形になってしまった。


「ご、ごめんなさい!」
「いや…かまわないが、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です!」


そう言って私は慌ててまたつり革に手を伸ばす。けれど背の低い私があまりにもつり革を掴みづらそうなのを見て、先輩は小さく笑った。


「それは辛いだろう、俺の腕にでも掴まっておけば良い。」
「そ、そんなの迷惑です!」
「さっきみたいに倒れてくる方が迷惑だ。」
「…すいません…」


躊躇いもなく差し出された彼の腕を恐る恐る掴む。とても細くて綺麗で、だけどほどよく筋肉質で逞しい。私は思わずにやけてしまった顔を見られないように、下を向いた。


「その制服…同じ学校だな、」
「はい。」
「次で降りるぞ。」
「あ、はいっ」


そして私たちは通勤、通学ラッシュに乗じて電車から雪崩れ込むように降り、そのまま改札へと向かう。改札を出たところで、私は我に返り先輩の腕を素早く離した。


「すいません、凄く助かりました、ありがとうございました。」
「いや、なんてことはない、…ほら、早く学校に行こう。」
「…え?」
「どうせ行き先は同じなんだ、だったら一緒に行くぞ。」
「はい!」


あまりにも嬉しくて、私はニヤニヤしそうなのを必死に抑える。イタチ先輩との会話は思うより楽しくて、学校に着くのもあっという間だった。生徒玄関に入る直前に彼にお礼を言おうとすると、彼の友達(らしき人たち)が彼の回りに群がってしまう。


「よぉイタチ、女と登校なんざ珍しいじゃねぇか、彼女か?」
「清楚系だな」
「どうなんだよ、うん!」
「…あぁ…彼女だ。」
「はーん、やっぱりな。」


うそ、うそ、うそ。私がイタチ先輩の彼女?今のはただの冗談だよね?思わぬ展開に高鳴る胸、友達に冷やかされて言った冗談だとは承知していても、私の心はその言葉だけで本気になり、完全に彼に捕らわれてしまっている。先輩は友達を生徒玄関から追いやったあと、私の方を向いた。


「…悪い、冗談でも嫌だったろう?」
「そ、そんなこと、ないです!」
「…○○、」
「な、っ」


突然 ぐ、と腕を引かれ、つんのめった瞬間重なる唇。誰からも見えない下駄箱の影で、私たちはキスをした。唇を離したあと、彼は優しく笑う。


「本当は電車が一緒だと結構前から知っていたんだが、話しかけるタイミングがなかなかなくてな。今日は運が良かった。」
「せ…せんばいぃー…」
「ど、どうした、」
「私…ずっと先輩が好きで…だから嬉しくて、夢みたいで…」


泣きながらそう言うと、彼は笑いながら私の両頬をつまんで横に引っ張った。


「いひゃいへふう…」
「夢じゃないだろ?」
「ふぁい」
「じゃぁ信じろ、今日からお前は俺の女だ。」


そう言って差し出された手が凄く暖かくて、私は思わず彼に抱きついた。すると同時に撫でられた頭、見上げれば微笑む彼の顔。
嗚呼、将来結婚するなら絶対にこの人が良い。馬鹿と思われるかもしれないけど、私は本気でそう思ったんだ。


季節は春。

私にも、どうやら春が訪れたようです。




(スタートダッシュは早い方がいい)


2009.4/15
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