おかえりなさい


甘(現パロ)
落ちゃんへ 相互記念



ある日の朝、ふと目を覚ました○○がまだ重い瞼を押し上げてあたりを見ると、目の前には静かな寝息を立てて気持ち良さそうに眠るイタチの顔があって、彼女は彼の胸板に自分の頬をすり寄せた。今日は確か日曜日、好きなだけ寝ても怒られることはない素晴らしい日だったはず。そうこうしているうちに、彼女はまたいつの間にか夢の世界へと引きずり込まれていた。


「○○、起きろ!今何時だと思ってるんだ!」
「ふぁ…?」
「早くしないと遅刻するだろう!?」
「…え?だって今日は日曜日…」
「今日は月曜だが。」


その言葉を聞いて○○は一気に青ざめる。ハッと時計を見ると時刻は既に8時を過ぎていて、彼女は驚きのあまりパニックに陥った。今からどんなに頑張ったって、もう確実に遅刻である。


「…今日、大学行かない…!」
「は?」
「だって、今日、日曜日!」
「いや、だから今日は月曜だと言っているだろう、」
「いやだ、行きたくない…イタチと一緒に居たいぃー…」
「…はぁ…俺は仕事があるんだ、分かったか?○○が休むのは構わないが、俺は仕事だから出掛けるぞ、じゃぁな」


そう言いながらさっさと着替えを済ませ、躊躇いもなく部屋から出て行こうとするイタチの腕を、○○は泣きながら必死に掴む。もう彼女の頭は混乱しきっていて、もはや自分の力では制御不可能な状態になってしまっていた。


「イタチが行ったら嫌いになるよ!」
「お前の愛はその程度だったんだな、良く分かった」
「そうじゃなくてー!!」


もうなす術もなく、○○は項垂れる。イタチはやはり自分を置いて行ってしまう。だけどイタチは社会人だし、それは仕方のないこと、そもそも普通は出掛けるのが当たり前なのに、自分はそれにワガママをぶつけてしまっている。混乱した脳内でようやくそれを理解した○○は、握っていたイタチの腕を離し、小さく「行ってらっしゃい」と呟いた。すると途端に上を向かされ、彼女の唇には深いキスが降り注ぐ。


「…行ってきます。」
「…本当に行っちゃうの…?」
「当たり前だろ、働かなきゃ○○を養うことすら出来ないんだからな。」
「え…、」
「夕飯は和食がいい。」
「…う、うん!作って待ってるね!!」
「あぁ。」


そしてとうとう遠ざかるイタチの後ろ姿、閉められたドア、響く車のエンジン音。○○は部屋の窓から彼(の車)が見えなくなるまでずっと外を眺めていた。


「はぁ…行っちゃった、か。」


溜め息をつき、またベッドに身を投げ出す。仕方ない、イタチは仕事なんだから。私はズル休みだけど、彼はそんなんじゃ済まされない、クビにされたら大変だもんね。それにイタチ、私を養ってくれる、って、言った。(言ってない) あれはつまり、将来私との結婚を考えてくれているってことだよね。そうなったら、私は今日みたいに毎日1人でお留守番だもんね、イタチは多分、私にわざと試練を与えているんだわ!

けれどそれから暫くした後に再び近くで響き渡る聞きなれた車のエンジン音に○○はベッドから飛び起きる。まさか遅刻しちゃったから自宅謹慎になったのかな(そんな馬鹿な)、それとも忘れ物?また頭をフル回転させて悩み始める彼女の前に、息を切らして戻ってきた彼は言った、


「今日…祝日だった。」
「…あぁ…そっか、」


!!

(それならそれで良いわ、だって私、今物凄く幸せだから!!)


2009.4/8
- 29 -

prev  +  next
(back)

thank you!! :)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -