愛してる、だけど



ハンナ様へ 3900Hit記念



私の気持ちは海の底のように暗い。


今日も朝早くに使命を遂行するために家を出ていくあなたの後ろ姿を見つめては1人黄昏(たそがれ)る。私もあなたも暁だけど、言葉を交わした回数はほんの数回、あなたが私のことを知っているのかどうかすら危うい状況。
こんな状態で片想いなんて、我ながらよくやると思うわ。

○○は1人溜め息をつき、窓を閉めてベッドに突っ伏した。

今は何も考えたくない、イタチが任務に行ってしまった瞬間に何もする気が起きなくなるのが私の悪い癖、ちゃんと自覚はしている。

そして彼女はそのまま深い眠りについてしまった。

「なぁ…鬼鮫。」
「なんでしょう?」
「お前は、あの小娘のことを一体どう思う?」
「…あの小娘、とは…○○さんのことですか?」
「…あぁ。」

任務先からの帰り道、鬼鮫は自分から滅多に話しかけてこないイタチからの急な質問に戸惑う。そもそも質問がざっくりすぎて、彼がどういう意味で聞いているのかさっぱり分からない。

「ま、まぁ…良い子だとは思いますが…」
「そうじゃない。今朝、俺が出ていく時に窓からこちらを見ていた。」
「○○さんが、イタチさんを?」
「あぁ。」
「それは…」

○○さんはイタチさんのことが好きなんじゃないですか?

そう言おうとして、彼は口ごもった。
勝手に他人に期待を持たせるような無責任な発言をして、この予想がもし万が一外れたら、イタチからも○○からも何をされるか分かったもんじゃない。

迷った末、彼は

「あぁ、そうだったのですか、」

と、当たり障りのない台詞を返した。

「甘いものは好きなのだろうか、あの小娘は。」
「どうですかねぇ。」

そうこうしているうちに、イタチは帰り道の途中にあった甘味処で寄り道をしている始末、これは完全に彼女のことが気になっている証拠じゃないか。もうこうなったらどうにもならない。
鬼鮫は早々に早く帰ることを諦め、彼と共に甘味処へ足を踏み入れた。

「イタチさんは、彼女のことがお好きなのですか?」
「…嫌いではない。」

その答えに鬼鮫は苦笑する。
イタチは自分でも気付かぬうちに、あの○○とか言う『小娘』に恋をしている、彼女を『小娘』と呼んでいるのは彼なりの照れ隠しのつもりなのだろうが、端から見たら頭隠して尻隠さず状態、つまりはイタチの感情丸見えな訳で、面白いを通り越して奥手な彼が酷く不憫に思えた。

「もっと素直になられれば良いと思うんですけどねぇ…」
「何か言ったか?鬼鮫」
「い、いいえ、何も言ってませんよ。」



「ふぁあっ…んー…よく寝た。」

一方、見事に貴重な非番の1日を寝て過ごしてしまった○○は、夕方頃に大きなあくびをして起き上がった。


こんこん、

その時、突然部屋のドアがノックされたために彼女は驚いてそちらを見るが一向にドアが開く気配はないので、首をかしげながらドアを開く。

「…あ、お団子…」

すると、そのドアノブのところに袋に包まれた三色団子が入っていて、甘いものが大好きな○○はそれを見て嬉しそうに笑った。

「…でも…誰がこんなこと…?」

素敵な贈り物をしてくれた犯人は、まだそう遠くへは行っていないはず。誰が団子を差し入れてくれたのかが知りたくなった○○は、その袋を持ったままアジトの広間に向かう。だが偶然そこにはイタチが居て、彼女の足は広間に入る直前で止まった。

「…っ…」
「そこで何をしている」
「す、すいません、あの、このお団子…私の部屋のドアノブにかけてくれた人、知りませんか…?」
「っ、」

イタチは○○が手に持っていた団子を見て目を見開く。それはまさしく自分が差し入れたもの、しかしだからこそ恥ずかしい気持ちが強く、何も言うことができなかった。すると、○○はイタチの前に団子を差し出して言う。

「…もしよかったら、一緒に食べませんか?」
「あ…ありがとう。」

そう答えると、彼女は笑顔でイタチに団子を手渡した。そんな○○が可愛くて、イタチは思わず口を滑らせる。

「お前のそういうところ…とても好ましく思う。」
「えっ、」

暫くの沈黙の後、途端に赤面する2人。
もうここまで大胆に口を滑らせてしまったら後戻りは出来ない状態になったのだが、その沈黙を破ったのは意外にも○○だった。

「ありがとう、ございます…私も、イタチさんのこと好きですよ。」
「ふっ…そんなことを言われたのは、この世界に入って以来お前が初めてだ。」

そして小さく笑い合う2人。

私、今までの人生で一番幸せかもしれない。
だって、大好きな人の隣で笑っていられるのよ。


そんな初(うぶ)な2人が後々有名な夫婦になるのは、まだまだ随分先のお話で。




(今はまだ、このままで)


2009.1/15
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thank you!! :)



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