愛さなければ良かった、
切
あやか様へ 17200Hit記念
「○○、朝だ、起きろ。」
「…ん…」
サスケの声に目が覚める。5年前のあの時から、私は彼を引き取り育てていた。しかしそんな彼ももう下忍、実力はまだまだだが、着実に成長していく彼を見て、私は小さく笑った。最近の彼は特に、あの人に良く似ている。
「早く朝食作ってくれ、今日はカカシに呼び出されてるんだ。」
「はいはい…」
「○○は任務ないのか?」
「うん、今日は休み。」
「悪かったな…」
「ううん、あなたは心配しなくて大丈夫、今すぐ準備するわ。」
そう言ってベッドから起き上がり、朝食の支度を始めたのだが、ここで私は大きなミスをしてしまったことに気付く。
「…あ…」
「どうした?」
「サスケが好きなのは…おかかだったわね、」
「…別に昆布でも良い。」
「ごめんなさい…」
「…○○、…まだ…忘れられないのか?」
サスケの鋭い質問に、○○は顔をしかめる。その質問は最大のタブー、彼女はそう言うことを聞かれるのが大嫌いだった。サスケは黙りこくる彼女に腹が立ったのか、食事を済ませるとすぐに家を出ていく。1人取り残された○○は悲しそうに目を伏せた。確かにサスケに言われたとおり、まだイタチのことを思っているのは事実だった。
「…イタチ…」
あの時、迎えに来てくれるって、5年経ったら迎えに来るって言ったのはどこの誰よ、私はあなたとの約束を守ってあの子を立派に育て上げたわ、次はあなたが約束を果たす番じゃない!どうしていつも私ばかり何も叶わない、私が1番に愛しているのはあなたなのに。
「なんで…いつも届かないのよ…あなたは」
涙を流しても仕方ない、そんなことは5年前から分かっていることなのだが、涙腺はちっとも言うことを聞かず、私は今日もまた涙を流す。どうしてこの世はこんなにも鬼畜、いっそのことイタチになんて出会わなければ良かった、好きにならなければ良かった、
愛さなければ良かった、(そうすればこうなることもなかったでしょうに)
「故郷にはやはり未練がありますか?アナタでも…」
「いいや…まるで無いよ」
ちりん、
2009.4/7
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