5 さぁ見つけよう、全ての鍵を
あれから、どれくらい経ったのだろうか。
私はきっとまだ夢の中にいる。
だって――――。
*
「いたいよ、おかあさま、おとうさま、うわぁああん」
「だいじょうぶかい?!」
「あ、う、いたい、いたいよ」
「おちついて、いま、おれがなおしてあげるから」
ぽぅ
きらきらきら
「あ、いたくなくなった…」
「ふふ、おれのまほう」
「わぁ、すごーい!」
「すごいだろう」
「でも、きみはにんげん…?」
「ううん、ちがうよ、おれたちはにんげんじゃないんだ。でも、にんげんとあまりかわらないよ。まほうはつかえるけどね」
「ふふ、そっか〜」
「ああ、それでね、おれはあかしせいじゅうろう、きみは?」
「わたしは、アリス=メイフィールド!」
「アリスか、よろしくね」
「うん!」
*
「ん…ここは…」
ベッドで寝ていたらしい。少しばかり痛む腰を抑えて、お母様の部屋へと向かう。きっと最後の鍵もあそこにある。全ての謎を解く、鍵が。
ぺた、ぺた
未だ裸足のまま歩いているため、冷たい感覚が足を伝う。
それを気にすることなく、お母様の部屋へとひたすら歩く。今となっては、彼に見つかっても構わない。
構わないのだが、彼は何故かいない。だから私は、一人で向かうのだ。全ての謎を解くために。
「あっ…た…」
お母様の部屋へと入り、ドレッサーを触った時、ドレッサーが少し動いた。下に何か扉のようなものがあることに気づき、ドレッサーを動かした。
大正解、そこには下に何かを隠せるような収納場所があった。その扉を開け、中を覗くと、なかには小さな白い箱が。綺麗とは言い難いピンクのリボンで結ばれている。
そのリボンをしゅるしゅると解いて、箱をあけた。すると中には、私へとあてられた手紙が入っていた。
アリスへ
よくこの手紙を見つけたわね。貴方も大きくなったのでしょう。
いずれ話そうと思っていたことだけど、結局こんな形になってしまったことを、謝っておきますね。
ごめんなさい。
貴方の太腿の痣は、呪いの証ではなく、幸運の証となるものです。きっとそれは貴方を幸せへと導くことでしょう。
でも、私は、貴方が大きくなる前に死ぬことになります。それは、決まっていること。
人間と獣の恋は禁忌。私達は彼等を、彼等は私達を。お互いに滅ぼし合うことになるでしょう。
でも、貴方は、貴方達だけは生きてください。私の愛する大切な娘と、とても優しい少年よ。
貴方達は幸せになるべきなのです。大人の柵には負けないで。
さようなら、愛しています。
女王であり、貴方の母であるものより
「そっ…か……そうなんだ」
全てがわかった私は、涙を流した。きっと彼はこのことを知っている。きっと彼は私に幻覚を見せただけなの。
だから、だから、
早く貴方に会わないと。
*
「征十郎さん!!征十郎さん!!」
「どこにいるの、ねえ!」
「征十郎…さん…」
「アリス…?どうし」
「征十郎さん、!会いたかった、あの時私を助けてくれたのは、貴方だったのね。悪魔なんかじゃなかった、貴方は悪くなかった。でも、そうしないと思い出せないから、そうしたんでしょう。」
「やっと、僕のことを思い出してくれたのか」
「ええ、遅くなって、待たせてしまって、ごめんなさい、大好きです、愛しています。」
「僕もだよ、アリス。愛してる。」
そうして、私達はキスをした。優しいキスを。
でも、私は一生知ることはないだろう。
全ては、彼が作った幻想だということを。