今日は11月11日。いつからかポッキーの日と呼ばれるようになっていたその日も、彼に追いかけ回されることになる。 キーンコーンカーンコーン。と授業の終わりを告げるチャイムがなる。昨日は本を読むことに没頭してしまい、寝たのが今日の朝になっていた。そのせいで頭は回らず、授業でもうたた寝してしまう程だった。チャイムが鳴っても頭が覚醒することはなく、休み時間さえも机に突っ伏していた。 幸い、今日は赤司が部活のことで忙しいらしく、絡まれずに済んだのが、放課後はそうはいかないらしい。 「雪」 「うーん…」 「おはよう」 「まだ寝かせて…」 誰かに名前を呼ばれたが、それが誰なのかすら特定出来ないほど私は眠かったのだ。そして暫くの沈黙のあと、再び声が聞こえた。 僕の胸で寝ればいいだろう、そう聞こえた瞬間に、思い切り抱き寄せられる。流石にそれには驚いて、少しだけ顔を上げた。 「ん…」 「まだ眠たいのかい」 「赤司か…寝よ…」 私を抱き寄せた相手はどうやら赤司だったらしく、私はそのまま眠りへとついた。 目が覚めたのはあれから何分後だっただろうか。気付けば彼の腕の中で寝ていて、欠伸をすれば、おはよう、よく寝たね。と爽やかな笑顔が見えた。 イマイチ状況把握が出来ない私はそのまま固まり、ただ一言、は?と呟いたのだった。 「随分眠たかったようだね」 「…」 「寝顔も可愛かったよ」 「いや、ちょっとま」 「まさかあんなに可愛い雪が見れるとはね」 「いやいやいや、なんで私はこんなところで寝てたの?!」 やっといつもの元気を取り戻し、頭が回り始めたところで彼を突き放した。驚きもせずただ余裕そうな笑みを浮かべる赤司を睨みつけた。 「そんなに怖い顔をしなくてもいいだろう」 「だって私が赤司の腕の中で寝るとかありえないし絶対なんかしたでしょ…」 「いや、僕は何もしていないよ、それより」 今日はポッキーの日と言うらしいね。 そう言われ、え?と思いカレンダーを見る。そうだ、そうだった…。今日は11月11日、ポッキーの日だった。 と、その瞬間、悪い考えだけが頭の中を駆け巡る。彼がもしポッキーを持っていたら……。一気に頭が真っ青になる。選択肢は二つだ。そう… 大人しくポッキーゲームをする 全力で逃げる 選ぶなら勿論下だ。いや、選択肢は2つあるようで1つしかないのだ。 それに気付いた私は、彼にバレる前に教室から飛び出した。これでも足の速さには自信がある。寮まで戻ればこっちのもの…!!! そう思い、全力で廊下を駆けて3分後。まさかのまさかだ。なんという事だろう、殆ど寝なかったせいで体力が乏しかった。 「最悪……」 「今日は僕の勝ちだね」 「しね…」 少し休もうと思い立ち止まったところで彼に捕まり、今に至る。彼は嬉しそうにポケットからポッキーの箱を取り出すと、早くしようと言わんばかりにポッキーを咥える。 「一人で食べてろ!」 彼の咥えたポッキーを思い切り押し込むと、如何にも気に入らなさそうに眉を顰める。そんな顔したって私は悪くない。なんで赤司という男はここまでに自己中なのだろうか。 「あ、イチゴ味もあるよ」 「そういう問題じゃないの!あとイチゴ味早く頂戴!」 ポッキーゲームをしてくれたらあげるよ、と言われたので、赤司が咥えたポッキーの反対側を咥え、ポッキーをへし折ると、はいはいしましたよ、と言ってポッキーを貰った。 赤司は不機嫌そうに私に何やら文句を言っているが、そんなの聞こえない、知らない。 |