私と赤司が付き合うことになってから早1ヵ月。付き合えば落ち着くだろうと思っていた彼の変態っぷりは、予想の遥か上を行き、悪化したのだった。 そして現に今も彼はその変態っぷりを私の前で晒している。 「ナース服はどうだ、わざわざ雪の為に取り寄せたんだ」 「いや、着ないから、いらない親切をどうもありがとう」 「いいじゃないかそれくらい…減るものでもないだろう」 「私の神経がすり減るから」 そう言えば、しゅん…と可愛らしく落ち込む赤司。あ、こいつ、狙ってやってる…。分からないとでも思ったのだろうか。分かるに決まっている、だって彼は策士だから。 はあ、そんな顔したってやらないから。そう言うと、盛大に舌打ちをされた。いやいや、勝手に持ってきて無理矢理着せようとするとかおかしいからね赤司くん。 ちょっと、いやかなり自己中だから。 きっと周りのあの環境が彼をこんなにしてしまったのだろう…。そう思うとなんだか赤司も少し可哀想だね、うん。でも、でも、ナース服なんてものは絶対に着ない。何が何でも着ない。 「はぁ」 「着ないからね」 「着ないなら…」 お仕置きをするまでだ。そう聞こえた瞬間彼と壁に挟まれてしまった。は?何でだよ!そう突っ込みたいのだが、彼の手が私のワイシャツのボタンへと伸びる。 それを阻止するべく腕を掴むが、やはり男子。力で適うはずが無い。 そうなるとやはり着るか他のことをするしか無いわけなのだが…こいつの性格上、簡単にここを抜け出すことが出来る。そう、あまりやりたくないのだが、この方法を使えば彼は必ず退くだろう。 「征十郎」 「…っ!」 「退いて?」 「雪…」 「お願い、征十郎…」 所謂上目遣いをして彼を見つめれば、彼は私のシャツを掴んでいた手を口元へと持っていき、顔を赤くした。それから、私の顔へと顔を近付ける。 勿論、ここまで全部想定内だ。私はいつものように彼がキスをする寸前で自分の手を添え、それを阻止した…つもりだったが、彼もそれは読めていたようで、私の手を掴み妖艶に微笑んだ。 「今回はそうはさせないよ」 「ちょ、何言ってんの…」 「付き合って1ヶ月経つんだ…キスくらいさせてくれたって構わないだろう」 「だめ」 「拒否権などないよ」 そう言って、彼の顔はどんどん近付いてきた。私は暴れながら、必死に横を向いて目を瞑った。 ちゅっ 「ん……あれ?」 「あまりに嫌がるものだから、頬にした」 安堵の溜息を吐けば、寂しそうに横を向く赤司。流石に申し訳なくなり、謝ろうとしたところで、彼が言った。 「嫌いになったか…?」 「え?」 「強引だっただろう…すまない…」 「ち、違う、そういうわけじゃ…」 「嫌だったら言ってくれて構わない」 いや、いつも言ってるんですけど!!!という思いを胸の奥にしまい込み、次の言葉を考える。本気で落ち込んでいるのか、目も合わせようとせず、私の手を離した赤司。なんか、熱の時みたい…。あの時の赤司は可愛かったな…。 「その、恥ずかし…かっただけだから…別に嫌いとかじゃなくて……だからその…ごめん……」 謝れば、下げていた顔を上げ、驚いたように私を見つめた。そしていつもの余裕の笑みではなく、可愛らしい笑みを浮かべて言った。 「僕だって恥ずかしさが全くないわけではないよ、だから」 「ん…いいよ……」 別に嫌だったわけでもないし、寧ろ少し期待していた…?かもしれない。 そして落ち着かない私は赤司のネクタイを掴んだ。まるで、漫画の一コマのように。 少しずつ近付いてくる端正な綺麗な顔に少しだけドキドキして、目を閉じた。 数秒程後に唇に柔らかい何かが触れて、初めてキスをしたのだと実感した。 「あ、かし……」 「雪…」 「もう一回…くらいなら怒らない…」 なんだか心地好くて、嫌な気持ちはしなかったのでそう伝えると、驚いた後に赤司は笑った。 その後に再びキスをされて、一回と言ったのに、何度も何度も繰り返されて。 気付けばお互いに真っ赤になっていた。 「ばか」 「雪があんなことを言うから悪いんだ」 「無駄に上手いしなんかむかつく…」 「何度も等身大の雪のフィギュアで練習したからな」 どや顔で語る赤司に、キモチワルイ!!と告げると、気持ち良かっただろうと余裕そうに笑われた。 その笑みがむかついたから、軽く蹴りを入れておいた。 次の日 「雪、着るならセーラー服でも構わないよ」 「絶対着ないから!絶対!」 「メイド服の方が良かった?」 「あ!り!え!な!い!」 はあ、昨日は少し見直したんだけどな。やっぱり赤司の変態っぷりは治らないらしい。 |