8/26発行
※オフセット版のイベント初売りは10/07
(イベント配布前に書店通販などで手持ち分がほぼ完売したので10月スパーク合わせで再販しています)
これがプロトタイプ。流れはほぼこれ。というかこれがプロローグ扱い。

ブラックジョーク最前線。コミカル不条理エロエロ仲良し。
赤司、紫原、緑間、黄瀬、青峰、五人それぞれとエロシーンありなので、そういうのが苦手な方や18歳未満は引き返してください。


赤司征十郎企画、黒子テツヤ肉奴隷計画



 黄瀬はスタメンだけが使用できるバスケットボール部の部室の扉を開ける。数週間前に赤司が初めてここを使うと言った時は周りの反発を考えなくもなかったが今では当たり前のように感じている。他人の視線は気にならない。夏だからという理由以外でもむわっとした熱気が室内に充満していた。
 赤司がいないとすぐにこれだと黄瀬は冷房のスイッチを入れる。せめて送風でもつけていないとこの空間では死んでしまう。匂いもこもっていて酷い有様だ。
「黒子っちにちゃんとスポドリ飲ませてるっスか?」
 汗ばっかり流れて干乾びてしまうのじゃないかと黄瀬は心配だった。タオルを取って黄瀬は紫原の性器をしゃぶっている黒子に近づく。黒子は目隠しをしていた。触れようとする前に黒子の背中に覆い被さっていた青峰が起き上がる。寝ていたのだろうか。抱き枕が良質過ぎてずるい。自分が練習試合をしている間ずっと青峰たちが黒子を抱いていたのだと思うと文句の一つや二つ言いたくなる。
「ここ、ご飯の持ち込み禁止っスけど?」
 宅配ピザの空箱が二つ積まれている。誰の金でとったのか、学校に宅配させて問題にならないのからしくない小言めいたことが黄瀬の口から出た。
 うるさいと青峰の顔に書いてあったが止まらない。
「昨日からオレ黒子っちに触ってないんスよ」
 朝早くから練習試合に参加していた。黒子からの応援のメールは届いたが生の声が聞きたいし、その肌に触れて抱き締めたい。
 不満に思った黄瀬は注意力が落ちていらしく何かを蹴り上げた。床を見れば緑間がいた。
「何してんスか。仮眠室に行けばいいじゃないっスか」
 床で寝ている非常識さを突っつけば緑間は「動けないのだよ」と言い出した。
 げっそりとしている緑間に黄瀬は「はい?」と首を傾げる。紫原がまいう棒ではなく床においたクーラーボックスからアイスを取り出して食べていた。溶けたカップアイスはアイスとは呼ばないかもしれないが喉が渇いているらしい。空のペットボトルが転がりまくっている。
「黄瀬ちん、水頂戴」
「じゃあ、オレに黒子っち、ください」
 そう言いながら冷蔵庫から黄瀬はミネラルウォーターを取り出す。
「じゃあじゃないのだよ」
「黄瀬君、今日の練習試合の結果は?」
 紫原の性器から口を放して黒子は尋ねる。手は止めていない。紫原の反応から見ても指でも充分気持ちいいのだろう。黄瀬は羨ましくなった。
「もちろん楽勝っスよ。ね、だから、黒子っち、ご褒美」
「オレも峰ちんも辛いから、そろそろ交代いいかもね〜」
「辛くねえよ。全然イケる」
「で、緑間っち、どうして寝てるんスか」
 それに対して緑間は答えない。
 代わりに紫原が「黒ちんのせい」と青峰が「赤司のせい」とそれぞれ口にする。どっちだ。
「紫原君も青峰君もイケそうにないなら黄瀬君と交換してください。赤司君が戻ってくるまで後、一時間ってとこです。それまでに――」
「……ぐっ、狂っているのだよ」
「まーた、緑間っちはそんなこと言って」
 色々と不満はあるものの黄瀬は慣れた。
「メスシリンダーいっぱいにしないとならないんです」
 黒子の言葉にメスシリンダーって何だっけと黄瀬は思い出そうとしてテーブルに置かれた理科室でお馴染みの道具を見つける。メモリがついたガラスの容器は半分以上白濁液で満たされている。顔を近づけなくても精液だと分かる大量の白い液体。げっそりとして起き上がる気力もなく倒れている緑間。辛いと口にする紫原。
「これをいっぱいにするって、精液で、とかそういうことっスか? え? ま、黒子っちとヤれるならいいっスけど」
 以前はそこまで割り切れなかった。
 今は馴染んだとでも言うのか、夏の暑さにやられているからかこの状態を黄瀬は受け入れていた。黒子を他の誰かが抱いているのは絶対に嫌だった。自分だけのモノにしたかった。それでも、キセキの世代全員を敵に回して勝てるとは黄瀬も思わない。
 そして何より最初は黒子自身の気持ちがどこにあるのか黄瀬は知りたかった。今は何となくではあるが黒子が求めているものや他の皆の考えも分かったので妥協も覚えた。
 二番目に甘んじるのは嫌だが全員が一番になった場合、平等に訪れる幸運をその時々で掴む方が正しい。
「赤司君が来るまでに満たせなかったら――」
「なんスか? これ飲み干せとかっスか?」
「正解なのだよ。冗談じゃない」
「黄瀬ちん平気なの? じゃあ、飲んで」
「いや、気持ち悪いっスけど黒子っちが頑張って集めた皆のせーしってことっスよね。ちょっと感動するっていうか」
「じゃあ、お前が飲め。一滴も残さず飲み干せよ」
「紫原っちも青峰っちも自分の入ってるのに」
「だから何だッ。お前は自分の精液舐めんのか? 舐めねぇだろ。舐めんの好きなら、一人でヤッてろ。こっちくんな」
 手でしっしと黄瀬を追い払う青峰。黒子の腰を掴んで乱暴に動く。紫原を愛撫する黒子の手が止まる。
「峰ちん、一人で動くのやめてくんない?」
「あぁ? 一人じゃねぇだろ、テツも一緒に気持ちよくなってんだから」
「峰ちんのせいでさっきからオレ、不完全燃焼なんだけど」
 青峰の腰の動きが激しくなればそれに合わせて黒子の舌の動きが止まってしまうのだ。
「そうです。紫原君がちょっとかわいそうです」
「青峰、今日は朝からずっとなのだよ」
「緑間はテツに乗ってもらってたじゃねぇか」
「峰ちんは寝てるか、黒ちん犯しているかどっちかしかない。どうなのよ、それ〜」
「紫原もテツとヤッてるか菓子食ってるかどっちかだろ」
 黒子を間に入れて喧嘩する二人に黄瀬は「ダメっスよ」と仲裁に入る。二人の個人的な意見の食い違いなら外でやってくればいい。この部屋の中で争いはタブーだ。
「ここで喧嘩したら黒子っちに触るの禁止っスよ。二人だけならいいっスけど連帯責任でオレが迷惑するんでやめてもらえます? 喧嘩するなら部屋の外でお願いするっスよ」
 赤司が最初に決めたの約束は絶対だ。
「黄瀬がソレを飲むんなら喧嘩なんかしねぇから飲め」
「青峰っち、もう疲れたんなら寝てていいっスよ。オレ、黒子っちと二人っきりがいいから仮眠室行くね」
「勝手なことを言うな。お前はいつも考えなしなのだよ」
「緑間っちは起き上がれるようになってから言ってよ。どんだけ黒子っちに搾り取られたんスか? 羨ましい!!」
 全体的に動きが遅い三人に比べて試合に出たというのに体力が有り余っている黄瀬は身体中で不満を表現する。
「黄瀬君、手を貸すのでメスシリンダーの中身をいっぱいにしてください」
「了解っス! って、え? 本当に手だけ?」
 手を貸すというのは手伝う、協力するといった意味ではなかったらしい。手を黄瀬の方に向けるだけの黒子。
「酷いっスよ! 身体全体で来てよ、黒子っち!!」
「ボクもさすがに疲れました。足だけでもいいですか?」
「せめて脇とか、……足、なら素股でもいいから」
「青峰君」
「ムリ。黄瀬は一人でマスかいてろ」
「黒ちん、オレそろそろ」
 紫原の少し掠れた声に黒子は舌に意識を集中したらしい。
 頭の動きが激しくなる。上がる音の卑猥さに自分がして欲しくなる。汗と精液で汚れた黒子の肌と無骨な革の目隠し。首輪やボンテージ服の黒子も良かったが一部分だけ隠しているのも不自然で逆にいい。
「……っ、……んんぅ」
 呻く黒子。黒子の口の中に紫原が吐き出しているのだろう。改めて黒子が手を黄瀬の方に伸ばすので安心させるように握る。青峰に「ちげーだろ」と手を叩かれた。
「メスシリンダー……」
 黄瀬に伸ばした反対側の手で口元を押さえながら黒子が言う。口から僅かにこぼれてしまったのか床に滴ってしまった。青峰に急かされながら黄瀬は黒子にメスシリンダーを渡す。唾液と一緒とはいえ結構な量が黒子の口からメスシリンダーに入った。
「紫原っちって、量多いんスね」
 気にもしていなかった。
「お菓子食べてるせいかドロドロするので飲み込もうとするとえづきます」
「美味しくないっスよね。そりゃあ」
「赤司君がその人の体調によって味が違うって言っていました。たぶん、その通りです。ボク、なんとなく分かるようになりました」
「美味しい人とかっているっスか?」
「オレか」
 なぜか青峰が自信満々に呟く。
「あえて言うなら緑間君一択です」
「マジか? 緑間? なんで?」
「二回目ぐらいなら赤司君も結構いけます」
 肩で息をする黒子。
「オレは、オレは? 黒子っち!」
「本当に時々たまたまぐらいにマシな時はあります」
「え、飲んでくれてる時っていつも我慢してるんスか?」
「ノルマがなければやりません」
「そんな……黒子っち、酷い」
「んで、緑間なんだよ、テツ」
 青峰は紫原の性器を舐めるために四つん這い状態だった黒子をの上半身を抱きあげる。
「食べ物なのだよ。赤司もオレも食事にはそれなりに気を遣っているのだよ」
「緑間君はわりとフルーティな感じです」
「黒ちん、最初にミドチンに口でヤッた時に飲んだもんね」
「緑間君は最初から薄いので飲みやすいです。量とかも」
「緑間っち、少なそうっスよね。へぇー」
 チームメイトの意外な知識を得るが使いどころがない。
「エロ漫画だと濃くて美味しい、濃厚汁だく正義だっつうのに」
「現実と虚構の違いなのだよ。当然なのだよ」
「飲まないに越したことはないというのが本音です」
「どうしてっスか? タンパク質っスよ?」
「だから、飲みたいなら黄瀬ちんが飲みなよ〜」
 紫原はミネラルウォーターを一気に飲み干す。
 メスシリンダーを見て紫原「うぇー」と舌を出す。
 飲んだのは水なのに気持ち悪くなったらしい。
「別に飲みたいわけじゃないっスよ。黒子っちの唾液とか体液とかが混ぜ合わさってるって考えるとエロい液体だって思うだけで」
「黄瀬は頭がおかしいのだよ」
「愛が深いだけっスよね。ね、黒子っち」
「ちょっと、不快です」
 青峰に追い詰められている時に明るく言われて黒子の反応は冷たくなる。背面座位で腰を突きあげられて次第に余裕もなくなったのか黒子の唇は閉じられる。
「こういう状態の時とかキスしたくないっスか。下で繋がり舌も絡める熱烈なちゅー。黒子っちとちゅー」
「うるせー」
「オレはその前に黒子っちが何を口にしてても、ちゅーしたいっスよ。愛っスよ。ちゅ〜」
「黒ちんが直前に生魚食べててもキスしたいの?」
「したいっスよ」
「よくそんな気持ちの悪い事が言えるのだよ。信じられん」
「気持ち悪くないっスよ。黒子っちのことなんだから」
 当然のことだと思って黄瀬は言い放つが同意は得られそうにない。青峰を見れば後ろから黒子の首や肩を噛んでいた。黄瀬が文句を言う前に部屋の扉が開く。ここに居るのは黒子、紫原、緑間、青峰、黄瀬の五人だ。扉が開くということは最後にここに入る権利を持っている赤司がやって来たということになる。
「ま、まだ帰ってこないはずじゃなかったんスか」
「待ってくれ、もうちょっと」
「赤司、落ち着くのだよ」
「赤ちん、もう少し時間潰して来て欲しいんだけど」
「言いたいことはそれだけか」
 カッと目を見開く赤司にみんな緊張から息をとめる。
「この部屋の温度はなんだ」
「青峰君が『汗だくでやるのっていいよな』って空調を止めました。先ほど黄瀬君がつけてくれたみたいです」
「そのピザの空箱は」
「青峰が昼にとったのだよ」
「テツヤについた噛み跡は」
「青峰っちが、いま噛んだんスよ。酷いっス」
「今日、一番回数が多かったのは誰だ」
「峰ちん。ほとんど独占してた」
 室内の視線が青峰に集中する。黒子は目隠しをしていたが顔だけ後ろの青峰に向けた。
「お前ら、オレのこと売りやがって……」
 舌打ちをした青峰は黒子を更に抱き締める。
「その言い方は語弊があるのだよ。みんな本当のことしか言ってない。青峰が悪いのだよ」
「青峰っち、早く黒子っちから抜いて、その混濁精液とか一気飲みしていいっスよ。一気、一気!」
 手を叩いて音頭をとる黄瀬の耳を青峰は捻りあげる。
 涙目になって「黒子っち助けて」と黒子に手を伸ばす。
「黄瀬、ふざけんなよ」
「テツヤは予定通りに出来なかったのか。じゃあ、仕方がないね。折角買って来てあげたけど、これはお預けだ」
「え、もしかして」
 黒子はごくりと唾を飲み込む。
「涼太、テツヤの目隠しを取ってやれ」
「あいあいさー」
「マジバのバニラシェイクっ!!」
「残念だけど、流しに直行だね」
 黒子にとって見慣れたパッケージを持って赤司が簡易な洗面台の方へ行く。暴れる黒子に青峰が息を吐き出す。
「やばっ、テツ超気持ちいい」
「青峰っち、空気読もうよ」
「黄瀬ちんに言われるなんて……」
「オレはいつでも空気読んでるっスよ?!」
「赤司君、赤司君待って! 待ってください」
 必死な黒子の声に赤司は立ち止まって振り返る。
「言われた通りのことも出来なかったテツヤが僕に意見するのは間違ってないかな?」
「なにか青峰君が一発芸とかしますから、シェイクは捨てないでください」
「一発芸? 本当か、大輝?」
「え。あー、じゃあ、セミでも採って」
「――ペナルティでいいじゃないっスか青峰っちは今日、黒子っちといっぱいしたんスよね? 三日間この部屋立ち入り禁止とかってでどうっスか?」
「テツ、家でヤろうぜ」
「勝手なことは許さないと言っているだろ。テツヤが同意したとしても基本ここ以外でのテツヤへの性行為は禁止だ」
「でも、オレ水飲み場のところで黒子っちと赤司っちがキスしてんの見たっスよ」
「キスは性行為じゃないのだよ。黄瀬はそんなことも分からないのか? だからお前はダメなのだよ」
「詭弁っスよ。大人は汚いっス」
「みんな同い年だって黄瀬ちんはそんなことも忘れたの〜?」
「覚えてるっスよ。そうじゃなくって――」
「涼太の言い分も一理ある」
「ですよねー」
「大輝へのペナルティはそうだな、テツヤ。大輝とバニラシェイクはどっちが大切だ」
「バニラシェイクです」
「即答っスか」
「テツ〜」
 手招く赤司に黒子は青峰の腕を抜け出した。
 悲しげな青峰の声に後ろ髪が引かれたが喉の渇きや疲れには美味しいシェイクが一番だ。
「素直なテツヤにはご褒美をあげよう」
 渡されたシェイクに黒子は赤司は神なのではないのかと思った。優しい。神々しい。輝いている。
「赤司君は素晴らしい人です」
 そう言いながら黒子はシェイクを飲む。
 身体にエネルギーが補給される気がした。
「お前にシェイクを渡した人間が捨てようとしてたのだよ」
「赤司君はくれましたよ」
「それは結果論なのだよ」
「もういいです。バニラシェイクが飲めれば」
「黒子っちの中でマジバのバニラシェイクの比率が大きすぎるっスよ。青峰っちがあっさり捨てられるなんて!」
「テツヤはバニラシェイク好きだね」
「はい、大好きです」
「涼太より?」
「当然です」
「真太郎や敦より?」
「そうですね。シェイク最高です」
 黒子は幸せに浸っていた。暑い中で思考が溶けていた。
「僕より好き?」
「はい」
 何も考えずシェイクが好きだと答えた黒子の手の中からバニラシェイクは消えた。赤司が奪っていた。洗面台に流そうとする赤司の腕に黒子は縋りついた。
「黒子っちって正直者っスよね」
「空気が読めてないのだよ」
「この部屋の人間はみんなバニラシェイク以下だ。オレだけ下じゃねーからな」
「うぉ、ぉ、黒ちんがガチ泣きしそう」
「涙脆くなっているのは疲れているからなのだよ」
「朝からノンストップだったんだよね。仕方ないっスね」
 赤司に謝り倒している黒子の肩を黄瀬は叩く。
「黒子っち、帰りに奢るっスよ」
「帰りには店は閉まっているよ」
「え? 今日って深夜解散っスか?」
「解散自体は自由だ。帰りたいなら帰ればいい」
「赤司君、シェイク」
「ペナルティと言えば、黒子にもちゃんと与えないといけないね。出来なかったんだから」
 そう言って赤司は魔の混合液をバニラシェイクの上蓋を開けて流し込む。青峰と紫原が揃って「うわー」と真顔で口にする。緑間は「食べ物で遊ぶんじゃないのだよ」と寝転がったままだが正論を唱えた。
「良かったっスね、黒子っち! シェイク捨てられなかったっスよ」
「空気読んでください! 黄瀬君、これはバニラシェイクではなくて精子シェイクです」
「言いにくいっスね」
「ツッコミはそこじゃないです」
「うん、テツヤ? 飲んでいいよ」
 バニラシェイクの中に混ぜられてしまった白濁液。
「どんな味になっているのか想像もしたくないです」
 金輪際バニラシェイクを飲めなくなるかもしれない。
 これはバニラシェイクに対する挑戦、いいや、冒涜だ。
「飲みたくないの、テツヤ?」
 血の気の引いた黒子を庇うように黄瀬は「オレが飲むっスよ」と黒子の手からシェイクのカップをとる。
「黄瀬君、格好良さ過ぎて思わず惚れてしまいそうです」
「いくらでも惚れ直してくれていいっスよ」
「黄瀬、気持ちわりぃー」
「黄瀬は変態なのだよ」
「黄瀬ちん、えんがちょ」
「みんなして何?! オレの愛の形っスよ!!」
 言い争いを見ていた赤司は入口の扉の方から紙袋を持ってきた。最初から買っていたのだろう。
 テーブルの上にシェイクを五つ置いた。そして、黄瀬の手からシェイクを取るとストローを抜いて五つの中に混ぜ合わせる。位置はぐちゃぐちゃに入り混じり普通のものと精液入りのものが分からなくなった。
「ジャンケンをして、それぞれ時間を言ってくれないか」
「赤司君以外のみんなで、ですか?」
「いや、テツヤと敦はいい。敦、おいで」
「あ、あぁ、そっか。黒ちんが出来なかったから発表会にするんだね〜。分かった。準備する〜」
 紫原が服装を整えて部屋の奥の段ボールへ歩いて行く。
「発表会? 何の話だ」
「赤司君、まさか」
「まさかじゃない。僕はテツヤにちゃんと言っておいたよ」
「冗談だと思いたいじゃないですか」
「なんスか、なんスか?」
「とりあえず三人でジャンケンだ。真太郎、出来るか?」
「問題ないのだよ」
 緑間は床に寝たままだったが腕だけ上げる。
 戸惑いながらも黄瀬は「えーっと、じゃあ、じゃんけん、ぽんっ」と声をかけた。
 緑間、黄瀬、青峰の順で勝った。
「赤司、時間とはどういうことだ」
「そうだね。三分間とか一時間とかそういう区切り」
「……そうか、ならば五分だ」
「長い方がいいのか短い方がいいのかヒントはねえんだよな。オレは一時間にしとくわ」
「青峰っちチャレンジャーっスね。オレは十分でいいっス」
 赤司は「五分、十分、一時間か」と呟くと紫原を呼んだ。
「敦はどうしたい?」
「赤ちんの好きにしていいよ〜。オレはどの黒ちんもかわいいと思うのよ」
「それはその通りだな。テツヤはどの瞬間もかわいい」
 何の話か分からないまでも黄瀬は「そうっスよね。黒子っちはいつでもかわいいっスよ」と頷いた。
「オレと一緒に居るテツが一番かわいいに決まってる」
「男にかわいいという表現はおかしいのだよ」
「緑間っちは黒子っちはかわいくないって言うんスか?!」
 信じられないと驚愕する黄瀬に黒子が「これは緑間君が正しいです」と腰砕けて寝転がっている緑間の身体を起こした。じゃんけんをしている間に軽くシャワーを浴びた黒子は紫原のTシャツを着ていた。着ているのはTシャツだけで下半身は無防備な状態なので緑間は目を反らす。
「緑間っちのムッツリ!」
「テツ、ヤらせろ」
「お前たちは黙るのだよ」
 紫原が緑間をソファに座らせる。
 使われていなかった倉庫のような部屋がいつの間にかクーラーがつきソファやテーブルが入り、冷蔵庫やテレビまでついた。監督も誰も知らない秘密の部屋。奥の部屋にはダブルベッドもあり通称仮眠室と呼ばれている。ビジネスホテルよりも充実していた。アダルトグッズなどが特に。
「テツヤの好きなバニラシェイクでも飲みながら、テツヤとみんなのはじめてでも見ようか」
 そう言って赤司は紫原がセッティングしたテレビを操作する。「まずは真太郎を五分だな」と口にするのに対して緑間は叫ぶ。
「どういうことなのだよ!」
「みんなと黒ちんがヤッてるの全部、オレと赤ちんが撮ってたの〜。知らなかった?」
「マジっスか?! 全部見てたんスか?」
「隠し撮りの時もあるが大体はその場に居たな」
「全然覚えねぇーよ」
「ミスディレクション。簡単なことだ。お前たちは揃ってテツヤを見ていたからな、逆にそれ以外を見ていなかった。背後から撮影することなど容易い」
「紫原君に気付かないなんて事、あるんですね」
「オレはほら、塗り壁とか電柱とか樹とかに化けるから〜」
「不自然極まりなかったとしてもテンションの上がり切った脳は自然なことだと解釈する」
「それだけ黒子っちしか見てないってことっスね」
「シェイクの中であたりを引いた人間は明日、テツヤと二人っきりだ。ちゃんと飲みきれよ」
「赤司君……あの、練習試合は?」
「テツヤは僕の言う通りに出来なかったから出さない――」
 黒子の方は目に見えて下がる。
「――と言いたいところだが、明日の朝に動けるようなら別に出てもいい。寝てたいなら僕は起こすことはしないよ」
「今日はお泊りコースが決定済みなんですね」
「たぶん、逃がせない」
 ちゅっと赤司は黒子のおでこにキスをする。
「なあ赤司、これ、シェイク飲まないとダメか?」
 青峰がテーブルの上を指差しながら言った。
「勘弁して欲しいのだよ」
「二人ともテツヤに協力してやれと言っただろ」
「非協力的でした。苦労しました」
「テツ、オレは」
「峰ちんはミドチンから黒ちん奪うのに必死って感じでメスシリンダーの中に溜めようとしなかったよね〜」
「いちいち中断してっと萎えんだろ」
「全然平気っスよ。黒子っちがちょっと待ってて席を外しても想像上の黒子っちといちゃいちゃして三時間ぐらい余裕で潰してテンション保てるっスよ」
「黄瀬は病気なのだよ」
「涼太はテツヤに一回逃げられていたね」
「アレは愛の試練っスよね」
「ちょっと黄瀬君、怖かったです」
「テツをビビらせるとか黄瀬、何したんだよ」
「変なことをしてないっスよ。ね、黒子っち?」
「アレが普通なら逆に黄瀬君にとっての変な事が何であるのかが気になりますね」
「とりあえず、バニラシェイクで乾杯だ」
「バニラシェイクじゃねえ地雷が入ってるだろ」
「赤ちん、どれ飲んだら平気?」
「ん、そうだね。実は見分けるのは簡単で――」
「教えんのかよ! オレも飲まねえ。黄瀬が飲めばいい」
「別にいいっスよ。明日の黒子っちはオレだけのモノっすね。そのための苦労とか全然余裕っスよ」
「黄瀬君の好感度がスゴイ勢いで上昇していきます」
「後は落ちるだけなのだよ」
「不穏なこと言わないでくださいよ! もう、緑間っちは黒子っちに寄りかかって羨ましいっスよ?」
「涼太はテツヤの足の間にでも居ればいい」
「これは黒子に寄りかかっているというよりも紫原にもたれているのだよ」
「ミドチンまだ身体辛いの〜?」
「平気なのだよ」
「平気なら真っ直ぐ座れよ」
 溜め息を吐きながら壁に背中をつけて座る青峰。
 緑間とは反対隣りに赤司がいた。
「赤ちん、黒ちんにイタズラしていい?」
「ボクじゃなく赤司君に聞くんですか……」
「あまり激しくしてはダメだよ。上映会がメインだからな」
「ミドチンは五分だから上手くしないとね〜」
 紫原のゆるい言葉に「結局、長い方がいいのか短い方がいいのか分からないっスね」と黄瀬は呟いた。
 自分と黒子の情事を人に見せたいかと言われればNO。
 黒子の表情も声も全部独り占めしてしまいたい。
「黒子っち、これ、普通のバニラシェイクっスよ」
 たまたま取ったシェイクを一口飲んで黄瀬は黒子に渡す。そして、乾杯と言いながら赤司を含めて誰も手を伸ばしていないシェイクを黄瀬はまたとる。
「黄瀬君の意外に真面目な所、いいと思います」
 ソファには座らず黒子の足に挟まるようにしている黄瀬の髪を黒子は撫でた。黄瀬は嬉しそうに笑う。
「黒ちんが黄瀬ちんを甘やかしてる!」
「涼太は甘え上手だよね。けれど、奉仕させるという点では一番は真太郎だと思うよ」
 赤司が部屋の電気を消す。
「それほど昔のものじゃないが懐かしく感じる映像でも見て楽しもうか?」
「っとに悪趣味だな」
「赤司のことなら今更なのだよ」
「後でダビングして欲しいっスよ」
「黒ちん、ドキドキしてる〜」
 紫原の大きな手が黒子の胸に置かれた。
 後ろから抱きこまれるのは黒子も慣れたはずなのに落ち着かない。シチュエーションが異常だからだ。
 紫原の膝の上で後ろから抱きしめられて両脇に赤司と緑間。足元には黄瀬。少し離れたところから見ている青峰は怒っているのだろうか。振り向いてかち合う視線にトゲがある。
「五分間だから適当に飛ばさせてもらうよ」
 赤司のそんな言葉を聞きながら黒子は目を閉じる。
 見たいか見たくないかで言えば自分の恥ずかしいところだけを収めているような映像には触れたくないのが本音だ。
 口にすれば赤司の気分は悪くなるかもしれない。
 だから言うつもりはないが、この企画は最初から壊れている。


2012/08/26再販2012/10/07
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