05
煉獄関では一人の天人が複数の侍相手に暴れていた。天人の特徴からすると荼吉尼だろうか。夜兎、辰羅に並ぶ傭兵部族と呼ばれている。銀時も戦ったことがあるが、夜兎に比べれば大分殺りやすいだろう。
銀時は鬼道丸の面を被り、試合が終わるのを待って闘技場に入る。鬼獅子と呼ばれる荼吉尼と向かい合った。

「……貴様、何故ここにいる?貴様は確かにわしが殺したはず……」
「てめーか?俺を殺したのは。イライラして眠れなくて起きてきちゃったじゃねーか。どーしてくれんだコノヤロー」
「ここはもう貴様の居場所じゃない。わしの舞台じゃ。消え去れ」
「消えねーさ。まっすぐに生きたバカの魂はな。たとえその身が滅ぼうが消えやしねー」
「ほう。ならばその魂……今ここでかき消してくれる!!」

振られた金棒を避け、木刀で鬼獅子の額に切りかかる。すれ違い、鬼獅子は腰の刀を手に振り返った。鬼の面はやられたが、銀時はしゃがんで無事だ。下から切り上げ、左手首の骨を折る。右手に持った金棒が振り抜かれ、銀時は足を踏ん張り木刀で金棒を受けた。受けきれず腹に衝撃がきたが、痣が出来た程度だろう。

「ククク……オイ、デカブツ。こんなもんじゃ、俺の魂は折れねーよ」

踏み込み、袈裟懸けに振り切った。鬼獅子は吹っ飛ばされ血に落ちる。
鬼獅子は倒したが、これからが大変だ。煉獄関の者だろう、武器を持った連中がぞろぞろ現れる。

「てめーなんてことしてくれやがる。俺達のショウを台無しにしやがって。ここがどこだかわかってるのか?一体どういうつもりだ。てめーは何者だ?」

銀時は答えず、これからの戦闘に備え構える。
銀時を囲むように広がろうとするが、散弾が巻かれ敵は身を引いて避ける。土煙が晴れた先には、観客席に立つ二人の姿。節分豆のおまけについているお面をした新八と神楽がいた。

「なっ、何者だアイツら!?」
「ひとーつ人の世の生き血をすすり」
「ふたーつ!!不埒な悪行三昧」
「「みぃーっつ!!」」

指を差して問われるが、いざ聞かれると咄嗟に出てこない。何だったか。というか二人もここに来たのか。

「……ったく。えーみーっつ……み、みみみっともないぞポイ捨て禁止」
「どこの標語だァァァァ!!」
「銀ちゃん、みーっつミルキーはパパの味アルヨ」
「ママの味だァァ!!違う違う!みーっつ醜い浮世の鬼を!!」

敵に突っ込まれてしまった。確かにそんな感じだった。

「「たっ……退治てくれよう。万事屋銀ちゃん見参!!」」

グダグダになったが、ポーズもとってしっかり決まった。

「……ふ、ふざけやがってェ!!」
「やっちまえェ!!」

襲いかかって来る者を倒すため走り出す。まずは勢いのまま顎を蹴り上げ、倒れた所をふんずけて次に目についた者を木刀で叩き倒す。新八と神楽も危なげなく無力化している。

「死んでもしらねーぜ!こんな所までついてきやがって」
「まだ今月の給料ももらってないのに死なせませんよ!!」
「ウチの給料月末だから、まだ半月先だ、なッ!」

風を切る槍をしゃがんで避け、下から木刀で顎を打ち上げる。

「それに銀ちゃん、雪路残して死ぬ気ないアル。だから私達も死なないネ」
「まァなー。孫見るまでは死ねねーわ。しかもこいつら程度に殺されたら苦情来るわ。絶対墓ぶっ壊して眠らせてくんねーわ」

銀時達の勢いに押され、敵は一ヶ所に集まりだす。何が起こっているのか理解出来ない男に、沖田は背後から刀を向ける。

「理解できねーか?今時弔い合戦なんざ。しかも人斬りのためにだぜィ?得るもんなんざ何もねェ。わかってんだよ、んなこたァ。だけどここで動かねーと、自分が自分じゃなくなるんでィ」
「てっ……てめェらこんなマネしてタダですむと思ってるのか?俺達のバックに誰がいるのかしらねーのか」
「さァ?見当もつかねーや。一体誰でィ」

固まっている集団を真選組が囲み、刀を向ける。

「なっ、こいつァ!?」

沖田が刀を向けている男に、同じく土方も背後から刀を向ける。

「オメー達の後ろに誰がいるかって?僕たち真選組だよ〜」
「アララ、おっかない人がついてるんだねィ」

真選組の登場に観客はこぞって逃げ出し、煉獄関の関係者は捕らえられた。ただしその中に天導衆の姿はない。上手く逃げられ、良かったのか悪かったのか。捕まえたとしても正当に裁けたはずもないので、良かったのだろう。





―――――――――――

降っていた雨はやみ、空には夕焼けが広がっていた。嫌がらせか銀時まで真選組捕らえられそうになったが、煉獄関の件は無事終わりを迎えられた。

「結局一番デカい魚は逃がしちまったよーで。悪い奴程よく眠るとはよく言ったもんで」
「ついでにテメェも眠ってくれや、永遠に。人のこと散々利用してくれやがってよ」
「だから助けに来てあげたじゃないですか。ねェ?土方さん」
「しらん。てめーらなんざ助けに来た覚えはねェ。だがもし今回の件で真選組に火の粉がふりかかったらてめェらのせいだ。全員切腹だから」
「え?」

じゃあ来なければ良かったのに、とは言えない。真選組が来たから今回丸く収まったのだ。やはり権力は偉大だった。

「ムリムリ!!あんなもん相当ノリノリの時じゃないと無理だから!」
「心配いりやせんぜ。俺が介錯してあげまさァ。チャイナ、てめーの時は手元が狂うかもしれねーが」
「コイツ絶対私のこと好きアルヨ。ウゼー」
「総悟、言っとくけどてめーもだぞ」
「マジでか」

騒いでいる横で銀時は鬼道丸の面を手に持ち、宙に投げる。

「こいつァもう必要ねーよな」

落ちてきた面を、木刀で砕いた。

「アンタにゃもう似合わねーよ。――あの世じゃ笑って暮らせや」




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