04
銀時はキャプテンっぽいをコンセプトにコスプレしていた。顔の中央を斜めに走るように傷痕シールを貼り、鼻の下にはつけ髭シールを貼る。頭はオールバックに撫で付け固めた。左腕が動かせないので、着替えは桂に手伝わせた。左手にはフックを仕込んでいる。
桂も同じコンセプトの元着替えた。左目にドクロ模様の眼帯をして頬に傷痕シールを貼っている。
これでテンション上げは完璧だと、春雨の船へと乗り込む。

「だァーからウチはそーゆのいらねーんだって!」
「つれねーな。俺達も海賊になりてーんだよ〜。連れてってくれよ〜。な?ヅラ」
「ヅラじゃない。キャプテンカツーラだ」

それはほとんどただの桂だと思う。

「俺達、幼い頃から海賊になるのを夢見てたわんぱく坊主でさァ。失われた秘宝“ワンパーク”というのを探してんだ!な?ヅラ」
「ヅラじゃない。キャプテンカツーラだ」
「しらねーよ。勝手にさがせ」
「んなこと言うなよ〜。俺手がフックなんだよ。もう海賊かハンガーになるしかねーんだよ〜」
「しらねーよ。なんにでもなれるさ、お前なら。とにかく帰れ。ウチはそんなに甘い所じゃな……」

天人が背を向けた。桂に借りた刀を抜き、天人の首元に突きつける。同時に桂も刀を抜き、銀時の刀と交差させた。

「面接ぐらいうけさせてくれよォ」
「ホラ、履歴書もあるぞ」

捕らえられた新八と神楽の元へと案内させる。初めての船内は詳しくないが、上へ上へと連れて行かれてるのはわかる。

「本当にこっちだろうなァ?」
「ほ、本当だ。桂の拠点を吐かせるって言ってたからな」

桂なら、ここにいますが。

「おめー、池田屋の時もそうだが隠密行動向いてねェな」
「溢れ出るカリスマオーラでバレてしまうのだな」
「んなもん出てねーよ。出てんのは電波だ」

コソコソと会話をしながらも天人を脅し進む。通路の先が途切れ、甲板に出たようだ。甲板には多くの天人が集まり、何かを囲んでいる。

「銀時、あそこを見ろ」

桂の指差す先には、水平にのばした剣の先に服を引っ掻けた状態で宙ぶらりんにされている神楽がいた。

「ほァちゃアアア!!」

(ギャー!!何やってんのあの子!?)

神楽は剣を掴んでいる陀絡を蹴っ飛ばし、自ら船外へと身を踊らせた。

「足手まといなるのは御免ヨ。バイバイ」
「待てェェェ!!」

神楽が宙へ飛び出すのを見た瞬間、垂れ下がる縄の一つをフックに結びつけ、銀時も船外へ飛び出す。縄を支えに船の側面を走る。

「待て待て待て待て待て待て待てェェェ!!ふんがっ!!」

どうにか落下する神楽を受け止め、勢いを利用し甲板へ戻る。フックを手放すと、勢いがつきすぎたまま甲板を転がった。

「……いでで。傷口ひらいちゃったよ。あのォ、面接会場はここですか?」

神楽をその場に座らせ、銀時は立ち上がる。風を感じすぎたせいですっかりオールバックが崩れたので、手でほぐし元の髪型に戻す。

「こんにちは。キャプテン・タイム・シルバーです。キャプテン志望してます。趣味は植物観賞。特技は料理です。戦うコックさんにもなれます」
「銀さん!!」
「てめェ、生きてやがったのか」

銀時が適当に場を和ませると、船内で爆発音がして煙が這い出してきた。

「陀絡さん、倉庫で爆発が!転生郷が!」
「俺の用は終わったぞ。あとはお前の番だ、銀時。好きに暴れるがいい。邪魔する奴は俺がのぞこう」

倉庫での爆発とは桂の仕業らしい。上手く転生郷を始末出来たようだ。

「てめェは……桂!!」
「違〜う!俺はキャプテンカツーラだァァァ!!」

桂が爆弾を投げ、辺りは熱風と煙が満ちる。雑魚の大半はそちらに行ったので、銀時は陀絡と向き合う。

「てめーら終わったな。完全に“春雨”を敵にまわしたぞ。今に宇宙中に散らばる“春雨”がてめーらを殺しにくるだろう」
「知るかよ。終わんのはてめーだ」

銀時は刀を抜く。
誰に狙われようと譲れないものはある。海賊にビビるくらいなら、天人も幕府も敵に回した時代に攘夷志士なんてやっていない。伊達にこんな酔狂な人生送ってないのだ。

「いいか……てめーらが宇宙のどこで何しよーとかまわねー。だが俺のこの剣、こいつが届く範囲は――俺の国だ」

手の届く内側を護るのは、昔から銀時の役目だ。銀時が内側を護り、桂と高杉がその外を護る。それは今まで変わらなかった縄張りだ。これからも、内側で暴れる輩はどんな素性の者だろうと許さない。

「無粋に入ってきて俺のモンに触れる奴ァ、将軍だろーが宇宙海賊だろーが隕石だろーが。ブッた斬る!!」

同時に踏み込み、一振りに力を込める。銀時は剣を避け、陀絡は刀を避けることは出来なかった。

「クク……オイ。てめっ……便所で手ェ洗わねーわりに、結構キレイじゃねーか……」

陀絡が倒れ、銀時は刀を鞘に収めた。





―――――――――――

「アー、ダメっスね。ホント、フラフラして歩けない」
「日ぃ浴びすぎてクラクラするヨ。おんぶ」

この子供達に情けという慈悲の心はないのか。銀時はクラッときて頭を押さえる。

「何甘えてんだ腐れガキども。誰が一番疲れてっかわかってんのか!二日酔いのうえに身体中ボロボロでも頑張ったんだよ銀さん!」
「僕らなんて少しとはいえヤバイ薬かがされたんですからね!」
「つきあってらんねー。俺、先帰るからな」

つまり全員疲れてるのだ。各々さっさと歩いて帰るべし、だ。しかし誰も銀時の後を着いてくる気配がない。

「いい加減にしろよコラァァァ!上等だ、おんぶでもなんでもしたらァ」

怒鳴るととっても元気よく走ってきた。勢いそのまま背中に飛び乗って来る。

「元気爆発じゃねーかおめーら!!」
「銀ちゃん、私ラーメン食べたくなってきたヨ」
「僕寿司でいいですよ」
「なら大食いチャレンジやってる中華屋行って、その後寿司だな。神楽に寿司オンリーで食わせると今月の食費なくなる」

銀時も疲れ果てて夕飯を作る気力がないので、今日ぐらいは外食でもいいだろう。銀時は食べる元気もないというのに、子供達は元気だ。

「……ったくよ〜、重てーなチクショッ」




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