01
米屋に駆け込み契約した。週に一度、米を配達してくれることになった。八百屋に駆け込み契約した。二日に一度おすすめ野菜を配達してくれることになった。ある程度指定の自由も効いてありがたい。食料を多く運べるよう、神楽専用の台車を買った。炊飯器をもう一台買い足した。冷蔵庫も大型のものに買い替えた。それでも足りなかったと言うのか。

「俺が買いだめていた大量のチョコが姿を消した。食べたのは誰かなー?」
「アンタいい加減にしないと糖尿になりますよ」
「ちゃんと日常で消費出来るカロリー分しか食ってねーわ。甘味の貯蓄に余裕ないと不安だから、大量買いしてるだけだから」

定期検診でも、今のところ糖尿病について言われたことはない。
反応が返って来なかった神楽を見ると、新聞を読んでいた。……鼻血をダラダラ流しながら。

「またも狙われた大使館。連続爆破テロ凶行続く……物騒な世の中アルな〜。私恐いヨ、パピーマミー」
「恐いのはオメーだよ。幸せそーに鼻血たらしやがって。食うのはいいがまず事前に言え。そして限度を考えろ」
「チョコ食べて鼻血なんてそんなベタな〜」
「いや怒んねーからとぼけんなァァ!食うのはいいっつってんだろ。食ったなら報告しねーと補充出来ないだろーが。お前俺が気付かなきゃ当分チョコ食えないとこだぞ」
「! 次からちゃんと食べる前に言うアル!!」
「アンタらそういう問題じゃねーだろォォ!!」

新な坂田家ルールが定まったところで、ドガンッと家が揺れた。

「なんだなんだオイ……事故か」

玄関を出ると辺りはざわつき、通行人の視線は万事屋の下に集まっていた。下を見るとお登勢の店にスクーターが突っ込んでいる。

「くらあああああ!!ワレェェェェェ!!人の店に何してくれとんじゃアア!死ぬ覚悟できてんだろーな!」

お登勢が倒れた男の胸ぐら掴んで叫んでいる。その辺の男にぶつかるより、お登勢にぶつかる方が余程恐ろしい。上から見てるのでお登勢の表情が見えないのを感謝したい。
店に突っ込まれたようだがお登勢は無事なようだ。店の入り口はぐちゃぐちゃだが。

「ス……スンマセン。昨日からあんまり寝てなかったもんで」
「よっしゃ!!今永遠に眠らしたらァァ!」
「お登勢さん、怪我人相手にそんな!」

見かねた新八が止めに入った。銀時と神楽も下におりる。

「……こりゃひどいや。神楽ちゃん救急車呼んで」
「救急車ャャァアア!!」
「誰がそんな原始的な呼び方しろっつったよ」

新八が男を見ているので、銀時は辺りに散らばった封筒を拾いあげる。運んでいたスクーターには飛脚のマークが入っている。

「飛脚かアンタ。届け物エライことになってんぞ」
「こ……これ……」

重傷らしい男が小包を差し出す。銀時には死ぬような怪我に見えないのだが、やたらしんどそうだ。それに何故かイライラするウザい顔つきをしている。

「これを……俺の代わりに届けてください……お願い。なんか大事な届け物らしくて、届け損なったら俺……クビになっちゃうかも。お願いしまっ……」

男は気を失った。どうも胡散臭くて気が乗らないのだが、どうするか。





―――――――――――

結局男に同情した新八に押し切られ、小包に書かれた住所にやって来てしまった。目の前には屋敷という域を越えた立派な建物がある。

「ここであってんだよな」
「うん」
「大使館……これ戌威星の大使館ですよ。戌威族っていったら地球に最初に来た天人ですよね」
「ああ江戸城に大砲ブチ込んで無理矢理開国しちまったおっかねー奴らだよ。嫌なトコ来ちゃったなオイ」

そんな所の前に座り込んだ托鉢僧も肝が据わっている。よく追い出されないものだ。

「オイ。こんな所で何やってんだてめーら。食われてーのか、ああ?」

銀時よりも頭一つ以上背の高い、二足歩行の犬に呼び止められた。

「いや……僕ら届け物頼まれただけで」
「オラ神楽、早く渡……」
「チッチッチッ。おいでワンちゃん。酢昆布あげるヨ」

神楽の頭を叩いて止める。そんなのが効くわけない。

「届け物がくるなんて話きいてねーな。最近はただでさえ爆弾テロ警戒して厳戒体制なんだ。帰れ」

意外とまともな対応だが、門番が届け物について知らないと言うなんて嫌な予感は高まるばかりだ。面倒事に巻き込まれたくなくてワンちゃんに小包を押し付ける。

「ドッグフードかもしんねーぞ。もらっとけって」
「そんなもん食うか」
「あ」

小包が弾かれ、門を越えて敷地内に落ちた。派手な音を立てて小包は爆発し、床石を削り門を歪ませ熱風が押し寄せる。

「…………なんか、よくわかんねーけど。するべきことはよくわかるよ。逃げろォォ!!」
「待てェェテロリストォォ!!」

ワンちゃんが新八の腕を掴み、新八が銀時の腕を掴み、銀時が神楽の腕を掴んだ。

(しまったァァ!!これ完全に悪い流れ出来ちゃったよオイ!)

この状況で手を離せる者はいないだろう。特に銀時は神楽を離すわけにはいかない。野に放つとコイツは何をし出かすかわからない。

「新八ィィィ!てめっ、どーゆーつもりだ。離しやがれっ」
「嫌だ!一人で捕まるのは!」
「俺のことは構わず行け……とか言えねーのかお前」
「私に構わず逝って二人とも」
「ふざけんな、お前を一人に出来るか」
「アンタこんな状況で何言ってんだァァ!」
「あ、間違えた。お前“は”一人に出来るか、だ」
「ぬわぁぁぁ!ワン公一杯来たァァ!」

新八の声に振り向くと、大使館から続々とワンちゃんの応援が駆けつけている。と、壁際に座る托鉢僧が目に入った。托鉢僧はワンちゃんの頭を踏みつけながら進み、最後に新八の腕を掴むワンちゃんを踏みつけ銀時達の前に下りた。

「逃げるぞ、銀時」

笠を上げて見えた顔は、女と見紛う整った顔立ちの男だった。相変わらずの黒髪ストレートが憎らしい。

「おまっ……ヅラ小太郎か!?」
「ヅラじゃない桂だァァ!!」
「ぶふォ!」

拳が顎に入った。幼い頃はまだ小太郎と呼んでいたが、いつからかヅラと呼ぶのが一番多くなったのだからいい加減に慣れてくれてもいいだろう。

「てっ……てめっ、久しぶりに会ったのにアッパーカットはないんじゃないの!?」
「そのニックネームで呼ぶのは止めろと何度も言ったはずだ!」
「つーかお前、なんでこんな所に……」

今はのんびり話も出来ないらしい。ワンちゃん達が襲い掛かって来た。

「話は後だ、銀時。行くぞ!」
「チッ」

銀時達も桂の後を追って走り出した。





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