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更新履歴とか返信とか。 ■ 番外編:放課後、教室にて。 2013/08/05 10:23 Mon 「好きな人っている?」 放課後、親友と二人きりの教室、グラウンドの向こう、テニスボールの弾ける音、嬉しそうに笑う親友の顔 すべてが淡くて、切なくて、 残酷だ。 「す、好きな人?」 「そう、好きな人!麻衣子はいないの?」 「好きな人…か…」 「好きな人」と言って思い浮かぶ人は何人か。 いつも私を第一優先に考えてくれる家族の存在だとか、もちろん目の前でニコニコしている親友であったりとか。 「好きな人」とはそういうものをいうのか、それとも… ああ、外から聞こえてくるテニスをしている音がとても心地良い。 「お、お兄ちゃん…とか?」 「ちがうよー!!そういう意味じゃなくてー!!」 大丈夫だよ、ごめんね、分かってるよ、何もかも。 言いたくないだけなんだ、ごめんね。ごめんね。 「好きな人っていうのはー、こう…見ててドキドキしたりー、その人のことずーーっと考えちゃったりー、そういう相手だよーっ!!」 嬉しそうに微笑みながら、楽しそうに話す親友はとても輝いていて、それと同時に色々な感情が入り混じる。 いつも私が部活してるところに差し入れ持ってきてくれるよね。 いつも私の応援してくれるよね。でも、 いつも違う方、向いてるよね。 いつも…「彼」のこと、見てるよね。 「そ、そういう人はー…」 「お、だれだれー?!ちょっとー!!気になるよー!!」 どうしてかな、なんでかな、考え出すと止まらない。 どうして、この世に同じ人って二人いないのかな。 どうして、「彼」なのかな。 どうして、「親友」なのかな。 私は、「どうしたい」のかな。 「いないよ」 「え?」 「……好きな人は、いないんだ」 そうだ、きっとこれが「正解」 あんな感情、なかったんだよ、きっと。そう。なかった。そんなもの。 私が大切にしたいのは、今、目の前にあるこの「風景」 だから、いいんだ、いいんだよ、これで。 「そっかー、せっかくお互いで協力し合おうと思ったのになー!」 「お互い…か…」 「えへへ……あたしにはいるんだ、好きな人ー!!」 そう言って笑う彼女はやっぱり輝いていて、自分の選択が間違っていなかったと改めて感じる。この笑顔、大好きなんだもん。だけど、 どこか冷めていく心の変化に戸惑う。 ねえ、あなたが見ている「景色」、私も大好きなんだ。 本当は誰にも、渡したくないんだ。 「麻衣子!聞いてるー?」 「…はっ、あ、ごめん!ぼーっとしちゃった…」 「ヤダァー!誰が好きなのか言ったのにー!何回も言うの恥ずかしいよー!」 「ご、ごめんね、もう一回、教えて?」 「もう一回だけだよー!…えへへ、うちのクラスのー、岸くん!!」 夏、親友、好きな人、私の気持ち、 やっぱり、すべて淡くて、切なくて、 残酷だ。 「そ、そうなんだー…」 「えへへ、麻衣子にしか言わないからね!ナイショだよ!」 「うん…」 きっと、色褪せていく季節の中で、私の気持ちだけが色濃く残って、いつまでも消えなくて、 でも、きっとそれでいい。私の心の中でその「感情」が生きていれば、それで、 きっと、いい。 「うまくいくと、いいね!」 「えへへ…うん!!」 やっぱり外からはテニスボールの弾ける音がしてる。 ああ、なんて心地良いんだろう。 ================= ある二人の少女の話。 |