鮮やかなお手並み
「8」
「ダウト」
私がそう言うと柑流はゆっくりと今出したカードを捲る。そこには赤いハートの女王がこちらに微笑みかけていた。
「はい、これ柑流の手札」
今までの溜まったカードを柑流の方に押し出すと、柑流は手札を宙に投げた
「ここからじゃ勝てないわ。私の完敗」
「じゃあそろそろ初詣でも行く?」
トランプを片付けながらそう言うと、柑流は、外寒いかなぁと言いつつも楽しそうにコートを着込んでた。
「あ…伊織ちょっと目つむって」
自分も上着を着て部屋を出ようとしてドアノブに手をかけるとそう言って引き留められる
もしかして柑流からのキス?なんてちょっと期待して目を瞑ってみる。
「目元に埃付いてた」
「…ありがと」
もちろんそんな事はなく、それどころか可愛げも何もない理由。ちょっとがっかりしつつ部屋を出ようとするとまた呼び止められた
「ちょっともう1回」
「あら…取れてなかった?」
そう言って目を瞑ると一瞬だけ、頬に柔らかな感触があった。
驚いて目をあけると、頬をうっすらピンク色に染めた柑流の姿が目に入った。
「…ゲームの、仕返し」
どうやらゲームに負けたのが悔しかったから、なんとか私を騙そうとしたけど思ったより恥ずかしくなったみたい
「…騙されたわ、私の負け」
そう言うとちょっと嬉しそうに笑った柑流に、もっとも柑流に惚れた私は最初から負けてるって言ったら顔を真っ赤にして馬鹿って言われた。
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