「不二が最後に来るなんて珍しいねー…って、」
「おはよう、菊丸君。今日は見学させてもらうね」


部室前に着いた途端入れ違うように飛び出してきた菊丸君に挨拶をする。

菊丸君は私を見た途端目を見開いたかと思えば、不二君が部室に入るのを確認してこそこそと近付いてきた。


「ね、ほんっとに不二と付き合ってんの!?」
「え、うん」
「にゃんで!?不二のこと好きだったの!?」


菊丸君の疑問の意図が面白いくらいにわかってしまう。せー君のこととか、私達が面白がってることとか、聞きたいことが溢れかえるみたい。


「不二君は面白いよね」


とりあえずそう言って笑いかければ、拍子抜けしたような表情を浮かべられた。


「…不二が遊びで付き合ってるっぽいから止めた方が…って思ったんだけど、お互い様にゃんだ?」
「あはは、心配してくれた?」


私の問い掛けに苦笑する菊丸君は、気持ちを切り替えたように笑顔になった。


「ね!じゃあ今日1日テニス部手伝ってよ!」
「え?」
「だって絶対今日揉めるじゃん?君のせいなんだから責任持って片付けること!」


マネってことにすればコートに入れるし、最悪の事態にはならなくにゃい?と笑顔で言い放った菊丸君は、私にどんな力があると思ってるんだろう。


「俺からみんなに言っとくし、とりあえずもうすぐ立海来るし迎えに行ってきてよ!」
「私が?」
「…誰も行きたくにゃいの!絶対幸村から変な圧力向けられるじゃん」


本気で嫌そうな顔をした菊丸君に思わず笑ってしまう。せー君そんな怖がられてるの?ただ機嫌が悪いだけでしょう。


「わかった、じゃあ行ってくるね」
「お願いねー!」


勢いよく手を振る菊丸君に軽く微笑んで返す。

まあ、機嫌の悪いせー君と会うのはきっと楽しいからいいや。

校門の方へと向かう足取りが軽くなっていることが自分でもわかって、これから起こることを想像しながらこっそり口角をあげた。





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