トモダチ思い
「なー」
「んー?」
「頼みがあるんだけど」
「ほぉー」
放課後の教室、紙パックの緑茶のストローを加える。ジジ臭いだと?今緑茶ブームだぞ。
向かいに座るカズヤはピクニックのストロベリー。いつも飲んでるけど、最後の方は「吐きそう、やばい」とか言って俺に回ってくる。
買わなければいいのに、というと殴られる。
意味がわからん。
「前さー、コンビニで会ったお前の友達いるじゃん」
「は、だれ」
「前会っただろ、5丁目のとこのサンクスで…白ジャージくんの横にいた」
「……ああ!トモくんね!……って、あれだいぶ前じゃん」
トモくんとはやたらかっこいい、俺の友達…の友達。まあ一応ダチだ。
そういえば昔たまたまコンビニで鉢合わせた時1時間くらい外でたむろったっけな。
あれ、でもそれって2年前くらいじゃね?
「あれ、やっぱ違う人?」
「いや、多分その人」
「あ、そう。で?」
「やー……その、もうすぐバレンタインだろ?」
バレンタインだと。嫌な話を持ってきやがる。
男子校でバレンタインなんぞ関係ない。貰えてチロル2つだ。
カズヤは毎年なんか作ってるけど。こいつの家洋菓子屋だからか。
「なに、チョコでも渡すの?」
「わかってんじゃん」
「……ぶっッ……!」
「うわっ!オイコラきたねーぞ!!」
なになに、まじで?冗談のつもりだったんだけど。
思わず緑茶を吹き出して、危うくカズヤにかかるとこだった危ねぇ。
かかってたら一ヶ月シカトじゃ済まされん。
「お前トモくんと面識あったんだ」
「だからそのコンビニんときな」
「……それだけ?」
「そーだけど」
「だから、連絡取ってほしいっつってんの」と不機嫌そうに言われる。あれ、俺頼まれてんだよな?なんで俺が怒られたみたいになってんだ。
「まあ……別にいいけども」
「まじ、サンキュ」
ただ、もう半年は確実に連絡取ってねえからメアド変わってないか不安だけど。
まあでも、久しぶりにカズヤに感謝されてるしどうにかしてやろう。
「今年のバレンタインなに作んの?」
「ケーキ。だが今年は面倒だからお前らにはない」
「は………まじで!!?ケチかお前!」
「うるせーなパティスリー嘗めんな!材料費掛かってんだこっちは!!」
これを聞いたらクラスの奴らはガッカリするに違いない。
本命だけだなんて、冷てーの。
[ 1/4 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]