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「じゃ、俺先に帰るね〜!ばいばあいっ」
お金は今度払うから、誰かに立て替えておいてもらお。
そう思って部屋を出た。
すると、後ろから聞き慣れた声。
「おい、なに一人で行ってんだ!」
「え、安ちゃん………」
「そんなフラフラじゃ家まで辿りつかねーでしょ!」
「合コンはぁ…?」と聞くと、「病人を一人で帰せないでしょ」と言われる。
安ちゃん好みの子もいたのに、そんなにしてもらうと申し訳ないよう。
言うと多分怒られるから言わなかったけど、本当に一人で帰れるのになあ。
「聡!お前その顔、一人で帰れるのにとか思ってるだろ!端からみたら危なっかしくてとても無理だっつのっ」
「え、え、安ちゃんすごいねぇ……テレパシー?」
「バーカ、何年お前と友達やってると思ってんの?まあ2年目だけどっ」
安ちゃんの自転車の後ろに乗せられて、「しっかりつかまれよ病人」と言われたのでがっちりと腰に手を回した。
思えば、とーや以外と2ケツするのは初めてだ。
よっこらせ、といいながらペダルを踏む安ちゃんに、おじさん臭いと言うと怒られちゃった。
「あそこ寒かったしなー!あっ、でもお前一昨日あんな雨ん中ずぶ濡れでしゃがんでるからだろ!」
「…んー………」
「こら、人の話を聞く!」
俺の家まで送ってくれるらしい、裏道の見慣れた景色を眺めながら頭を安ちゃんの背中に預けた。
なんだか眠たいんだあ…
「安ちゃん………」
「ん?」
「今日はありがとぉ、俺のベストフレンズだよぉ…愛してるっ」
なんだかあんまり頭が動かなくて馬鹿なことをいっちゃったような気がしたけれど、わかんないや。
そう思っていると、安ちゃんの動きがピシリと止まった。
「聡お前……イタいよ!んでクサイ!」
急に大きくなった安ちゃんの声に耳がキーンとした。
「でもなにより自分がキモい!」
「なになにぃ、安ちゃんどーしたの…」
「お前のせいだよ!」
的を得ない安ちゃんの答えに、俺の頭はクエスチョンだらけだ。
「いいから、寝ときな!まあもう着くけど」
なんだか急にぶっきらぼうになってしまった安ちゃん。
顔が見えないから表情が分からない。
安ちゃんには迷惑かけてばっかりだ。本当に、今度お昼ご飯奢らないと割に合わないよね!
ありがとう。
俺は段々と朦朧としてくる頭を安ちゃんに預けたまま、浅い眠りに着くことにした。
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