20



ガチャリ、と重い扉を開くと暑いくらいの陽射しが差し込んできて、無意識に目を細める。

扉をくぐると、剛の指が俺の腕から離れた。


「痛かった?ごめんな」

「やっ…全然だいじょおぶっ!!」


俺がそう言うと、剛はフッと笑った。



「………!」

まだ、笑ってくれた。
さっきの剛の態度から、もう笑ってくれないような気がして…



その後暫しの沈黙があり、自分から話すのも躊躇われて、どうしようかと不安に駆られたとき、剛の口が開いた。


「一つ、聞いていいか?」

「う、ん………」


剛は俺からすこし離れた前の方に立っていて、俺から剛の表情は見えない。
それでも微かに剛の躊躇いが伝わってきた気がした。



「会長とは……どういう関係?」

「………そのっ…」


どう答えるか迷ってしまう。
もうばれてるんだ、とは分かっている。嘘も吐きたくない。それでも、やっぱり………


(……………怖い)


剛に果たしてどう思われるのか。
この学校では同性愛に寛容だが、みんながそうとは限らない。まして、相手はこの学校の生徒会長さま。訝しがられてもおかしくはない。



「……会長、とは…」


声が震えている。情けない、剛にもバレているだろうか。


「……付き合ってた、んだあ」

「……そっ、か」

「っでも、本当に短い期間で…!その………」



聞いて、剛。
言い訳じゃねえ。本当にきっぱり縁切ったつもりだった。楽しんで隠してた訳でもない。

男と…って、気持ち悪い?
もしそう言われてしまったなら、もう俺は返す言葉がない。


「俺っ、隠してて本当…ごめ…」


ギュッと自分の制服の裾を握りしめて、震える口を開く。
そのとき、俺の頭に慣れた感触がして。


「なんで、怜が泣きそうなんだよ」

ポンポン、と二回頭を叩かれて、それは剛が俺を宥める合図。

「俺もごめん」

「っ剛は悪くないよ!俺が……」

「もういいって、俺も頭冷やしたからさ…」


剛が頭を冷やす必要なんて全く無いのに。
それでも、俺は剛がもう一度俺に優しさを見せてくれて、安堵していた。

ちょっとそっけなくされただけだ。
あれから2時間も経っていないのに俺は馬鹿みたいに心配で、後悔していた。
俺の中で剛の存在は、多分かけがえのない親友。





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