6

※剛視点



「俺、副会長さまとは気が合わなそうなんですけど」

「そうですか?僕的には仲良くなれると思ったんですが…」

「………まあ、会長よりは副会長サマの方がいいです」


俺と仲良くなんて、この人は多分俺で遊んでいるのだろう。

再び自分の定食に箸をつけはじめたこの人を見て思う。
だがしかし、正直に心の内を話してもらえるだけありがたいのだ。

分からないより、ずっといいだろ。



「君は、神谷がお嫌いなんですか?」

特に驚いた様子もなく、副会長は俺に尋ねた。



「嫌いじゃないですけど」

「怜くんのことでしょう?」


副会長にそういわれ、次の言葉を失った。


「…この前のアレ、明らかおかしいでしょ」

「その前から、神谷は怜くんのことを知っているような口ぶりでしたよ」

「…そっすか」



この前、というのは俺と怜が初めて生徒会室に行ったとき。
舐めるような会長の視線に、怯えた怜の仕草。気づかないはずがない。

ドスの聞いたあの声で『出ていけ』と言われ、怜を残して部屋を出されたあの時。
怜の縋るような視線に胸が痛かった。


「怜があのあともなんともないような顔するから、なにも聞かなかったんですけど…」

「優しいですね、鳴海くんは」

「…無理して聞きたくないだけです」


隠すということは、知られたくないということ。
俺が怜に怜への独占欲を隠すように、怜もなにか隠したいものがあるのだろう。

きっとそれは、量も重さも俺よりも大きいのだろうが。



「まあ、怜は会長のこと嫌いみたいなんで、安心です」

「…なんだか、君もイメージと違いますよ。」


副会長にそう言われ、そうだろうなと思った。
学校にいるときは疎か、寮も昨日まで同じ部屋。
ずっと、『怜の前の俺』だったんだから。



「怜といると、なんだか嫌な気持ちがなくなってく気がするんすよ」


ぽつり、と呟いてから俺はなんで副会長にこんな話をしているのか。
なんだか恥ずかしくなったが、副会長は俺にさほど興味がないらしく、へぇと当たり障りのない相槌を打たれた。



俺の深いところはなにも聞いてこないし、自分も踏み込ませない。
その距離が心地好い様で物足りない、そんな気持ちは初めてだった。


「アイツの鈍さには驚きますけどねー…」

「怜くんのそこが可愛いんじゃないですか?」

「まあそーなんすけど」



「つかさっきからなんで怜のこと名前で呼んでんすか」と言うとふふふと笑われ、流された。
笑い事じゃねぇんだけど。



「とにかく、俺が会長から怜を護りますから」

「神谷は有無を言わせない男ですよ?分かってるでしょうが…」

「そんなの関係ない。怜だけは譲らない」


怜が俺に縋って、擦り寄ってくれるあいだは俺は怜を離さない、絶対に。

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