闇、病み、止み 第一章
















「…伊達政宗?」


「あぁ…今は事情があって、別教室で過ごしておる。」


「…そうなんスか。」


「伊達も、お前と同じく右目にだが眼帯をしておる。だが…あやつは不運過ぎたのじゃ…」


「不運?」


「いや、何でもない。とにかく、我がクラスは伊達とお前を入れて30人じゃ。なかなかキリがよいのぅ。ハッハッハ!」


そう職員室で話していた担任である信玄先生の言葉が気にかかっていた――…

確かに…教室には机が2個並んで空いている…一つが俺、もう一つは…その伊達って奴のか。


「元親、お前の席はあの窓側の空いている席じゃ。」

「あ、はーい。」


新しい席についてひとまず落ち着く。


…伊達政宗、か。


不運…

事情…


「会ってみてぇな…俺と同じ眼帯だしよ…」


徐々に晴れて来た空に、静かに呟いた。


…昼休みにでも会いに行くか。











キーンコーン…


昼食を告げる鐘。皆思い思いの場で昼食をとる。一番活気付いた時間。


元親は菓子パン片手に、先生から聞いた政宗がいる教室に向かった。


(どんな奴なんだろうな…)


その空き教室は、校舎の隅にあった。生徒の声も、遠く聞こえる。ここだけが隔絶されたような錯覚に陥る。


コンコン…


軽くノックしたが、返事はない。


「あァ?いねぇのか?」


手をかけて、ゆっくり戸を開く。鍵は掛かっていないようだ。
薄暗く、どこか冷たい空気に一瞬入るのを躊躇した。けれど、会いたかった。何故クラスに居ないのか理由が知りたかった。


「伊達…」


そっと名前を呼ぶ。
ガタン!と、音がした。


「…っ誰…だ…?」



ひょこ、と人影が現れた。けれど、その顔には明らかな恐怖が現れていた。


「あ、俺…長曾我部元親っていうんだ。お前のクラスに今日転入した。宜しくな。」


そう言って軽い気持ちで手を差し出す。
その手を、政宗は思い切り払い除けた。


「っ、来るな!お前も同じなんだろ…!お前も、俺を…!」

ものすごい剣幕でまくし立てる様に話す政宗に、元親は一瞬呆気にとられた。けれど…何故か嫌な気はしなかった。







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