愛おしさで、meltdown
「好きだ」
そう囁く先輩の表情には嘘なんて一つも無かった。質素な部屋に響く掠れた声ははじめにあの会見で聞いたのと同じ低くてセクシーな声。あの時は先輩とこんな瞬間が来るなんて思いもしなかった。沢山の感情をぶつけ合って、色んな事を乗り越えて。それが私達の想いを少しずつ近づけていった。
「…おい、考え事なんてしてる余裕あんのかよ」
強い口調だけど、優しい声音。私に覆い被さる様にして距離を縮めてキスをする。
「…っ…せんぱ、」
「名前、呼べっつったろーが」
「…あ、あの…っ」
「…悪ィけど、俺はあんま余裕ねえんだ」
ドサ、と黒いソファの上で視界が反転する。天井を背景に先輩ーー蘭丸さんの真剣な顔が見える。
そしてもう一度重ねられる唇。不意を打たれて薄く開いた隙間から彼の舌が入ってきた。直に感じた体温は熱くて思わず引っ込めた舌を蘭丸さんのそれがさらっていく。
「…ん、っふ…ぅ」
重ねられた手から伝わる体温が絡んだ指から更に伝わってくる。熱情をそのままぶつける様な大人の口付けはきゅう、と私の奥の方に甘く小さな火を灯した。
「…ん、…いい顔になったじゃねぇか。……もっと欲しいか…?」
「………は、い」
「…いい子だ」
本当に本当に、一つ一つの言葉に、表情に、とろりと溶けてしまいそうになる。こんなに優しい顔で、優しい声で愛してくれる蘭丸さんを知っているのは私だけなんだと思うと愛おしさでおかしくなりそうだ。
(愛おしさで、meltdown)
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