第九輪

貴方だけが好きなんです

××

テレスside

俺とアイツとの出会いはあいつ等の中じゃ1番変だと思う

アツヤは幼少の頃から既に友達だったらしいし、フィディオはアイツが引越してきたのが家の近くだったし、マークは同じサッカークラブに所属していたし、一之瀬やエドガーとは敵同士でのサッカー試合で出会った

じゃぁ俺はどうやって出会ったのかというと、まさかのアイツが迷子になっていた所を助けたからだ

正直俺もどんな出会いをしているんだと思ったが、出合っちまったもんはしょうがねぇ

その後、俺達は偶然にも一緒のチームになってイタリアのサッカーリーグで優勝した


………それが、一番の不幸だったのかもしれねぇ

優勝した所までは良かったんだがな、問題はその後に合ったんだ

あんな事がなきゃ、今でも一緒にサッカーをやれたのかも、なんてな

いつまでも過去の事でくよくよしていても仕方ないって事は俺自身が一番わかっている

だから今は、今度こそアイツのあの必殺技に勝てるよう、アイアンウォールの完成度を高めていくだけだ

だから、もしお前がこっちに戻ってきたときは、また勝負しようぜ?

××

懐かしい夢を見た気がする……

今日はめずらしく実験が無い日で、普通にサッカーの練習だった

……わかっていたけど、やっぱりマックスと半ちゃん以外は皆私を嫌っていた

わかってた筈なのに、やっぱりちょっと、悲しいな

皆は私のことを嫌っているから、わざと遠くへパスしたり、わざと私に必殺技を当てたり、その度に失敗したりすると冷たい目で見下して、ひそひそと私の陰口を言う

そして練習が終わってもわざと私のタオルを隠したり、片付けを私1人にやらせたり(マックスや半ちゃんがこっそり手伝ってくれたけど)


片付けとかも漸く終わって、はるなんの待つ部屋へと戻る

…今日は実験がなかったから、めぼしい食べ物盗ってこれなかった

配給される食べ物じゃ全然たりない(一日にパンが二個しか配給されない)

はるなんには色々と誤魔化して、盗ってきた物食べさせてるけど、練習しかない日だと、何にも盗ってこれない

どうしよう、危険を冒してでも研究棟に行くか?でもバレたら私だけじゃなく、はるなんまでにも被害がいくかもしれない…

やっぱり、今日はなんとか誤魔化して、はるなんに我慢してもらうしかないかな


溜息1つ吐いて、再び廊下を歩く

再び歩こうとして、手を掴まれた


「…え?」


「お前、お前が風丸亜紀か?」


後ろを振り返ると、白い髪の男の子が私の手を掴んでいた

(あ、また何かが剥がれ落ちた)

××

白い髪の男の子はガゼルって名前らしい(何かが違う気がするけど)

ガゼルに引きずられていく形で連れて行かれた先は実験棟の中にある食料保存庫だった

…さすがはマスターランクと言う所か、私を連れて普通にこんな所に入って行っても誰一人何も言わないだなんて


「ほら、食べ物がほしかったのだろう?」


そう言って私に様々な食べ物を渡してくる

パンにハムに魚に卵にご飯に野菜

様々な種類の食べ物があっという間に私の腕の中で積み重なっていく


「…ふむ、これだけあれば充分か?いや…アイスを渡すのを忘れていたな」


そう言ってアイスを追加された

……何がしたいんだ?


「……なんで俺にこんな事をするんだ?」


「なぜ?なぜと言われてもな……グランの悔しがる顔を見たいからだ」


…………意味がわからん

この行動とグランに何が関係あるんだ

でも、これでなんとか数日ははるなんに食べさせるのに苦労しないな

いつもは危険と隣り合わせだったし


「ありがとな、ガゼル」


「………風介だ」


「え?」


私のすぐ近くまで顔を近づけて断言する

ふう、すけ?


「私が人間の時の名だ」


「ふう、すけ…………じゃぁ、ふうちゃんだな!!」


ふうちゃん、ふうちゃん……うん、なんかこっちのがしっくりくるかも


「ありがとな、ふうちゃん!!あ、なんか礼してやるからさ…何かやって欲しい事あるか?」


流石に死ねとかは無理だけど、簡単な事ぐらいだったら礼ができる

こんなに助けてもらったのだ、何かしないと


ふうちゃんは私の言葉を聞いて、少しだけ考える仕種をすると


「…じゃぁ、私と一緒にサッカーしてくれるか?」


そう言って微笑んだ


そうして、私の中で何かがまた崩壊していく




彼岸花

(思うはあなた1人)

(何年も前からあなただけが)

(私のことを×××と呼んでくれたんです)

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