Fortunate Kiss[7/7]

ずっとずっと、友だちのふりをしながら片想いしてた相手。

こうして一緒にいられるのは奇跡なんだ。つまらない意地なんて張ってたら、もったいない。


「あれさ。雄理の好きにしたらいいよ」


あとほんの少しでゼロになる距離でそう口にすれば、雄理は顔を傾けて目をぱちぱちと瞬かせる。その仕草が子どもみたいで、思わず笑ってしまう。


「俺のこと、言いたかったら言えばいいってこと。俺もあえて言いふらすつもりはないけど、隠すのはもうやめるから。お前が大丈夫なんだったら、いいよ」


「大丈夫に決まってるだろう」


そう言って一層強く抱きしめられて、胸の中のわだかまりが吐息と一緒に身体から出ていく。

何も悪いことなんてしてない。好きな人と、一緒にいるだけ。たとえそれで後ろ指を差されても、別にどうってことない。

俺がそう思ってるように、雄理もそう思っててくれてるんだろう。


「次は一緒に帰省して、お前と俺の実家、順番に回ろう」


突然のそんな提案に、照れくさくて吹き出してしまう。


「なんかそれ、結婚の挨拶みたいなんだけど」


「同じようなもんだ。家族には隠してたっていずれわかる。ちゃんと周りに理解してもらって、お前が後ろめたさなんて感じないようにしたいんだ」


ああ、お前は気づいてたんだな。

言葉にしなくたって、俺の抱えてる不安なんて雄理には全部お見通しだった。ツンと鼻が痛くなってきたから、つい視線を落としてしまう。


「そんな顔をするな。お前のこと、ちゃんと幸せにしたいんだ」


「バカ。もうじゅうぶん幸せだよ」


今にも泣きそうなのをごまかすために、背伸びして唇を重ねた。

柔らかな感触を味わうように唇を何度も啄ばまれるうちに、そのキスがだんだん濃厚なものに変わっていく。挿し込まれた舌がゆるりと歯列をなぞり、舌を絡み取る。簡単に熱を帯びていく身体を押し付けるように抱きつきながら、やっとのことで唇を離してちゃんと想いを伝える。


「雄理、大好き」


言葉ごと呑み込むようにまた唇を奪われて、シャツの裾から入ってきた掌が肌を弄っていく。背中を直に撫でられるだけですっかり昂ぶって、俺のそこはもうしっかり反応してしまっている。

外から帰ってきたところだからシャワーぐらい浴びたいんだけど、我慢できそうにない。

縺れ込むようにベッドまで移動しながら、ああ何だかめちゃくちゃ幸せだなあなんて、実感してしまっていた。


雄理と一緒なら、こんな俺でも強くなれそうな気がするんだ。




別にキスの写真ぐらいならいいか、なんて蕩けそうな頭でぼんやり思いながら、俺は大切な人と互いの熱を確かめ合うように身体を重ねていく。






"Fortunate Kiss" end




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