意識が縺れたまま積み重ねられる波に飲まれて、僕は1番深いところへと沈み込んでいく。
「 ─── あっ、イク、ああ……ッ」
中から生まれる強い収縮に翻弄されて何度も身体が痙攣すれば、奥で熱が放たれるのを感じた。
ずるずると長引く余韻に、抱き合いながら呼吸を整えて顔を上げる。
淡い色の瞳に映し出された僕は、亡霊のように虚ろな顔をしていた。
シャワーを浴び直してベッドに戻った僕たちは、横たわって緩く抱き合う。
「───アスカ」
顔を上げれば、僕はユウにじっと見つめられていた。
「どうしたの?」
いつになく神妙な面持ちにそう問い掛ければ、形のよい唇がそっと動く。
「契約を交わした。明日からだ」
「……わかった。初仕事だね」
少し笑うと、ユウは何も言わずに僕の頭を優しく撫でてくれた。
誰かと4日間を過ごすこと。それが、ユウから僕に与えられる仕事だ。
僕たちはこの日を待っていた。僕が成人して自分で責任が取れる年齢になる日を。
この半年間何度も自問したのは、ユウと初めて身体を繋いだときに口にした言葉。
─── 誰かを救える人間になれば、僕は赦されるだろうか。
食い入るように僕を見つめるクリスタルガラスのような瞳は、何かを訴えるように微かに揺らめいている。
「大丈夫だよ、ユウ。心配いらない」
そう言って、そっと顔を近づけて口づける。
触れるだけのキスは、いつものように安らかな眠りを誘う。
「今日はゆっくり休めばいい」
ユウの言葉に僕は静かに頷く。
重いカーテンの隙間を縫って射し込む薄明かりの中、そっと瞼を閉じる。
黎明はすぐそこに来ていた。
"Dawing Kiss side A" end
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