Amber Kiss side A[2/2]

「ユウ……」

もう一口。ユウはまたグラスを呷って、僕に口づける。

慣れてきたこの味が、今度はひどく心地よくて。

僕の全てを奪うようなキスに何もかもを委ねて、舌を絡めながら味わい尽くしていく。

「……ん、ふっ」

急にユウの身体が後ろへと倒れて、僕は引き摺られるようにユウに覆い被さる。

背中に回ったユウの腕が僕の背中を撫で上げて、身体が熱を持っていく。

至近距離で見つめ合えば、鳶色の瞳が滲んだように揺れていた。

顔には出ていないけど、相当飲んでいることは想像がついた。

僕の身体はもうすっかり反応してしまっていたけれど、酔ったユウとセックスをするのはあまり好きじゃなかった。

加減ができなくなる、とユウは言っていた。

それぐらいなら僕は全然平気だ。だけど、そんな状態で身体を重ねることが、僕たちの微妙なバランスを崩してしまう気がして怖かった。

「ユウ、待って……」

少し身体を下にずらして、胸の辺りに耳をあててみる。大きくて速い鼓動がダイレクトに伝わってきて、僕はひどく安心する。

毎月同じ日にユウが仕事を休んで1人でどこへ行っているのか、どうしていつも酔って帰ってくるのか、臆病な僕は訊くことができない。

答え合わせをするのが怖いんだ。

だって今日は、サキの───。

「アスカ」

低い声が緩やかに僕の名を奏でる。



───飛鳥、愛してる。



甘く響く声が、遠くで聴こえた。

もう二度と聴くことができない懐かしい声に、僕は息を殺しながら涙を零す。

火照る身体を持て余しながら、ユウに身体を預けて目を閉じる。

あんなに僅かなアルコールで、僕はもう眠気に襲われていた。

お酒も悪くないな、と思った。

「ユウ、大好きだよ……」

幼子にするように頭をそっと撫でられる。

その掌の心地よさに僕は全てを委ねて、死に近い眠りの世界に堕ちていった。




"Amber Kiss side A" end



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