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これで、俺が鷹村那津という宇宙人と出会って別れた話はおしまいだ。
那津がいなくなってしばらくは、食事も碌に喉を通らなかったし、当然勉強もまるで手につかなかった。 聖也からは那津に関する記憶が消えていたけど、不思議なことに俺のことを好きだという感情はそのまま残っていたみたいだ。 だから、当時は随分心配されたんだ。もちろん本当のことをそのまま言うわけにはいかなかったから、失恋したんだって説明すると渋々納得してたんだけど。 聖也は随分俺のことを慰めてくれたし、本当に優しくしてくれた。そして、事あるごとに好きだと何度も告白をされた。 学校一のスーパーヒーローがそれだけしてくれるんだから、そのまま聖也と付き合えたらよかったのかもしれないけど、生憎俺はそんなに器用にはなれなかった。 だって聖也と一緒にいると、どうしても那津のことを想い出して胸が痛くなってしまうんだ。 だから、聖也とはそういう関係になりたくなかったし、彼の想いに応えることはできなかった。 それにも構わず、聖也は俺が迷った時や困った時には、いつもさり気なく手を差し伸べてくれた。
あれから十年経った今も、彼とは時々連絡を取り合っているし、一緒に呑みに行ったりもしている。 去年は聖也の結婚式にも参列して、強引にスピーチまでさせられたんだ。 もともと聖也とはまともに話したこともなかったのに、那津のお陰で俺にはいい友達ができたんだと思っている。
那津との別れ際に、恋をする約束をしたと言ったね。 正直なことを言えば俺は、那津がいなくなってから何人かと付き合ったし、セックスもした。 でもあの時那津に対して感じたような、胸が破裂しそうなぐらいに痛くて、それなのに融けそうなほどに甘い、そんな気持ちを誰にも抱くことができなかった。 那津がいないダメージはあまりにも大きくて、俺の人生からは恋が欠落したままだったんだ。
那津は今頃どうしているんだろうって、時々考えることがある。 星に帰ってからすぐに俺とのことは忘れてしまって、同じ種族に恋をしているのかもしれない。 しっかり繁殖して、たくさんの子どもに囲まれて。那津が那津の世界で幸せに暮らしていれば、俺はそれでいい。 だけど、時々は俺のことを懐かしんでくれていたらいいなと願っているんだ。
色っぽくて魅力的な委員長の本当の姿は、キラキラした水の球体だった。 どちらの那津も、本当にきれいだった。 今でも時々、あれが夢だったんじゃないかと思うことがある。 俺だけが見ることのできた、煌めく魔法のような不思議で素敵な夢だ。
いい大人になって大真面目にこんな途方もない話をする俺をバカだと君は笑うだろうか。 俺が君に初めて会った時に驚いていたのは、つまりそういうことだったんだ。 君にとって俺との出会いは、何てことのないものだったんだろう。 だけど、俺にとって君との出会いは、まさに奇跡だった。
だからいつか、君に話す日が来ればいいと願っていた。
俺が鷹村那津に恋をするのは、これが二度目だということを。
君 に 捧 ぐ 恋 モ ノ ガ タ リ
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