ねえ、遥人さん。
俺と遥人さんが初めて出逢ったのは、月の架かる橋の上だった。
本当のことを言えば、俺ね。
あの時、このままここから落ちちゃってもいいかな、なんて思ってたんだ。
死にたくなったとか、そんなんじゃない。
ただ、何かを変えたくて仕方なかった。
中途半端なところを漂ってる自分を、リセットしたかった。
だから、あの時あそこに飛び込むのなんて、セックスと同じぐらい簡単なことのような気がしてたんだ。
そうやってふらふらしてる俺をしっかりと抱きとめてくれたのは遥人さんだった。
遥人さんが、俺を救けてくれたんだ。
今の俺があるのは、遥人さんのお陰なんだよ。
だから、何が何でも離れたくないと思った。
俺が遥人さんに縋って関係を繋ごうとしたように、遥人さんも俺を少しぐらい必要としてくれてる。
俺はそう、信じたかった。
"熱の入江 Sinus Aestuum" end
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