ああ、そうだな。お前だって生半可な気持ちでここにいるわけじゃないんだ。
存在しないかのように振る舞うことは無理そうだし、見られているのが刺激になるほど変わった性癖じゃないけれど、ミチルの覚悟はちゃんと受け入れてやらないと駄目だと思った。
焦らすように身体を伝っていくハルカの緩やかな愛撫は心地よくて、意識がぼんやりしてくる。目を閉じて穏やかな快感に身を委ねているうちに、恐ろしいことにだんだんとミチルのことが気にならなくなってきた。
自然と反応してきたものを根元から握り締められて小さく息を吐く。温かな息がそこに吹きかけられたかと思うと、先端がぬるりと熱い粘膜に覆われていった。 股間から控えめな水音が聴こえてくる。ゆっくりと舌が這う感覚に、俺のそこはみるみる硬度を増していく。愛おしむような手つきで扱きながら咥え込まれて、下半身から余計な力が抜けていく感覚がした。
ハルカの口淫は丁寧で、最高に気持ちいい。 今どんな顔をしているのかが見たくなって、閉じていた目を開けてみる。規則的に上下する小さな頭に手を伸ばし、さらりとした髪に指をうずめていけば、ハルカは上目遣いでこちらを見つめてきた。 健気に向けてくる潤んだ瞳が堪らない。
「……っ、ん……ッ」
時折気持ちよさそうな声を漏らしながら、恍惚とした顔で愛撫を施すその姿はひどく扇情的だった。
妖艶なハルカの姿態に煽られて、俺は一気に高みへと導かれていく。奥まで咥え込まれ、舌を絡めながら絶妙な強さで吸いつかれてはギリギリのところまで引きぬかれる。それを繰り返されるうちに、愛おしさとはまた別の感情が胸のうちに生まれてくる。
お前にこんなことを最初に教えたのは、一体どんな奴なんだろう。
誰かに抱かれているハルカを想像するだけで、なんとも言えないモヤモヤした気持ちになる。不毛な嫉妬に駆られながらも、昂ぶる先端に舌を差し込まれてクチクチと弄られたまま根元を強く擦られれば、限界はすぐそこまで迫っていた。
「 ─── ん、ハル、カ……」
息を詰めて名を呼ぶと、ハルカは心得たように軽く咥え込んで強めに扱いてくる。 追い立てられてゾクゾクと背筋を駆け上がる快感に身を任せ、俺は抗うことなくその口の中に欲を解放した。
断続的に精が放たれる度に、気持ちよさが身体を駆け巡っていく。どうにか快楽の波をやり過ごそうと、俺は何度も大きく息を吐いた。ドクドクと身体中が心臓になったみたいに鼓動が激しい。
ハルカは俺の放ったものを余すことなく口の中で受け止めて、引き抜きざまにかわいらしい音を立てながら先端に吸いついてきた。惜しむように俺の半身から濡れた唇を離し、起き上がってこくりと喉を鳴らしながらそれを躊躇いもなく飲み下した。
「あ……」
ミチルは目をまんまるに見開いてぽかんと口を開ける。
「飲んだの?」
いちいち何てことを訊くんだ。ストレートな問い掛けに呆然とする俺の前で、ハルカは濡れた唇を親指で拭い、うっとりするほど色っぽい微笑みをミチルに向けた。
「だって、出せないでしょ」
ハルカの言葉に、ミチルは勢いに任せて頷いている。 いや、納得するなよ。別に出せばいいから。 ベッドに背を預けて快楽の余韻に浸りながら、俺はぼんやりとした頭を働かせる。 これはあとで俺からミチルにフォローを入れておこう。いや、こんなことをいちいち説明するのもおかしいか。
ああでもないこうでもないと思案しているうちに、なんだか妙におかしくなってきて、つい口元が緩んでしまう。ハルカは眉をほんの少し上げて、そんな俺の顔を覗き込んできた。
「タクマさん、気持ちよかった?」
頬に触れた掌がしっとりと吸いついてくる。今、この子と肌を重ねているのは他の誰でもなく俺なんだ。 きれいな双眸には俺の姿がはっきりと映っていた。ハルカの過去に何があって、この先俺たちがどうなろうと、今は関係ない。こうしてハルカが俺だけを見てくれていることが、ただ純粋に嬉しかった。
「ああ、ありがとう」
ゆっくりと覆い被さってきたハルカの前髪がさらりと額を擽る。濡れた桜色の唇は柔らくて、味わうように何度も啄ばみながら細い腰に腕を回していった。
「好きだ」
キスの合間にそう囁けば、ハルカは幸せそうに微笑む。
「僕も好きだよ、タクマさん」
その言葉が偽りではないことを俺は知っている。こうして肌を重ねている今は、それだけで十分だと思った。
「気持ちよかったからさ。ハルカにも同じことしていい?」
そう言って朱に染まったハルカの中心に手を伸ばしてみる。先端にはじわりと蜜が滲んでいて、そこを指先で触れて離せばキラキラと透明な糸が滴った。それだけでひくりと腰が揺れるぐらい感じているのがまたかわいかった。
「ここ、ハルカが俺にしてくれたみたいにしてあげようか」
自分で言っておきながら不思議だった。されるものであってするものだなんて思ったこともなかったからだ。 ハルカの全部を愛したい。そんな想いで口にした言葉に、ハルカは少し視線を落としてかぶりを振った。
「……ううん、僕はいいんだ」
翳りを含んだ表情にほんの少し違和感を覚えながら、俺は汗ばんだ額にそっと唇を押しあてた。
「そっか、わかったよ」
だけど次が俺のターンであることに変わりはない。起き上がって華奢な身体を組み敷いた俺はゆっくりとハルカに覆い被さる。鼻先の距離で交じり合う視線は危うい熱を孕んでいた。
「ハルカ。舌、出して」
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