素直な反応が愛おしい。後ろからしっかりと背中を包み込んで小刻みに揺さぶるような抽送を始めれば、そんな小さな刺激さえきちんと拾い上げて、ハルカの呼吸はどんどん苦しそうなものへと変わっていく。
「 ──── っ、ん………」
途切れ途切れに微かな声を漏らしながら、ハルカがこちらを振り返る。その悩ましげな表情を見ただけで、もっと強い刺激を求めていることを察してしまう。
ほんの少し意地悪をしてみたくなって、ハルカの感じる部分を優しく擦り上げるように抜き挿しを繰り返すと、小さな悲鳴が聴こえた。
「あっ、あ、もっと………」
零れ落ちた本音に鼓動が速くなる。欲しがるだけ与えてやりたい。ねだる声は悲痛なほどに震えていて、つい絆されてしまいそうになる。
「駄目だよ、ハルカ。今日はこのペースで」
ギリギリのラインで必死に自制心を保ちながら腰の動きを止めて耳元に唇を寄せる。
そうやって本能のままに求められることにひどく安堵する。もどかしい動きにきれいな顔を泣きそうに歪めながら、ハルカは小さな声で囁いた。
「どうしよう……すごく、感じる……」
訴えかけてくる眼差しは、あまりにも官能的だった。どうしてこんなにかわいいんだろう。熱に染まる頬にキスを落として、虚ろに濡れた瞳を覗き込む。
「ハルカはこういうの、苦手？ 俺は好きだよ」
そう口にした途端、俺を見る瞳にゆらりと焔のような光が灯る。
それが示す意味に気づいた俺は、なぜだかゾクゾクとした悦びを覚えていた。
ハルカは俺の過去に嫉妬しているんだ。
こんなセックスが好きだと言ったことで、俺が誰かと同じようなことをしたと想像したんだろう。
「昔を思い出してたわけじゃない。今、俺がハルカのことしか考えてないのはわかってるはずだ。ハルカとこうやってするのも好きだって言ってるんだよ」
優しく言い聞かせると、眼差しは惑うように揺らめく。
「………本当？」
返事の代わりに唇を啄めば、ハルカは安心したように小さく息を吐いて表情を緩ませた。
かわいいヤキモチときれいな微笑みに、熱い粘膜に包まれた半身がドクリと震えて一段と大きくなった気がした。
渇いた身体に水を浴びせるような、性急に求め合うセックスはけっして嫌いじゃない。けれど今は、互いの求めるものを少しずつ満たしていく緩やかな交わりが心地いい。焦れるような穏やかな快楽が癒しをもたらすものだということを、俺は初めて感じていた。
いつもは眠っている感覚を呼び覚ますように、俺はゆっくりとハルカの中に半身を沈めては引き抜いていく。ただ静かにその行為を繰り返すうちに、互いの感覚が研ぎ澄まされていくように思えた。
熱く熟れていく身体をしっかりと抱き直して、甘い匂いを味わうように首筋を何度も啄ばみながら腰を動かし続けると、やがてハルカの唇からは抑え切れない気持ちよさそうな声がひっきりなしに零れ落ちてくる。
狭い空間を満たすその声はたまらなく官能的で、いつの間にか俺は自制心を手放してしまっていた。
「あぁ、あ、タクマさ、も……っ、あ……」
上擦った声が次第に大きくなっていく。喘ぎ混じりに俺の名を呼びながら腕の中で身体を震わせるハルカは、この焦れったい刺激に抗えず快楽の底に近づいているようだった。そんな悩ましげな姿を見ているうちに、なぜだか無性に虐めてみたくなってしまう。
「ハルカ、もう少し静かに。気持ちいいところはちゃんと外してるよ」
意地悪くそう言えば、今にも泣き出しそうなぐらいに瞳を揺らしながらハルカは小さくかぶりを振った。俺は一旦腰を動かすのをやめて、薄い胸を撫で回す。指先が触れた小さな頂きをそっと摘んでみた。
「─── ああ……ッ」
いじらしく膨らんだ突起を指の腹で軽く転がせば、華奢な肢体はいっそう大きく震えて中の締めつけが強くなった。
「ん……、あ、ぁ……ッ」
俺の形を覚え込むかのようにきつく纏わりつく内壁の熱さに、今すぐにでも吐精したい欲望が身体の奥からずるずると引き出されていく。
ああ、俺も限界が近い。
「ハルカ……そろそろ、いい？」
声を押し殺しながらそう訊けば、ハルカは必死にかぶりを振ってじりじりと腰を引いていく。小さな喘ぎ声と共にぬるりと半身が抜けていく感覚がして、根元がぬるい空気に触れた。
「ん、ダメ……声、出る……」
頬を蒸気させながら俺を振り返って必死に訴えてくる、その顔が何ともかわいい。
ぴたりと動きを止めれば、途切れた抽送にハルカは深く溜息をついた。言葉とは裏腹に、俺を包み込むそこは奥へと誘うように絶え間なく蠢いている。
身体はこんなに素直なのに。覆い被さって柔らかな唇を軽く食んでから、宥めるように艶やかな髪を梳く。
「やめてもいい？」
そんな言葉に小さく頷くけれど、本心でないことはわかっていた。
「俺は、ハルカとしたいよ……」
浅いところを緩く抜き挿ししてそう囁けば、ハルカは苦しげな呼吸を繰り返しながらただじっと俺を見上げる。揺れ惑う眼差しは、言葉よりも雄弁に語っていた。
「タクマさんの、気持ちよくしてあげる、から」
快楽に瞳を潤ませながらそんなことを口にする。いじらしいことを言うところがまた愛おしくて堪らない。
視線を交わらせたまま片腕を軽く離してハルカの口元に手を差し出せば、温かな吐息が肌をくすぐった。
「ほら、噛んでいいよ」
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