Crush on You[2/2]

だけど驚くのはそれだけじゃなかった。李一くんは右手で2人分の昂ぶりを握り込んだかと思うと、まとめてゆるゆると扱き出したんだ。

「え、ちょ、李一くんっ」

大好きな人にそんなことをされてしまって、俺はパニックになる。擦れる部分からぞわぞわと生まれる快感が身体中を巡っていく。李一くんは俺の視線をかわすように目を閉じて、その快楽に堪えていた。

「ん、は……あっ」

さっきキスをした唇からこぼれる抑えた喘ぎ声がどうしようもなく色っぽい。李一くんの先端にうっすらと滲む先走りはみるみると溢れて滴り落ち、ぎこちなく動く手を濡らしていく。そこからくちゅくちゅとかわいらしい音が鳴って、視覚も聴覚も犯されてる気分だ。
確かに気持ちいい。気持ちいいんだけど、これだけじゃイけない。なんて言うか、どうせならもっとめちゃくちゃにしてほしいです。
イけそうでイけないもどかしさに耐えかねて、俺は遠慮がちに申し出てみる。

「李一くん、俺がするから」

「……あ、ダメ、……んッ」

悩ましい声で呆気なく却下されて、俺はがっくりと項垂れる。李一くんと俺の昂ぶりはいつの間にかぬるぬるとしとどに濡れていた。水分で摩擦は小さくなってるはずなのに、熱はどんどん高まっていく。
虚ろな眼差しも、赤く染まった頬も、苦しそうな呼吸に混じる喘ぎ声も。李一くんは本当に、世界中で一番エロくてきれいだ。

「あぁ、あ……ッ」

腰を揺らしながら、李一くんは眉根をギュッと寄せて泣きそうな声を漏らす。かわいくて我慢できなくて、思わず身体に腕を回した途端、華奢な背中が仰け反った。

「あ、イく、イく……っ」

ぴゅく、ぴゅく、と派手に白濁が飛び散っていく。昨夜たくさん出したからよく飛ぶなあなんてどうでもいいことを思いながら、そんな痴態を見せられた俺は、あれだけもどかしかったのにひとたまりもなく溜め込んでいた熱を吐き出していた。

2人分の白濁が、お互いの肌を濡らしていく。
くたりと力の抜けた華奢な身体を抱きしめながら、優しい快楽の余韻に浸る。大好きな人とこうして一緒に朝を迎えてエッチなことができるなんてめちゃくちゃ幸せだなあなんて思いつつも、欲深い俺はこのまま李一くんと繋がりたくてたまらなくなってた。
その欲望をどうしても我慢できなくて、俺は自分の身分もわきまえずに口に出そうとする。

「李一くん、あの」

お願いします。挿れさせて下さい。

喉元まで出かかった言葉を呑み込んだのは、きゅるきゅるきゅる……と下の方から小さな音が聞こえたからだ。
李一くんの顔をそっと窺えば、気まずそうに俯いてしまう。心なしか普段より少し幼く見えて、庇護欲を掻き立てられる。そうだよね。朝も遅いし、いい加減お腹もすくよね。
こんな状態の李一くんを俺がこのまま食べてしまうなんて、絶対にしてはいけないことだ。だから理性を必死に総動員させて、俺は浅ましい欲望をどうにか抑え込む。

「朝ごはん、もうできてるんだ。俺、お腹すいちゃったから、李一くんも一緒に食べてください」

パッと顔を上げた李一くんの瞳は、ゆらゆらと泣きそうに揺れてる。それが意味するものはもうわかってるけど、俺はわざと気づかない振りをした。

「李一くんの好きな卵焼きも作ったんだよ。冷めちゃうし、ね?」

枕元のティッシュを何枚か掴んできめ細かい肌に飛び散った白濁を丁寧に拭っていくと、華奢な身体が小さく戦慄く。一度達したことでますます感度のよくなってる李一くんは本当においしそうなんだけど、まあ仕方ない。
ごはんよりシャワーの方が先だなあなんて思いながら、白くて繊細な皮膚を擦らないように優しく手を滑らせる。その間も、不満を見え隠れさせた顔は俺をじっと見つめ続けていた。

やがて、チッと舌打ちをした李一くんは俺から離れてサイドボードに手を伸ばす。あれ? なんか嫌な予感がするんだけど。
そこから取り出されたのは、昨夜俺を散々苦しめた空色のリングバイブだった。

「えっ、李一くん?」

反射的に身を引いたけれど、李一くんは驚くほど敏捷だった。もう復活を遂げて緩く勃ち上がってきている俺のものを素早く握り込んで、根元に輪っかを嵌めてしまう。

「あ、待って! ま……ああッ」

容赦なくスイッチを入れられて、鈍い振動音を立てながらそれが震えだす。強制的に与えられる刺激にうずくまって悶絶すれば、伏せた頭上から無情な声が聞こえてきた。

「お腹すいてるんだろ。それ、付けたままで食べろよ」

えええ。あんまりです。
思わず涙目で顔を上げる。王子様は高貴な微笑みを浮かべて俺を見下ろしてた。
こんなときの李一くんは、とてもいきいきとしてる。
ああ、なんてきれいなんだろう。
目を奪われる俺の顎をグッと掴み上げた李一くんは、嬉々とした表情で口を開く。その唇が紡ぎだすのは、全くもって穏やかでない言葉だ。

「随分気持ちよさそうだな。これが好きなのか」

いやいや、そんなわけないでしょ。だけど、ぶるぶるとした不自然な振動は頭のてっぺんまで伝わって、俺の理性をぐちゃぐちゃに掻き混ぜていく。この感覚が気持ちいいのか何なのか、実は俺にもわかってない。わかることはたったひとつだけ。

「………好きです」

満足げに微笑む李一くんに、俺は必死に訴えかける。違うんだ。俺が好きなのは、こんな破廉恥な恐怖グッズなんかじゃなくて。

「李一くんが、好きです」

自分でもおかしいと思うぐらい、大好きでたまらないんだ。

か細い声でやっとそう告げれば、李一くんは大きな目を見開いて俺を喰い入るように見つめる。艶やかな頬にサッと朱が差したのを、俺は見逃さなかった。

「 ──── バカ」

そんな呟きと共にご褒美みたいに与えられるのは、唇が触れるだけのかわいらしいキス。

どくんと高鳴る心臓に追い打ちを掛けるように、半身からの刺激が一段と強まった気がした。
やっぱり、もっともっと李一くんが欲しい。

「ほら、来いよ」

王子様から差し伸ばされた手を迷わず取って、俺は恐る恐る床に足を付けた。身体が言うことをきかない。ふらつきながら立ち上がって、李一くんに導かれるままに扉へと向かう。
高貴な後ろ姿は、カーテンの隙間からこぼれる朝陽を浴びて、光のヴェールを纏ったように華やかに煌めく。

李一くんは本当にきれいだなあなんて思いながら、俺は変な感覚で虚ろになっていく頭で、朝食の前にこのオモチャを取ってもらう方法をどうにか考えようとしていた。



"Crush on You" end

2015.2.18


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