「俺、カレー作るよ。後夜祭が終わったら、李一くんのおうちに行っていい?」お赤飯は、今度でいいしね。俺を見上げる目尻は涙に濡れて、ほんのりと赤くなってる。え、何それ。すごく色っぽいんだけど。「甘口、食べたい」「ん、わかった」俺は何となく気づいてる。李一くんの食べ物の嗜好が少し子どもっぽいのは、記憶を手繰ってるからかもしれないって。お母さんの作ってくれた、料理の味。もしかすると、李一くんが俺を傍に置いてくれてるのは、お母さんの面影を追ってるだけなのかもしれない。でも、それが李一くんと一緒にいられる理由になってるんだとしたら、俺はそれでも構わないと思う。「李一くん、大好きだよ」そう言って両肩を掴んで軽くキスをする。すっかり暗くなった教室で、李一くんは潤んだ目で戸惑いながら俺を見つめてる。大丈夫。俺、李一くんから離れないからね。窓の外に目を移せば、グラウンドの向こうに見えるのは人だかりと燃え上がる炎。後夜祭を締めるファイヤーストームが始まったんだ。李一くんは、クラスの委員長でこの学校の王子様だ。いつまでもこんなところに引き止めておくわけにはいかない。「俺、着替えるから。先に行ってて」「着替えなくていい」「えっ」「その格好で、うちに来い」「えっ、えっ」李一くんが俺の手を取って引っ張る。いや、だって俺、さすがにこれで外へ出るのはつらいよ? 「あの、パンツは履いてもいいよね」「駄目」刺すような視線に射抜かれれば、もう何も言い返せない。「そのままうちに来て、その格好でヤるからな」「え、ええっ」いや、セックスはしたいんだけど、よりによってこのままなの?でも、そんな李一くんは、何だか少し嬉しそうで。喜んでもらえるならまあいっか、なんて思いながら、俺は大好きな人と手を繋いで教室の外へ飛び出したのだった。the Way You Are - side M - end2014.9.15 公開2014.12.23 加筆修正 - 47 - bookmarkprev next ▼back