目が覚めると知らないパンツを履いていました。
これはパンツですか? はい、これはパンツです。 …………多分。
「李一くん?」
大きなクイーンベッドはもぬけの殻で、一緒に寝ていたはずの愛しい王子様が見当たらない。そう言えば昨夜はセックスしてそのまま寝落ちしちゃったんだっけ。 だからこうして素っ裸なわけだけど。 いや、素っ裸という表現は間違いだ。だって、パンツは履いてるんだから。しかも、全く身に覚えのないパンツを。
身体を起こして股間をガン見した状態で、俺は必死に考える。 なんでこんなの履いてるんだろう。これって、あれだよね。やっぱり李一くんの仕業だよね。
俺の大事なところは、パンツを履いているにもかかわらず剥き出しだった。それもそのはず、これは全くもってパンツとしての用を為さないものだからだ。 Tバック、と言えば聞こえはいい。いや、それもどうかと思うけど、まあいい。 T字に交差する黒い紐が2本。そう、紐だ。そもそも俺の知ってるパンツって、布なんだけど。 パンツのフロント部分にあるのは金属製の輪っかだ。 で、左右下の3箇所から伸びてきた紐は、金属製の輪っかに結ばれている。その輪っかが一体どこにどう嵌ってるかというと、言わずもがな。
「い、痛い……」
根元にぴっちりと嵌ってるその締めつけで、寝起きのあそこが一段と大きくなった。これ、あれだよね。パンツを脱がないと輪っかが外せないけど、勃ってる限り外せないとかいう、ドSな仕組みだよね。
どうしようどうしようと1人で赤くなったり青くなったりしてると寝室の扉が大きく開いて、俺は反射的に飛び上がってしまう。
ああ、神々しい。
白いバスタオルを腰に巻いただけの状態で、李一くんは颯爽と俺の前に現われた。 髪が濡れてるのはシャワーを浴びた後だからだろう。ちゃんと乾かさないと風邪ひいちゃうのに、とつい心配になる。
「なんだ、起きてたのか」
そう言う李一くんの目線は俺の顔よりもずっと下だった。起きてるってそっちのことですか。
「そんなの付けて勃たせてるなんて、やっぱり変態だな」
俺の生理現象を罵りながらゆっくりとこっちに歩み寄ってきた李一くんは、バスタオルを空に放り投げ、惜しげもなく清らかな裸体を曝け出してベッドに膝を付く。カーテンの隙間からこぼれる朝日が李一くんを照らして、まるで後光が射してるみたいだ。 つい見惚れていると、ドンと力強く肩を突き飛ばされて仰向けに寝転んでしまう。
「え? ええっ?」
慌てて見上げれば、潤んだ瞳で俺を見据えながら李一くんは薄く唇を開いた。
「うるさい」
身も蓋もなくそう言って、俺の腰に跨りギンギンに硬くなった俺の半身を握り込む。何度か扱いてから、李一くんは自らの入口にそれを押しあててゆっくりと埋めていった。先端を呑み込むぬるりとした柔らかな弾力に思わず溜息がこぼれる。
「……あ、ぁっ」
目を閉じて俯きながら、李一くんは腰を落として俺を少しずつ受け入れていく。中がこんなにトロトロに解れてるのは、間違いなくここに来る前に自分で準備したからだ。そんなの、俺がしてあげるのに。
やがて奥へと到達して、甘やかな熱に包まれた俺は繋がった部分に変な痺れを感じながら、快楽を逃がすために深く息を吐いた。 根元は痛いのに、めちゃくちゃ気持ちいい。
そっと瞼が開いて、長い睫毛の下から覗く漆黒の瞳が俺を見下ろす。一体俺の何に欲情してくれてるのかはわからないけど、その表情は抜群にエロい。 ゆらゆらと細い腰が上下して、その度にじんじんと半身が疼く。抗えない快楽に翻弄されながら、俺は今日初めて知ったことを頭の片隅で反芻する。
すごい。パンツって、履いたままでもちゃんとセックスできるんだ。
「あ、ん……っ、ああ……ッ」
李一くんのくれる刺激はいつもどこかたどたどしくて、でもそれが堪らなくいい。 しばらく抽送を繰り返すうちに結合部から水音が響き始めて、仰向けになってるはずなのにぐらぐらと目眩がしてきた。 いや、待って。俺、このままじゃイけないよね?
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