「あぁ、カイくん、カイくん……ッ」
やがて、たどたどしい水音と共に半開きの唇から俺の名前がこぼれ落ち始めて、俺は唖然としながら声を掛ける。
「おい。やめろって」
「んんっ……だって、カイくんがエッチなんだもん」
なんで目の前でオカズにされなくちゃいけないんだ。俺は屈み込んで七瀬の腕を取り、強引に引き寄せる。
「あ、やだやだ……!」
快楽を取り上げられて涙目で訴えてくる七瀬の瞳を覗き込みながら、軽くキスをする。 全く、面倒くさい。
「やってやるからしっかり掴まっとけ」
「え? あ……ッ」
床に膝を付けて、七瀬の背中から手を下へと這わせていく。指先で後孔の襞に触れればしがみつくように絡まる両腕にいっそう力が入った。
「あっ、ア、挿れてえ」
耳元でねだられるままに指を挿入していけば、そこはもうしっとりと濡れていた。纏わりついてくる熱く蕩けそうな中を、性急に解していく。
「ん、あぁ……ッ、イきそう……ッ」
達する寸前で引き抜く度に、七瀬は泣きそうな声をあげてかぶりを振る。きゅんきゅんと切なく指を締めつけてくるそこは俺を受け入れるのにじゅうぶんなほど蕩けていた。
「カイく……イきたい、イきたい……」
なのに急に身体を離して、七瀬は息をつきながらまたカバンの中を弄る。そこから取り出したのは、今日配られたコンドームの箱だった。
「これ、練習したから、使うっ」
なぜだか高らかにそう宣言してフィルムを破り、自分のものに付けようとしている。 おい。まさかここへ来て俺に突っ込もうとしてるんじゃなかろうな。
「違うもん! カイくんの服、汚さないためだもんっ」
頬を赤らめながらおぼつかない手つきで先っぽを摘まみ、先端から伸ばそうとしては引っ掛かっている。不器用で見ていられない。
「あー貸せ、もう」
「えっ! カイくんがコンドーム付けてくれるとか、すごくエッチなんだけど! ムラムラする……!」
「うるさい」
ムラムラも何も、お前とっくに完勃ちだろ。呆れながら両手で巻き下ろしていくと、七瀬はそれをまじまじと見つめている。
「ほら、動かすなって」
「あっ、だって、感じるもん……」
ピクピクと揺れるそれを包み込むように押さえつけると、上擦った声をあげて俺を見てくる。そんなエロい顔をするな、と言いたくなるのをグッと堪えて視線を下げればかわいい顔に似つかわしくない立派なサイズのものが薄いピンクの膜をピンと張り詰めさせていた。
「ほら、これでいいか」
「うん、ありがと。じゃあカイくんのは俺が付けるねっ」
そう言うや否や、もうひとつコンドームを取り出してフィルムを破っている。さっきはあれだけ付けるのに苦労してたのにどうする気かと思いきや、俺の先端にそれを押しあてて、やにわに屈み込んだ。
ちゅ、と音を鳴らしてゴム越しにそこに口づけてから、奥へと咥え込むように少しずつ伸ばしていく。
「………ちょ、お前」
「ん、んっ、はひふん……」
七瀬、一体どこでそんなことを覚えたんだ。心臓がバクバクと激しく鳴り出して、せめてそのエロい光景を見ないように俺は目を閉じて視界を閉ざした。 けれどやはり半分ほどのところでつかえてしまって、しばらく必死に格闘していた七瀬はやがて諦めて口から吐き出してしまう。
「ごめん、俺、下手かも……っ」
「サイズが」
「へ?」
「サイズが、合ってないんだ」
濡れた唇をテラテラと卑猥に光らせながら、七瀬は呆然と俺の顔を見つめる。
「サイズとか、あるの?」
知らないのか?
「あ、そっか! カイくんのおちんちん、おっきいもんねっ!」
おい、デカイ声で言うな。 なんだなんだそっかー、となぜだか安心したように呟く七瀬は、座ったまま両腕を首に絡めて向かい合わせに俺に跨ってきた。
「でもちょうどよかった! せっかくもらったけど、付けない方が好きかも」
そう言って、唇を啄ばんでくる。さっきまでコンドームを咥えていた名残で流れ込む独特なにおいに顔を顰めるけれど、濡れた眼差しに見下ろされて次の言葉をなくしてしまう。
「俺、カイくんとエッチするの、好きだし。そのままのカイくんを感じたい」
ああ、馬鹿みたいだ。そんな真っ直ぐな言葉に揺さぶられる程度には、俺は七瀬が欲しいと思っている。 へへ、と笑う七瀬の小さな入口に先端をあてがって、ぬるぬるとくすぐってやる。七瀬は小さく喘ぎながらゆっくりと腰を落としてきた。吸いつくように呑み込んでくるそこは熱く蠢いて俺を柔らかく包み込む。
「あ……っ、だから、今日も、中に出して……」
それで負担が掛かるのは自分の身体だとわかってるくせにそんな風にねだってくるなんて、七瀬はやっぱり変わってる。 奥まで到達して軽く腰を揺すれば、それに合わせて切羽詰まった声がこぼれ出す。
「あっ、あ、もうイっちゃうよ……ッ」
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