Starting Line[3/4]

容姿も仕事も人格も、全てが完璧な人。
最初の1週間で感じた印象は、半年経った今も変わらない。しかも、すごくフレンドリーで、頭の回転が早い。

巽さんは、広報だとか社内報だとか、何もかもが初めてでわからないことだらけの俺に、効率良く仕事と人脈を引き継いでくれた。

ホテル事業部なら、この人。環境事業部なら、この人。

社内報を作るには、会社全体の動きを把握しておかなければいけない。目まぐるしくあちこちの部署を駆け回り、巽さんが懇意にしていた人たちに挨拶していくうちに、今まで住宅事業しか知らなかった俺の視野は、どんどん広がっていく。


『俺は橋渡しをしただけだよ。そこから先は、りっちゃんの力』


そんな巽さんは新しい配属先の広報グループでしっかりと結果を出していて、今うちの会社が最も力を入れている都市再生プロジェクトをストーリー仕立てで少しずつ展開するというメディア広報を打ち出している。

何度も呑みに連れて行ってもらって、だんだん仲良くなって。困ったときはさり気なく手を差し伸べてくれる、頼りになる先輩。


『広報部は、一見目立たないけどすごくやり甲斐のある部署だよ。うちの会社の事業で自分がいいと思うところを伝えるにはどうしたらいいか。そういうことを考えるのが好きなんだ』


そう言って優しく笑う巽さんはすごくかっこよくて、身近にいるのに手の届かない、俺の憧れの人だった。

そう、今の今までは。






ぬるりと温かな舌が唇の隙間から挿し込まれる。

迷うことなく咥内に入ってきて、強張って萎縮してる舌を舌先でくすぐられればぞわりと背筋が甘く震えた。

反射的に身を引いてしまうけれど、巽さんは俺を逃がしてはくれなかった。首の後ろにあてがわれた大きな手が、俺の頭を支える。巧みに舌を絡め取られて、合わさる唇の隙間から吐息がこぼれた。


「 ─── ん……っ」


巽さんは俺を少しずつ追い上げていく。舌先を優しく吸われて、歯列をなぞってから上顎の裏を辿ってまた舌を絡めて。身体中を何かが絶えず這っていくような感覚に翻弄されて、頭の中は次第に白んでくる。

唾液が混ざり合う音が小さな個室に響いて、聴覚を刺激する。抵抗する術をなくした俺は、いつの間にかされるままに身を委ねてしまっていた。


「……りっちゃん」


ゆっくりと離れていく唇からこぼれる吐息が熱い。


「何て顔してんの」


巽さんがおかしそうに笑う。情欲に濡れるその瞳に、身体の芯がチリチリと疼いた。




- 3 -

bookmark


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -