途切れることなく下肢から聴こえる水音は、次第に激しさを増していく。肉を打ちつける音に混じり、濡れた喘ぎ声が唇から次々に零れ落ちる。
「 ─── ああっ、あ、ん……ッ」
背中をしならせて腰を揺らし更なる快楽を求めるこの方は、本当に美しい。
「珠利……」
うっすらと目を開けて、俺の名を呼ぶ。半身を締めつける中はうねりながら奥へ奥へと誘う。
美しい、闇の神。
促されるままに絶頂まで駆け抜けて、俺はその体内に精を放つ。幾度かに渡り収縮を繰り返す間、何にも勝る強い快楽に翻弄されながら、縋るようにそのしなやかな身体を抱きしめた。
私がこうして交わることができるのは、この方だけだ。
荒い呼吸を繰り返しながら、頭を上げて組み敷いた神を見下ろす。
ああ。俺は今まで、自分が何を信仰していたのかも知らぬままこの方に仕えていたのだ。
あの夜。
俺を受け入れた流伽は、契りを終えた途端忽然と姿を消してしまった。
どこかへ行ってしまったのではない。
まだ繋がったままであったはずなのに、俺の腕の中から幻のように掻き消えてしまったのだ。
「珠利……お前の目には見えないだろうから、教えてあげる」
果てた後の気怠さを感じながら、主の唇がゆっくりと弧を描いていくのを、俺は背筋の凍る思いでただ見下ろしている。
「あの羊飼いが、今お前の傍で私たちをじっと見つめているよ」
主は、そう言って艶やかに笑う。
俺の守っていたのは、冥府へと続く門。肉体の滅びた魂の通るところだったのだ。
俺は主に仕えることで仮の身体を得ている死者に過ぎない。
生きながら死者と交わった流伽は、肉体を失い冥府の門を潜り抜けて主の元へと辿り着いた。俺の目には見えぬが、今もこの傍にいるのだという。
美しき冥府の神は、身体を繋いだまま俺の頬を撫で下ろし、指先で唇をなぞる。
『柘榴を食べさせればよかったのにね。私がお前にそうしたように』
そう言って眩しそうに目を細める。この方は光に弱い。俺の目には見えぬが、流伽は魂のみになっても光を放っているのだという。
私を見る主の美しい瞳には、偽りではない慈しみの情が浮かんでいる。
冥府を支配するこの孤独な神は、罪を犯した俺を必要としてくれるのだ。
主よ、貴方は私を導く羊飼い。 罪深き私は貴方に仕え、未来永劫そのご慈悲を賜わるのです。
"告解 〜 the Gate for God 〜 "
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