あなたじゃなくてもいいの

「私はね、別にあなたじゃなくてもいいの」

目の前の男に向かってそう話す。

「あなたじゃなくても、ほかに、キリトくんを幸せにできる人がいるなら。
キリト君が、幸せになれる人なら、どんな人だっていいのよ」

目の前の男は、ただこちらの話を聞いているだけ。

「あなたがそうだって言うのなら、それでもかまわない。
だけど、どうしても」



―――――納得できない。


なんで、あなたなの。

なんで私じゃないの。

なぜ彼は、あなたを選んだの。


「あいつに聞けばいいだろうが」


目の前の男が、見透かしたように笑う。
私はその男をにらんでから、口を開く。

「彼に聞いても、きっと私は納得できないわ」

よりによって、こいつだなんて。

「安心しろ、お互い冷めてる。入れ込んじゃいねぇよ」
「当たり前だわ。あなたなんかに入れ込むような人じゃない」

お互いの目は、交錯したまま。

「キリトは貴様のことをなんとも思っちゃいねぇよ。そういう意味ではな」

ギリッと奥歯を噛む。
この男に、何がわかるというのか。
人の心を読めるようなフリをして、そのくせ自分の事すら話さない。

「あなたにキリト君はもったいないわ」

私は負け惜しみのような言葉を発するが、それすら目の前の男には笑みを浮かばせるばかりで。

「それはあいつと俺が決めることだ。貴様に決められることなんかひとつもねぇよ」

私はこの男から目を離せなかった。
離したとたん、負けるような気がしたから。
だから精一杯にらみつけた。

「・・・そうね。私が決められることじゃないわ。
でも、キリト君を泣かせるあなたのことは許せない」

私は、私がキリト君の隣にいなくてもかまわない。
彼がそれで、幸せなら。
笑ってくれるなら。

だけど、でも、やっぱり欲はあるようで。


「貴様、自分が隣にいられねぇから、俺に八つ当たりをするんだろう」


あぁ、本当に、嫌になる。
私の沈黙を肯定ととった目の前の男―――――PoHは、私にかつかつとブーツを鳴らして近づく。

「なんなら、貴様がキリトの代わりになるか?この世界じゃ、論理コードに護られてるから手はだせねぇがな」
「・・・その言い方だと、キリト君には手が出せるって聞こえるわ」

私の顔を見下ろす男の、フードの中は見えない。
だが、フードの下から見える異質さに、思わず剣の柄に手を触れた。

「圏内じゃなにもしねぇよ。あぁ、それと・・・貴様はしらねぇようだから教えとくが、論理コードは異性しか効力ねーんだぜ?」

私は目を見開いた。

「うそ・・・じゃあ、キリトくんは・・・もう・・・!」

アスナが思わずもらしたつぶやきにPoHはより一層笑みを濃くした。

「キリトは今まで抱いてきた女にも劣らねぇぜ?まぁ体つきは女のほうが好みだがな。ククッ、最近は自分から足開くまでになってきてよぉ・・・」
「やめて!そんなこと聞きたくないわ!」

私が叫ぶと、PoHはくっくっくっと腹を抱えて笑った。

「夢見るのも大概にしとけよ《閃光》。お前らの大好きな《黒の剣士》はもう俺のところまで堕ちてきてんだよ」

認めたくない、信じたくない。
だが、それでもキリト君は事実、この男の下へと通っている。

「無理やり・・・そうよ、無理やりあんたたちがキリト君を・・・」

自分の口から出た言葉に、自分自身でうなずく。
PoHはそれを聞いて、つまらなさそうに舌を打った。

「まだ言ってんのか、くだらねぇ。言っとくがな、キリトが俺の元へ来てんのは俺らが脅したからじゃねぇ。貴様もわかってるはずだぜ」

認めない。私は、認めない。

「熱が欲しいんだとよ。人殺しは貴様らに触れられねぇからだと。ククッ、あいつらしいバカみてぇな理由だな」
「笑わないで!キリト君は私のために・・・ッ!」

そこまで言った瞬間、首元に《友切包丁》があてがわれた。

「そういうのがうぜぇっつってんだよ。仲間だとか友情だとか、くだらねぇ。
貴様は黙って、キリトが俺の下で鳴くのを指くわえて見てろ。貴様が代わるってんなら話は別だがな」

私は唇をかんで、PoHを思い切りにらんだ。
その表情を見て、PoHはようやく笑みを浮かべ、ダガーを下ろした。

「イイカオだ。キリトだとそういうカオさせるのに苦労するからな。久々に遊べて楽しかったぜ?」
「・・・キリト君を泣かせたら、ぜったい許さない」
「おいおい、それじゃ俺はキリトを抱くたびに恨まれんのか?心の狭い女だな」

茶化すように言うと、PoHはアスナの横を平然と通り過ぎる。

「もう一度言うがな、俺もキリトも、お互いそこまで考えてねぇんだよ。
熱を求められたから与えただけの関係だ」
「・・・代価はなんなの」

キリトに、熱を与えたあなたがもらう、代価は?

「―――――さぁな」

笑みを浮かべたPoHは楽しそうに言うと、かつりかつりと遠ざかる。

交わした言葉は、きっと私の中にずっと居座り続ける。

私も歩き出すと、前から見慣れた黒い装備の男の子が見えた。


「キリト君!」


私は声をかけ、走りよる。
この不安と衝動の波に、流されないように。





なたじゃなくてもいいの
(私だって、構わないのよ。)


END!
―――――――――――――――

はいー!甘いの1話書いたとたんにコレだよ。
アスナさん書きたかったんですよ。
そしてキリト君でてこない!!!PoHキリですこれでも!アスキリも入ってるけど。
この話のキリト君とPoHの掛け合いもあります!次回!

・・・ところで、聞いてくださいよ皆さん。


「PoHさんブン殴りてぇええええええええ!!!」


・・・はい。どうしたことかと思うでしょうが、実は私最近PoHさん殴りたい熱がすごいんですよ!
PoHさん殴りたい!

PoHさんに対する愛がとうとうここまできたかって感じですね!

アニメの安岐さんがかっこよすぎて泣く・・・。
そんでキリトくんの泣き顔かわいすぎか・・・。
アニメがいちいち私の胸をドンドン叩いてくるんですがどういうことでしょう!?

次回早くこないカナーー。

ありがとうございました!





更新日:2014.08.21

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