1,講習
高校一年生の夏休み

講習を終えて玄関に向かっている途中に
あるものを見てしまった



それを見て知ったことが
同じクラスの元ヤンキーが

ホモだった



ということだ


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7月下旬

暑い




果てしなく暑い



とにかく暑い



暑くてしょうがない


暑い

どうしようもなく暑い



暑くて...暑い...




「...あつー」


「だーいじょーぶかー」


バスに揺られながら

ぼーっとしていた



「お前本当に暑さに弱いよな」

「うん...」

今から英語の講習だというのに
行く前からこの調子だった

「なんでお前来たんだよ」

「酷いなー、俺だって行く気はなかったんだよ」

親が行け行けうるさかったから、しょうがなく行っただけなのだ

「俺が倒れた時はよろしくな」

「残念だが俺は数学の講習だ」

「あー...」

終わったな

まあ、60分ぐらいって言ってたしな

あれ、待てよ
60分ってことは
1時間ってことだよな...

「...1時間ももつかしら」

「きっと、窓全開にしてくれるだろうよ」

クーラーが欲しい









「ほら、着いたぞ」

「おう」


ちゃんと授業聞けるかな

「なんか、今日人少なくね」

「確かに...」

そんな事はどうでもいい

とにかく倒れそうで怖い


「そういえば、お前の好きなやつ今日来てるのか?」

「あ、あいつは講習とか出ないだろ...」

「いたらどうする?」

「倒れることは無いだろうけど...
全く授業に集中出来ないだろうな」

「ふっ」

最後の笑いはよく分からなかったが

もしも好きな人がいたら集中出来ないだろう...

「.....あれ、でも俺あいつと同じクラスだったような...?」

「お前本当に大丈夫か」



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「...、動詞が何処か言ってみろ」

講習なう


俺の好きな人は
やっぱりいなかった

あいつは不良だからな
講習なんて出るわけがない

強制参加だったらちゃんと来るんだろうけど



「importantです」


...そんな訳がない


それにしても、先生がまさかのあいつだった...

あの話の長い先生だった

先生自体も、講習の最初で言っていた

『今日は、決まっている時間よりオーバーしてしまうがちゃんと聞けよ』

嘘だろ...

ただもう、
とにかく耐えるしかない
そう思った


頑張るか...


「今からプリントを配るから、今から各自やるように」

よし!!自習...だ!!

これなら、なんとか
やりしのげそうだ





自習が始まると
一気に静かになった

聞こえるのはカリカリっと紙に書く音だけだった


自分もゆっくりと問題を解いている時


トントン

先生に肩を叩かれた


「ん...」

「........」

廊下の方に指を指していた

呼び出された...











教室から少し離れた所で

「お前、すごい具合悪そうだったが...大丈夫か?」

「あ...大丈夫です、少し暑くて...」

「熱中症になったら困るから、水分とってから今日は帰りなさい」

「あ、...はい」

「今日はバスか?」

「はい...」


帰れと言われてしまった



その後、荷物をまとめて
静かに退室した


あー、ぼーっとする

あ、水分摂らないと

リュックからお茶を取り出す

「おっと、」

少し倒れかけた

?「おっとと、大丈夫かい?」

そう言って、倒れかけた自分を
そっと支えてくれた

「あ、すみません.....あ、」

放送局の人だ...

しかも局長


局長は学校では有名人だ

いつも眼鏡をかけていて、かっこよく
一部の女子には大人気だ


近くで見ると、まあイケメン

人気な理由も分かる


「...3年か」


先輩だ



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もうすぐで玄関だ

そういえば1階には放送室があったような

丁度通るし、ちらっと
本当にちらっとだけ見よう

ただ、放送室側を見るだけで

そんなドアを開けたりしないさ

あ、因みにこの放送室は外側と内側に2つドアがある

見てみると外側は空いているようだし
もしかしたら内側は閉まってるかもな

「いつも通りn...」

おっと、
........


おっとおっと、


んっと、


えっと








放送室を通る一歩手前
俺は立ち止まってしまった

何故かって?

学校では聞こえるはずのない声が聞こえていたからだ

「......」

えっと、これは...
俗に言う...




喘ぎ声...



ってやつかな...?


暫く、すぐ近くに起きている状況が理解出来なかった

ふぅ...

よし





とにかく、放送室から喘ぎ声が聞こえてしまっているっていう...
更に
よく耳をすまして聞いてみると

男の声じゃなかろうか


声を抑えてるって感じだが、普通にダダ漏れしている

なんなんだ、

ドアでも開けてるのか
それじゃない限りこんなに聞こえないだろう

とにかく、男の喘ぎ声が聞こえるんだ


っていうかここ、普通に先生も通るし
今の内に注意しに行ったほうがいいよな...

「...」

行くか...

あまり行きたくは無いが...


そーっと覗いて見ると

「...あ」


さっ

ドア開いてんじゃねーか!!

一気に冷や汗出たわ


なんで両方とも開いてるんだよ...

くそ...

どうしよう

まだバレてないようだったし、ゆっくりと見てみるか...



そぉー...


......ん

「......ん!!?!!?」

え、うそだ、なんであいつが...



あ、...


あいつが...あそこに

え、っと

見間違えじゃ...ないよな...




そこにいたのは

紛れもなく自分の好きな人だった








あの行為をしていた人数は3人だった

2人は、1人を囲むようにして立っていて

1人が椅子に座っていた

目と口を縛られていた

そう、その椅子に座っているのが
俺の好きな人だ

同じ男だ




あんな元ヤンキーが、あの男2人に犯されていた




どういうことだ...

ど、どうすればいいんだ...俺...

「んー、どうしたーそこで何をやってんだ」

「...!!」

外側のドアを思いっきり閉めて

「な、なんでもありません!!」

「廊下で座るんじゃないぞ、用がないなら早く帰りなさい」

「す、すみません、さようなら」


先生は通り過ぎていった



なんとか...なったか...

「よかったー...」

?「大丈夫?」

?「庇ってくれてありがとー」

「いえいe...」



あ、

バレた


いや、この人達にはバレてもいいのか

?「とりあえず入って」

「え、あ...!!」


バタン


ーーーーーーーー


「えっと...」

うわー...

どうすれば...

俺もこの2人に混じって、この元ヤンキーを取り囲んでいた

じっと見つめていた

「...」

つい生唾を飲み込んでしまった

?「まさか、僕がこんなことしてるって思わなかったよね」

「.....きょ、局長...!!」


まじかよ



「......そうじゃなくて!!お、おい!大丈夫か?」

それよりもこいつだ
すごくぐったりしている

顔はザーメンまみれだ


「...うるせぇ...触んな...」

手を振り払った

?「丁度終わったんだー」


なんだこの可愛系男子は...
あまりこういうタイプは好きではないんだよな


「お、お前ら何やってるか分かってんのかよ...」

震えながらも

ガンを飛ばした


好きな人がこんな目に遭っていて
黙って帰るわけにはいかない


「わかっているけれど...
この現場を見てしまった以上...君もこのまま帰らせる訳には行かないよ...?」

「...!!それだけは勘弁しろ!!」

そう言って、元ヤンキーを抱え込んで

放送室から抜け出した


あんなことされてたまるか!



こ、こいつどうしよう!
走りながら考えた


と、とりあえず便所...!!












「...だ、大丈夫か...?」

目と口に縛られた紐を解きながら聞いた

「大丈夫なわけ...あるかよ...」

「そ、そうだよな」

...とりあえず顔拭いてやらないと

「...じっとしてろよ......」

「ん...」

一瞬、やめろっと言いかけていたが
それは直ぐにやめた

大人しく拭かれていた

「よし...これで大丈夫だ」

「ありがとう...」

それより、なんでこんなことになっているのだろうか

「...じゃあな、この事は絶対に言うなよ」

「じ、じゃあなんであんな事になっていたか教えろよ...」

「あ?教えるわけないだろ」

「教えないと俺、さっきの事言うぞ」

変な脅しをしてしまった
ちょっと怒らせちゃったかな

「あ!!?ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ?」

ドンっと壁を蹴った

それに驚き、へにゃっと座り込んでしまった

「だって、俺、心配だから...
俺ならお前のこと...守れる気がするんだ」

「何言って...」

もう、どうにでもなれ...!!!

「俺、

お前のこと好きだから、

だから、不安で...!!!」



絶対に告白するタイミングは今ではないと、
そう思った

そもそも、この恋は報われる筈がないと
始めからそう思っていたから

かえって好都合だったかも知れない

そう思っていたが



「...お、お前...な、ななな何言ってんだよ...」

案の定、効果抜群だった

顔も真っ赤にして焦っている

少し俺も驚いたが、俺まで焦ってどうする
もう流れに任せるしかない...!!

「だから、教えて欲しい...
だめか...?」

「...お、教えるだけな...」



ーーーーーーーーーーー

元ヤンキーは、今までの経緯を教えてくれた

途中から泣いてしまった

それでも一生懸命に教えてくれた







あの行為をしていたのは、高校入学して約1ヶ月後かららしい

入学して間もなくあんなことをされていたということだ



何故2人がこいつを選んだのかと言うと
彼らが言うに、入学式当初からずっと目をつけていたらしい

目つけるの早すぎじゃないか
と思ったが

まあかっこいいしなーと
分からんでもないな、と思ってしまった

ただ、2人のやった行為は許せないけどな


更に彼らは2人っきりでやる事も多く

最初、彼らに誘われて

というか拐われて


2人があの行為をしているのを見せつけられ

その後に自分がやられた...
とにかく気持ち悪くてしょうがなかったらしい

そりゃあそうだろうな...
あんなの誰でも嫌だよな

俺も流石にあれは嫌だもん



そうして、あの行為をすることが習慣化してしまって

週に1回
必ず呼び出されていた

元ヤンキーなら、今すぐに逃げればいいのに
と思ったが

それ以上に局長の力が強いらしく
抵抗する度に殴られていたらしい

まさに強姦である



本当にあるんだな...強姦って...

想像するだけでおぞましい



全てを言い終えた元ヤンキーは、その後ずっと泣いていた

よっぽど辛かったのだろう

「...それは、辛かったな...」

そっと頭を撫でていた

普通だったら、殴られてもおかしくないが
今は違った

「もう、大丈夫だ
俺が...守ってやる」

「...ん...ありがとう...」


やばい、なんかかっこいいこと言っちゃったけど...

守れる気がしない...

俺暑いの苦手だし
喧嘩したことないし

「でも...お前じゃ俺にも勝てねぇだろ...」

その通りです

「な、なんとかするさ」

「ふっ...」

「なんだよ...」

あいつと同じような笑い方しやがって...

「いや、何でもねぇよ」

「そっか...」

そういえば、まだ答え聞いてなかった


「俺と...付き合ってくれないか...?」

「それ、今聞くか?」

といって、暫く笑っていた

「な、なんでだよ、今しかチャンスないかなって思っただけだし」

少しムキになっていった

こんな笑顔が俺に向けてくれるなんて...
嬉しすぎるな

「流石に付き合うのは無理だわ」

バッサリと言われた

「え!!?」

「そりゃあ、そうだろ
今喋ったばっかだし」

確かにその通りです



「そしたら、これからは友達として仲良くしてくれるか?」

「勿論だ、命の恩智でもあるしな」

「そ、そうか?」

とにかくまだ俺にも可能性があるという事だろうか

「一応言っておくけどな、俺男はマジで無理だからな。あんなことやってたけど」

「あ、ですよね!」


可能性すら無かった


彼は決してホモではなかった




だけど、ここまで話せるのはとても良かった

今日の出来事が無ければ、一生話すことも無いような人だったし

まさかこんなに親しく話せるとは、思っても無かった


これからは友達として
仲良くなれるしな
その上

こいつの秘密も知って、それを俺が助けたっていう...

こいつには悪いが、夢の様な話ばかりだ

これからは、あの元ヤンキーがまたあんな目に会わないように
俺が守ってやらないとな!


というか、こうしていつまでも便所にいたらまたいつあいつらが来るかわからない

「とりあえず、今日はもう帰ろう」

また、来たら大変な事になりそうだ

「そ、そうだったな」

ささっと、見つからないように帰った





それにしても
今日は長いようで短い1日だった


そう思いながら、元ヤンキーと2人で帰っていった

いつもより一番楽しい下校だったよ










end

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