運命の再会


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「チョコ

        ザイ

               ナ♥」




何が起きたのか分からない。急に何かが迫ってきて私達はそれに飲み込まれてしまった。一瞬だけ意識を失ってしまったみたいで意識が戻ってうっすらと見えた江戸の景色はまっさらで建物はなく巨大アクマとノア達がいる城しか見えない。これが伯爵の力…ぞっとする。身体のあちこちが痛いしさっきから立とうとしてるんだけど上手く動けない。意識もまだぼーっとしている。リナリーは?ラビは?神田は?みんなは?みんなの安否を確認するために立ち上がろうと頑張っていたら直ぐ近くから神田の声が聞こえてホッとした。視界には入ってないから後ろにいるのかもしれない。キョロキョロ見回したら横にはラビがいた。でもリナリーの姿が見えない…どこ?どこ行ったのリナリー?




『ラビ…』


「!!また…っ」


「っ…!?」


「おい…何だコレは…!?」


『神田…イザベル…みん…な…皆…皆…っ!!』




ラビのすぐ横におおきく光る結晶があった。それはとても見覚えがあるしさっきから聞こえてくる私達を呼ぶ声。リナリーしかいない。またイノセンスがリナリーを守ったんだ。でも、これはまずい。非常にまずい。どうやってこれを伯爵に知られないようにしようかと思考を巡らしていたらマリが神田に危険を知らせる声が聞こえた。神田の近くに私もいる。身構えようとしたら、急に横からノアが私と神田に向かってきたので咄嗟に私は剣を神田は刀を鞘から出して攻撃を防御する。やばいリナリーのあの形が伯爵にバレた…!




「もらうよ彼女」


「ユウ!イザベル!」




やばい神田と一緒にノアに飛ばされてリナリーから離されてしまった。ラビに任せるしかないなーだっていくら神田がいるとはいえノア相手に隙を見せるわけには行かないし。




「邪魔くさいかもしれないけど共闘させてもらうよ 」


「チッ」




嫌々そうに舌打ちされた……まあそれでも長い付き合いだし本気で嫌がっていないって事くらいは分かるくらいには仲が良いとは思ってる。本気で嫌がられていない内なら大丈夫!邪魔してこっちにまで攻撃されないようにしよーっと。さて……リナリーは……あ、まずい伯爵がリナリーに近づいてる!行きたいけど、それを分かってかノアが私達を離してくれない生かしてくれない。そしてラビのリナリーを呼ぶ叫び声が聞こえた。その必死の叫びを聞くことが出来ても助ける事が出来ない自分が悔しい。




「悔しそうだねー。いいねーその顔そそるよ」


「神田ー変態に絡まれたんだけど」


「知るか……おい」




珍しく神田から私に声を掛けてきて、戦闘中ながら驚いて二度見してしまった。あ、あぶなっ。ノアの右手が私の心臓貫くところだった。惜しいとかノアも言っていたけど私の心臓を容易く渡すわけあるか!ただでさえこのノアにアレンの心臓を食われたというのに。で、神田の話に戻るけど特に戦闘中なんかは会話は滅多にしないのに話しかけられたものでびっくりしていたら早く返事しろ的な目で見られたので返事をしたらため息を吐かれた。なんかこの感じも久しぶりでちょっと嬉しい。いつもだったらムカッとするよ?




「あっち行きたいんだろ」


「え…うん」


「なら行けよ」




そう言って視線を私からノアに向ける。神田がノアに反撃し始めてどうやらノアが私に攻撃して来れないほど神田がノアの足止めをしてくれるらしい。相変わらず口下手で優しいこと。それに可愛さを覚えて笑みが零れながらも神田から背を向けありがとう!と言って駆け出した。今ならまだ伯爵に会えるかもしれないあの忌々しいやつに。




「その姿…!♥
まるで"愚かな道化"を追い回す"白い道化"のようじゃあないですカ♥滑稽な子供ですネェ…♥」




伯爵が誰かと話してる……でも土煙で良く見えない。そして晴れてきた時に見えた顔…アレン!?やっぱり生きてた…!そしてエクソシストとしても。またアレンと一緒に戦えるんだ…色々な想いが出てきて涙が溢れそうになるけども、それは戦いが終わってアレンと再会した時まで我慢しなきゃと思って目をゴシゴシと拭いて涙を無理矢理止める。アレンと離れたらしく伯爵がフリーな今やるしかない。




「やっと会えたね!伯爵」


「!その顔は…♥
生きていたのですネ♥忌々しいアークライトの娘♥
おかしいですねェ…♥ちゃんと殺してあげたのですガ♥」


「詰めが甘いんじゃない?だからこうして私は生きてる。あんたに対抗する為の力も貰った…あんたを絶対に破壊する!!」


「おやまァ♥
随分と憎たらしく育ちましたネ♥
今日は我輩忙しいのでまた今度ちゃんと殺して差し上げまスイザベル・アークライト♥」


「ちょ…!」




目の前にいた伯爵がいつの間にか消えた。逃げられた…くっそ。でも、ちょっと助かったかもしれない…身体がボロボロだ。伯爵が消えたおかげで緊張がとれて今まで感じなかった身体の不調や傷が痛み出した。こんなに怪我してたんだ。この状態で戦ってたら死んでたかもしれない。今日だけは本当に今日だけは伯爵が消えてくれた事に感謝するか。リナリーも無事みたいだし。で、みんなどこ行ったのかな?




「「うるせェ刈るぞ」」


「やっぱり仲いいんじゃん」


「イザベル!」


「おかえりっ!アレン…帰って来るって信じてたよ……」




アレンに抱きつくとさっき無理矢理止めていた涙が一気に溢れ出した。この匂いこの雰囲気この声の感じ…アレン…アレンだ…嬉しい。私を落ち着かせるために優しく叩くリズムもアレン独特の心地のいいリズム。それさえも私の目頭を熱くさせた。ぐすぐすと泣いていたら私の肩を掴んで離しアレンと視線が合う。しばらく見ない内に大人っぽくなっていて不覚にもドキッとした。ふわりと優しく笑い両頬を手で包んだ。




「涙でぐしゃぐしゃでせっかくの綺麗な顔が台無しですよ」


「アレンのせいじゃない……」


「すみません…ただいまイザベル」


「おかえり。もう勝手にいなくならないでよ…?リナリーもラビもみんな心配したんだから」




それにすいませんと謝るとおでことおでこをくっつけ合って笑い合う。アレンが涙の跡を優しく撫でてくれた。私が幸せに浸かっていたら背後から神田が六幻で私の頭を小突いた。




「いつまでやってんだよ。胸糞悪い」


「何その言い方!しかも乙女の頭を六幻で小突くなんて酷い!」


「へえ…お前女だったのか初耳だ」


「神田…ティエドール元帥にもう会えなくしてあげようか…?」


「上等じゃねぇか」


「ちょちょ2人とも落ち着くさ!?」




神田の発言に頭がブチっと切れた音がした。すんごいムカついてイノセンスを発動しかけるがさすがかなヤバイと感じたラビとアレンに必死に止められたので渋々。神田まじ許さない。帰ったら覚えとけよ…なんか似たような事が前にもあった気がする。そしてなぜアレンはちょっとご機嫌ななめ?話しかけてはくれるけど、どこかムスッとしている。




「俺死ぬかと思った……」


「そりゃあ伯爵とかノア大勢の所に飛び込んで行ったからね」


「そっち!?
イザベルまじ怖い…」


「今更ですかラビ」




今更ってどういう事でしょうかアレン。アレンの発言気になるけどもそろそろリナリーを連れてこなくちゃいけないとなってリナリーを連れて他のクロス部隊のみんなとティエドール部隊とも合流してひとまず橋の下へと避難した。




「改造アクマ、生成工場、ノアの方舟ねェ…私が日本に来たのは適合者の探索任務の為なんだよ。
あの男に協力する気はサラサラ無いんだ。
自分以外の人間は道具としか思ってないというかさ、護衛のキミ達はマリアンと改造アクマの立てた筋書きの囮に使われたんだよ?どう見てもね。
わかってる?」


「はい。警告を受けた上で来ましたので予想はしておりました」


「ん〜〜
…今この世に存在するエクソシストは教団にいるへブラスカにソカロとクラウド、マリアン。そしてここにいるたった十人しかいなくなってしまったんだよ。
ならば今は千年伯爵と戦う時じゃないし、キミ達はそれまで生き存えるのも使徒としての使命だと私は考える。
クロス部隊は即時、戦線を離脱すべきじゃないかな」




ティエドール元帥とブックマンの話が私の耳に入ってきた。確かにティエドール元帥の言う通りだ……ここにいるのが元帥を除く全てのエクソシスト…か。だいぶこの戦いで減ってしまったんだね…デイシャもいなくなってしまったんだ。そしてスーマンも。大事な人がみんな亡くなっていく。これ以上大事な人は失いたくないな。ふいに、向かいにいたアレンのリナリーを呼ぶ声が聞こえたので考え事をやめてリナリーを見る。あ、目が覚めた…良かった。大丈夫そうで安心した。




「アレン…くん…?」


「はい。すみません。すみませんでしたリナリー」


「どうして謝るの…?
スーマンのことならアレンくんは救ってくれた…無惨に殺されただけじゃないよ。
スーマンの心はきっとアレンくんに救われてた…おかえりなさいアレンくん」


「…だいま…ただいま…リナリー」




リナリーがアレンの頬に触れてそれをアレンがそっと上から包む。2人の目には涙が浮かんでいた。リナリーはさすがだな…アレンが欲しい言葉を分かっている。私にはそれは出来ない。特にスーマンの一件は直に見たのは2人だけ。言ってしまえば部外者の私がかけた所で意味のない言葉だから。




「あら〜泣いちゃったさー」


「ラビも泣いたくせに」


「珍しく取り乱してたよね」


「なっ泣いてねぇし取り乱してねぇさ!!」




久々の再会で感動ムードの中いつもの感じで他愛もない話をしていたら、ビシッと音がして私とリナリーは落ちるはずのない下へとなぜか落ちた。突然の事で声も出ず飲み込まれていく。最後に聞こえたのは戸惑ったアレンのリナリーと私の名前を呼ぶ声だった。



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