蓮城ゆうの憂鬱
一方、アンナ姫に客寄せを命じられ無理矢理外へと出された私はまず山の手エリアにいるお客様方ではなくまずは目抜き通りに行く事にした。
「アルデーニ兄弟いるか?」
「蓮城くん!?い、今呼んでくるね!」
女子がいっぱいだな。あいつらはモテるしファンクラブもあるらしいし。ああ、ファンクラブが集まって天然なアルディーニを上手くたらしこんだのか。予想だけどだいたいそんな感じだろうな。
「蓮城何のようだ」
「あれー?薙切さんが一緒にいないのは珍しいね」
「姫は今自分のお店に立っている……今日は誘いにきた」
姫に事前に知り合いを誘う時はこれを渡せと仰せつかった優先入店券をアルディーニ兄に渡した。なんだこれはとアルディーニ兄は眉をよせる。
「姫と私の店の優先入店券だ。うちの店は予約制なんだが今日突然姫が枠を増やすと言って今枠が余っていてな……客寄せをしている。お前たちにもいい経験になるはずだ。来い」
「随分上からだな」
「実際上だろ?お前らは面白いとは思うが実力は私に勝っているとは思わない。もちろん、姫にもな」
なんだとっ!と今にも突っかかってきそうなアルディーニ兄をアルディーニ弟がまあまあと止めている。お前ら絶対逆だろうという言葉は飲み込んでおく。
「ありがとうね〜時間を見つけて行くよ」
「イサミ!?誰があんな奴の…!」
「はいはい」
兄ちゃんめんどくさいから無視して言っちゃっていいよーというアルディーニ弟の言葉に素直に甘えて続いてアリス姫の所の次に行きたくない丼研に向かう。
「蓮城ゆう…!」
「はぁめんどくせえ…おい」
水戸郁魅に優先入店券を無理矢理押し付ける。そん時に水戸の胸を軽く潰してしまったがまあ、言ってしまえば同性なので何とも思わないし。アンナ姫の場合は…多分ないと思う。多分。
「なっ…!」
「それ、姫と私の店の優先入店券だから来いよ」
「ちょ…待てよ!蓮城ゆう!」
「んだよ…別にお前なんかのどうにも思わねーよ」
じゃあなと言ってその場を後にする。水戸郁魅の怒鳴り声が聞こえてくるが無視。えりな姫には尊敬の眼差しを向けているくせにうちのアンナ姫やアリス姫には敵対心むき出しの奴と仲良くする気はない。アンナ姫に友好的いや、崇拝的なやつしか私は受け付けない。次はアリス姫のところか。行きたくねーな。
「いやもう騒がしいのが聞こえてくる…」
「ゆうくーん!」
アリス姫にバレてしまったようで大きく手を降ってこちらを見ているので仕方が無いと腹を括って近付いた。両隣の視線がうぜえ。
「オイ!アンナはどうした」
「従者如きが呼び捨てにするな
姫は御自分のお店で忙しいんだよ」
「あら、じゃあどうしてゆうくんは来たの?」
「アリス姫実は…」
アリス姫に今日の朝の出来事について話をする。その話を聞いている間のアリス姫のむくるた顔が愛らしい。アンナ姫の次に。
「というわけでして是非アリス姫にもいらして欲しくて参りました」
「……俺達と態度が違う」
「当たり前だろ。アンナ姫の従姉妹にあたる方なんだお前らカスとは違う」
黒木場と葉山が睨んでくるが気にしない。間違った発言をしたとは思っていない。いくら料理が良かろうがアンナ姫やアリス姫のような高貴な存在の前ではただのゴミに過ぎない。……どうやらアリス姫は悩んでいるらしいな。いい返事が聞けるといいが。
「行くわ!」
「おい店はどうするんだよ」
「いつもより今日は長く営業してる。それに山の手エリアは夜の方がメインだからな」
「だったら大丈夫よ!」
こうなったらアリス姫は引かない。あきらめるしかないな。アリス姫に強引に決定され行く事を決めた汐見ゼミグループにチケットを渡して目抜き通りエリアを後にする。ついでにアリス姫の所の物もお土産として購入しといた。初日赤字出してたし。次は中央エリア。久我さんはいらないと言っていたので幸平だけでいいか。
「幸平、田所」
「ん?おお!えーっと…」
「創真くん、蓮城くんだよ。蓮城ゆうくん」
「そうだそうだ!」
いい加減覚えろよという突っ込みは抑え。(私にしては珍しい)姫へのお土産も購入。できるだけ出来たてに近い状態で食べてもらいたいだろうし食べさせたいので持参した物入れに保存しておく。
「お前ら店終わったら山の手エリアに来いよ。お前らを姫のお店に招待してやる」
「まじか。ラッキー」
「え、いいの!?」
「姫から招待されたんだ。ありがたく思えよ」
優先入店券を渡してその場を後にする。後ろから毎度ーという幸平の声が聞こえたので片手だけあげとく。さて、次は竜胆先輩か。唯一十傑で模擬店を出さずに食う専でやってるから見つか……いたぞ。
「竜胆先輩」
「ん?おお!アンナのお付きの蓮城じゃねーか!」
入りがなんか幸平っぽかったが竜胆先輩はどうやらちゃんと名前を覚えてくれていた。あいつとは違って安心?した。
「竜胆先輩をアンナ姫のお店へ招待にするために来ました」
「え、まじで!?アンナの店予約取れなくてどーすっか悩んでたんだよなー助かるぜ!」
ばしばしと背中を何度も叩かれ正直背中がくそ痛い。けど、先輩であり十傑の方だから嫌とは言えずに痛みに耐える。
「今日から席を増やして余っていますので良かったらどうぞ」
「よっしゃ!んじゃ寄り道しながら今から行くわ!」
「分かりました。お待ちしております」
お辞儀をすると、じゃーな!といって竜胆先輩は去っていく。未だにあの人が二席ということに疑問を感じるが能ある鷹は爪を隠すという言葉があるからな。いつかその実力を拝見したいものだ。さて、後は一般のお客様の客寄せか。
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