お互い


「内装作業ご苦労だった明日からいよいよ…SHINO'S TOKYOの"プレオープン"が始まる」


「プレオープン…?」


「プレオープンとは…お店の試運転のようなものね。知り合いなどを中心にお招きして実際に料理を出す期間のことなの」


「ユキヒラにはとりあえず私のサポートに入ってもらうナ。慣れてきたらアベルさんのサポートも兼任してもらうカモ」


「うす!がんばります」


「試運転とはいえ…最終日には報道関係者も多数来ることになっている。この俺が手がける店だ…世間の期待値は高い。ミスでもすれば噂はあっという間に広がるだろう。絶対に成功させなけりゃならない…いいな?」


「そして…プレオープンはスタッフの連携を確認する期間であると同時にSHINO'S TOKYOの新メニューを試す目的もあるの。お客様の反応を見ながら毎日品を変えていく…プレオープンの最終日にはスタッフ同士で新作メニューのコンペもやるのよ」


「あの…そのコンペって俺も参加できたりするんすかね?」




四宮先輩のお店に自分が考えたメニューがのるというのは昂る。参加できるなら参加するしかないよねー。いや、ダメと言われても絶対に参加する!無理矢理でも!




「もちろんだ。たとえ下っ端だろうと実力ある者の意見を取り入れるのは当然の事だからな。アンナも参加しろよ」


「分かってますよー参加したいですし。で、四宮先輩」


「なんだ?」


「プレオープン……厨房から離れていいですか?」


「……それはつまりホールに回るということか?」


「はい」




四宮先輩をまっすぐと真剣に見つめたら伝わったのか1回視線を逸らすと、ため息を吐いて諦めたように私をまた見つめ返した。




「…考えがあるんだろ?分かった認めてやる」


「ありがとうございます!」


「そのかわり高のサポートで、だ。お前なら大丈夫だとは思うが」




珍しい。四宮先輩が面と向かって私を褒めた。今の私絶対顔に出てるよ。それよりも、明日大丈夫かな?雪とかになったりしない?




「……おい顔にも声にも出てるぞ」


「てへ」


「……はあ。まあいい」




諦めたな。めんどくさくなったんでしょうねー。せれからすぐに解散し次の日、プレオープン当日の朝になった。私と創真くんは早速着替えて四宮先輩の所へときていた。




「「……………」」


「意外と違和感ねぇな…コックコート。笑ってやろうと思ってたのによ」


「同じく」


「意外とって何すか」




これはこれでありだなーって創真くんを見ていたら次はこっちに視線をうつして上から下を見ていく四宮先輩。その見方は完全にエロジジイとは突っ込めないでいるのは内緒!




「……悪くないな」


「やっぱり言わせてください。エロジジイ」


「あ゛?」


「高さーんどこですかー!?」




怖い。高さんに助けを求めるように四宮先輩から離れていった。まだジジイって歳じゃないですよね!ごめんなさい四宮先輩!(謝る場所はそこじゃないというツッコミは無視だ無視!)




「!(最初のお客様がきたねー)」




緊張が一気に空間を支配した。その緊張感に創真くんも驚いてるようだけど、問題はこっからついてこれるか。私も自分がやろうと思ったことを全うしよう。なんせ初めての仕事なんだから。




「お客様が着席された。行くぞ」


「「「Oui Chef(ウィ・シェフ)」」」




四宮先輩の声を合図にそれぞれが自分の位置へつく。私も高さんや他の方を見て真似しながら自分に与えられた仕事をこなしていったが、厨房が騒がしくなった。高さんと厨房に向かう。




「唯!アンナ!3番卓肉料理が5分遅れる」


「oui!」


「はーい」


「アペル。幸平のミスの尻拭いをしてやれ」


「Oui Chef」




どうやら、創真くんが用意忘れいや、遅れをしたみたいで騒がしかったみたい。違う意味で空気が重いなー彼のことだからすぐ立ち直るだろうから心配はしてない。それなりに信用はしてるつもり。




「1番卓のサポートは俺がかわるどけ」


「…うす」


「言っておくが俺はまだ君をチームの一員として認めてはいないよ。もちろん君もだ」


「…………」


「アペル」


「反論があるのか?調理場の流れを滞らせる者は必要ない。俺はSHINO'S TOKYOの料理長だ。仕事を管理する義務がある。思い知っただろしょせん君は研修生なんだ一軍に割って入ろうなんて思い上がるな。わかったなら立場をわきまえて」


「すみませんすぐ戻ります!」




アベルさんに頭を下げるとすぐに戻った創真くん。認められていないなら、別にそれで構わないけどきっとそれはすぐに変わる。だから心配はしていないし創真くんだって気にしてない。さて、仕事に戻ろうか。




「アンナ」


「はい?」


「お前、明日は厨房入れ」


「明日から入れる人増やすんですねー?分かりました」


「幸平みたいにやらかすなよ」




顔が笑ってない。冗談じゃなくて本気で邪魔になるなよと言っているのが分かる。小さい頃から私の実力知ってるくせに意地悪。




「やだなー創真くんは好きですけど……料理人として私が彼と同等だと?」


「俺からしたらお前も幸平も一緒だ」


「うわ、ひどい。アベルさんに認めさせますよ」


「楽しみにしてる」




というわけで、1日目が無事に終了した。創真くんはスタッフルームで過ごすみたい。私も帰りたいんだけど創真くんに話が……えっとスタッフルームは……。




「お前が今のままなのであれば最終日…お前の居場所はここには無いぜ」


「…………」


「アンナ」


「あ、お疲れ様です」


「お前もだからな」


「分かってますよ。明日をお楽しみに」




四宮先輩は私の言葉に笑うと横を通ってアベルさんを連れて帰っていく。その姿が見えなくなるまで見るとスタッフルームへと足を運んだ。




「おじゃまするよー創真くん」


「ん?おー」


「お疲れ様。散々だったねー」


「おつかれ。まあなー」


「明日は私も入るし、サポートするからよろしく」


「おう!」


「で、何かあったら呼んで?すぐ近くだからすぐ来れるから……君のことだから気になるのとかでてくるだろうしね?」


「本当か!?助かるわ」


「ふふ、じゃあおやすみ」


「おやすみ」




今彼に退学されたら私の楽しみがなくなるからね?創真くんに別れを告げてから数時間後に早速創真くんから連絡があったので向かう。




「やっぱり気になって眠れなかった?」


「まあな」


「で、何を知りたいの?」


「まずは……」




創真くんの質問に念のために用意していたノートで分かりやすく説明していった。次から次への質問の嵐でいつの間にか夜は更けていった。


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