番犬VS忠犬


アリスちゃんを慰めてしばらくすると、入場の時間なのかリョウくんがやってきてアリスちゃんに色々言って出ていった。そして私とアリスちゃんは出入口で一緒に観戦するために待機中。




「続いて…一回戦第二試合両選手の入場です。蓮城ゆう選手――!!対するは黒木場リョウ選手―――!」


「対決のテーマは…「ラーメン」です!!」




ラーメンか……これは面白い料理が見れそうな予感!一体2人はどんはラーメンを作ってくれるのかな?そして、いよいよ調理開始した。




「やっぱりリョウくんは魚介ラーメン」


「……どっちが勝つと思っているの?」


「…突然だね」


「ねえ、どう思っているのかしら?アンナは」


「………意地悪な質問だね…えりなちゃんの緋紗子ちゃんにアリスちゃんのリョウくん、私のゆうちゃん…実力はリョウくんが一番上なのは分かってる」




昨日の夜、突然ゆうちゃんが私の部屋へとやってきた。そして、言ったんだ。




「まだまだ黒木場には勝てない……自分でも痛感してます。それでも、誰よりも忠誠を誓ってるアンナ姫の顔に泥を塗らない…薙切アンナ様の側近は私しか務まらないと観客には言わせる結果は残しますのでどうか私を信じて観ていてください」




たまにやりすぎって思うところはあるけど、そんなに私を慕ってくれているゆうちゃんの言葉を信じなきゃ主としては失格じゃない?




「それでも私はゆうちゃんを信じてる」


「そう……あら、アンナ!あそこ楽しそうよ!行ってみましょ!」


「あ、え!?アリスちゃん!」




アリスちゃんに引っ張られるがままやって来たのは、極星寮の面々が集まった観客スペース。さっきアリスちゃんと幸平くんの試合があったからその応援かな?




「ふふ…面白いわねっ「港と山育ち対決」だなんて」


「そうそう港と山育ち対決…薙切アリスに薙切アンナ!?なんでいるの!?」


「あら…いけない?何だか楽しそうなのが見えたから」


「私はアリスちゃんに引っ張られただけだけどねー」


「港と山育ち対決…って言ったか?」


「そうよっリョウくんは…海とともに育ったんだもの」


「そして、ゆうくんは山とともに育ったんだー」




これ、知る人そんなにいないけどねー。トップシークレットってやつ?まあ、今言っちゃったけど気にしない気にしない。




「あ…だから蓮城くんはきのこを使っているんですか?」


「そうだよー普段は野菜ベースの料理だけど本来のゆうくんの得意分野は山の幸…山菜やきのこ類とかを使った料理。でも、それはゆうくんの隠し玉。それを使ってきてるってことは相当本気出してるってこと」


「私のリョウくんが相手なんだから当たり前よっ」


「まあ、ゆうくんがリョウくんに負けたからってアリスちゃんが私に勝てるわけではないから……私に勝てるのは側近の料理の腕くらいじゃない?」




と、軽く挑発しといて色々アリスちゃんが言ってるけど無視だむしー。料理では勝てるかもしれないけど私は自分の側近にゆうちゃん以上に適任な子はいないと思ってるけど。無視し続けたら飽きたのか、アリスちゃんは今度はリョウくんの身の上話をした。小さい頃から厨房の第一線、シェフとして技を磨いていた事を。




「それならうちのゆうくんだって負けないよ?」




今度は私がゆうちゃんの身の上話。人里から離れた山奥に家族で経営していたお店があってそこの料理長、シェフとして働いていたこと。そこは山奥にある小さな店なのにも関わらず毎日のように行列が絶え間なくあったほどのものだったこと。




「負けず嫌いだな!お前ら」


「相手がアリスちゃんやえりなちゃん限定だよ。あ、ゆうくんのスープができたみたいだよ」


「……あら、あれは…」


「あれ、だね。でも、それだけじゃリョウくんには勝てない……どうするのか」




すると、審査員たちがリョウくんやゆうちゃんに近づいて身近に観察するように見始めた。カウンターで仕事ぶりを見物するのもラーメンの醍醐味だから、らしい。それに2人は動じることもなく作業をし、リョウくんが麺の湯切りに入る。わお、かっこいい。そして、審査員の前に品を出す。




「さぁ食べてくれ「スープ・ド・ポワソンラーメン」だ……!」


「スープ・ド・ポワソンだって!?魚のアラや海老の殻の出汁で作る南仏のスープだ。それをラーメンに応用したのか!」


「エビ味噌や魚の内蔵!全てのコクが渾然一体となって…なんと荒々しい味なのだ!」


「続いて…トッピングは細切りにした3種のチーズ!ルイユと…これは天カスだ!なるほどクルトンの役割を果たしているのか。そして先程のラスク…!エシレバターを塗りじっくり焼いてある。濃厚なスープの後で舌をリセットする意図か」




エシレバターに乾燥させ風味を倍増させた殻が入っていた。そして、このラーメンはスープの出汁からバターにまでたっぷりとパウダーを仕込んでいるとリョウ君が語った。




「海老が持つ旨味エキスはグリシン・アルギニンプロリンという成分からなる訳だけど甲殻類は魚介でトップクラスのエキス含有量を持っているの」




だから、強烈な美味しさがあるのか。審査員たちはリョウくんのラーメンを貪り食ってる感じだと伊武崎くんは呟いた。




「この儂を力任せにはだけさすとは――――見上げた度胸よ」




おじい様のおはだけきたー!おじい様の逞しく美しいお身体が…!はだけ方も貴重。さて、これはハードル上がったぞ?ゆうちゃん?




「では、私のラーメンをどうぞ」


「これは、酸辣湯かね?」


「はい。酸辣湯ラーメンです……どうぞ食べてみてください」




おじい様をはじめとする審査員がゆうちゃんの酸辣湯を口にした。




「これは……!アシタバか!独特な苦味があるアシタバだが酸辣湯の酸味と融合していいアクセントになっている」


「む、これはしいたけか!?炙られているな。叉焼の代わりとして使っているのか!肉厚で食べごたえがあり香ばしくておいしいな」


「麺と一緒に入っているえのきの食感が食べていて飽きなくて楽しい」


「―――それだけではない。酸辣湯は本来一般家庭でも作れる簡単なものだ。しかし」


「……はい。私はラーメンのスープ作りと同じ要領で作りました。出汁もとって」


「具材ばかりに目が行っていたがなるほど……!確かに旨味がラーメンのスープに似ている」




確かに、さっきのゆうちゃんの調理を見ていたら出汁をとっているのも見えていたし完成に近づくまで酸辣湯なんて思いもしなかった。




「出汁には椎茸……どんこを使用し、タレとして酸辣湯には欠かせない酸味を出すための酢や香辛料を数種類ブレンドしたものを使用しました」


「酸辣湯にも関わらず味はさっぱりとしていてしつこくない。具材をうまく引き立てている」


「おい蓮城!食わせろ」


「……お前のもよこせ」




お互いがお互いのラーメンを食べているとおじい様が筆をとった。ついに審査結果を発表の時間だ。おじい様が書いた名前は…………。




「……決まったわねアンナ」


「そうだね、じゃあ私は行くね」




おじい様が書いた名前は黒木場リョウ。リョウ君の名前だった。勝者はリョウくんだった。




「黒木場だ―――!!!第二試合の勝者は黒木場リョウ―――――!!」


「あぁっ見ろ!総帥の…はだけが…少ない!!」




おじい様は半分を残した状態ではだけていた。はだけてはいるが中途半端なはだけ方。ただ、全てはだけるまでにゆうちゃんの料理は至らなかったってことだけはわかる。




「黒木場」


「………」


「私は絶対認めない…お前の姫への気持ちを。姫は誰にもやらない」


「……アンタ」


「私は、姫を「ゆうくん」」


「姫!」「……アンナお嬢」


「早く退場しなさい?リョウくんお疲れ様。次も楽しみにしてるから」


「……うす」


「ゆうくんいくよ」


「はい」




私とゆうちゃん2人で退場する。会場は拍手に包まれていてゆうちゃんを励ます言葉も聞こえたりする。




「さて、お疲れ様!ゆうちゃん!さっきリョウくんとはなにを話してたの?」


「なんでもないです」


「そう?どうだった?秋の選抜は」


「……正直言って悔しいです。黒木場に勝ちたかった……!総帥もはだけさせたかった」


「だろうね。顔を見れば分かるよー私からはなにか言ってほしい?」


「お願いします」




ゆうちゃんは涙でぐしゃぐしゃ。イケメンが台無しなくらい。でも、いつも表情が豊かな子ではないからこんなに表情を崩すのを見れたのは嬉しい。そんなゆうちゃんのためにめ正直に話そうと思う。




「じゃあ、少しだけ…………ねえそれがゆうちゃんの本気なわけ?奥の手でもあるきのこ使ってもその程度なわけ?ならいつも通りの方がいい結果を出せた……なんで酸辣湯なの?たしかにどんこを使ったのは良かったとおもうけどそれを使うなら違うものができたんじゃないの?どうして?」


「っ……」


「相手がリョウくんだからって焦ってたんじゃない?リョウくんじゃなかったらもっと出せた?いや、相手がリョウくんだからって言い訳して負けたくないからって焦って、興奮して、判断ミスして負けて本当にかっこ悪いよ。私が知っているあなたはおじい様をはだけさせることができる才能を秘めた子のはず……というか前から気になってたけどなんでリョウくんやアキラくんにこだわってるの?」


「それは……言えません」


「じゃあ、いいよ。最後に一つだけ………今日のゆうちゃんには失望したよ」


「っ……!?」


「以上!私からのダメ出しでした!と、言っても、ゆうちゃん以外に私の側近なんて無理だからやめないでね」




ありゃ、ゆうちゃんの顔がもっと酷いことに。泣かしたのは私なんだけどね!いっつもアメばっかりだからたまにはムチを使わないとゆうちゃんのためにはならない。




「悔しい?悔しいよね?さんざんあんな事を私に言われて……恥ずかしよね?なら、もっと頑張ってよ。相手が誰だろうが、私だろうが自分の最大を出せるように…次、失望させたら……分かってる?」


「はい!」


「うん!じゃあ大丈夫!さて帰ろっかー」


「はい」




ゆうちゃんはもう2度と私を失望させないから大丈夫大丈夫。私もゆうちゃん解雇したくないし。せっかく見つけた子なんだから。……さて次は誰と誰かなー楽しみだな。


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