ついに実行の日が来た。あれから私はザンザスにべったりだった。ベルからの遊びの誘いも断り四六時中ずっとザンザスの側を離れなかった。だって、会えなくなったら怖いから。幹部のみんなはザンザスの忠臣だ。ザンザスの命令なら聞くのを分かっているから、ザンザスのボスの責任でもう会えなくなるかもしれない。思考がネガティブだけど、ネガティブになるくらい今回は危険なんだ。ただで帰れるなんて思っていない。




「う゛ぁい本当にやるんだなぁ……ボス!」


「……あぁ」


「ザンザス…」


「……お前はここで待ってろ…」


「分かってる……ちゃんと帰ってきてね…?」


「……当たり前だ」


「ししっ行ってくんねフィロメーナ」


「行ってくるぞぉ!」


「行ってくるわね〜フィロメーナちゃん」


「…行ってくるよ」


「……」




みんなは、任務に向かった。どうか無事でありますようにと祈りながら、しばらくその場にいた。ザンザス達が行ってから数十分。私も行動にでる。




「…よし」




ザンザスには来るなと言われたが、私だってじっとはしてられない。だけど、ヴァリアーとして本部の方達を傷つけたりはしたくない。だから隠密に誰にもバレずにザンザスがなんのためにこれを計画したのかついていけば分かるはずだと思ったから。ここ半年くらいザンザスの様子は明らかにおかしかった。私への態度はあまり変化はなかった。けど、ザンザスが纏う雰囲気が違った。殺意、憎悪が強く感じた。きっとそれは9代目に関して。私の超直感が告げた。でもなんで、そうなったのかが分からないから理由が知りたい。




「……隠密はまだまだ苦手だけど行くしかない!」




みんなが向かった方角とは違う方角に向かって移動を開始する。私がまだザンザスと本部に住んでいた頃、よく1人で探検をしていた。ザンザスには内緒で。その時に様々な隠し通路を発見していた。今、そのうちの1つ誰にもバレずになおかつザンザスも探せる通路への入口に向かっている。そこはちょっと遠いのだ。




「……っと、着いた。入口は…大丈夫だ。まだ入れる」




子供(認めたくないけど)の私がちょうど入れる大きさの穴を通っていく。ほふく前進ではなく普通に歩ける。ただ低いからちょうど入れる大きさ。本部からちょっと離れた所にあるので早足で進む。こうしている間にもザンザスと9代目が戦っているかもしれないんだ。急がなくちゃ。




「…はぁは……ザンザス…っいた。みんなも、けがが…」




本部のだいぶ深くを探していたら遠目にザンザスと対峙する9代目と周りに倒れている幹部達。気を失っているようだ。2人に気付かれないようにそっと会話が聞こえる場所へと移動する。すると、まだかろうじて意識があるスクアーロを発見したので近くによる。




「!フィロメーナなんでここに」


「静かに。バレる」


「ちっ……」




2人でザンザスと9代目の会話を柱の影で盗み聞きをする。大きくはない柱なのでスクアーロに抱きつくような体勢をとりスクアーロに見られるが今はそんなことはどうでもいい。ザンザスと9代目の話の方が重要だ。




「何故だ…何故お前は」


「うるせぇ!それはお前が一番よく知ってるはずだ!俺はお前の…お前の本当の息子じゃないと!」


「「!?」」


「(どういうこと…?)」


「何故俺とお前が本当の親子じゃないってことを黙っていた!俺がボンゴレのボスになれねぇってことを!」




ザンザスは、9代目の本当の子供じゃない?ザンザスは、ボンゴレのボスになることに憧れていた。いや、9代目の息子だからボスになるのは必然だと思っていたのかも知れない。でも、事実は違った。それをザンザスが知ってしまったから今回、行動におこしたってこと?




「私はお前の事を本当の子供だと思っていたよ」




私の少ない脳みそではどういう状況がよく分からなかった、頭に入ってこなかった。ただ、9代目はどうしてザンザスを自分の息子として招き入れたのかが知りたい。まだ11歳という人生で背負うには重すぎる事実に、耐えきれず思考の意識が戻った時には既にザンザスは9代目の死ぬ気の炎によって氷付けされた後だった。




「ザンザス……」


「!?フィロメーナちゃん……聞いていたのか」


「…はい」


「すまない。ザンザスをこんな風にしてしまって…」


「いえ…真実はどうであれ、9代目は間違ってなかったと思います。まだ、私には難しくてよく分かりませんが…」


「そうか…」


「では、私達は撤退します。御迷惑おかけしました」




幹部をつれてヴァリアー邸へと帰る。最中、私の頭の中ではザンザスをあの状態から戻すことはできるのか。またザンザスと話をすることが出来るのか。そんな事で頭がいっぱいだった。私が予感していた最悪の結末になってしまったのだ。




「すまねぇ…フィロメーナ。ボスを…ザンザスを」


「ごめん、フィロメーナ」


「フィロメーナちゃん……ごめんなさい」


「フィロメーナ、ごめんよ」


「すまない…」


「……いいよ。みんなはザンザスの命令に従っただけ。悪いのは、止められなかった私だよ」




独立暗殺部隊ヴァリアーが聞いて呆れる。11歳の少女に申し訳なさそうに謝ってるんだから。だから、怒りたくても、みんなのせいにしたくてもそんなことできない。




「ザンザスがいつ帰ってくるか分からない…その為にこのヴァリアーの強化。ザンザスが安心して帰れる居場所作って待ってよう?」


「フィロメーナちゃん…一番辛いのはあなた。泣いていいのよ」


「ありがとうルッス。でも泣かない。今日から私は強くなる。次に帰って来た時に背中を任せられるくらい強くなる。何も出来ずにいるなんて嫌だ。大切な人が目の前でなくなるのは嫌なの!」


「フィロメーナ…」


「泣き虫卒業して強くなる。それが今私のできること…だから、スクアーロ」


「!」


「ルッスーリア」


「はぁい」


「ベル」


「ん」


「マーモン」


「む」


「…レヴィ」


「うむ」


「私を強くして。あなたたちの上に立てる強さになれるように!どんなに過酷でも乗り越えてみせるから」


「「了解」」




泣き虫の私から卒業して強く逞しい、未来の雪を背負う者へと変わる時。ザンザスの8年という長い年月から覚めるまで私はずっと強さを追い求め、鍛錬を重ねて今の雪姫フィロメーナになった。


真実と決意


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