「おかあさま?どうしてボンゴレほんぶにきているの?」
「貴方にとって大事な話が9代目とあるからよ」
「9代目さまと?なにー?」
「まだ、内緒」
「えー!」
当時は日本の雪姫本家で生活していた。だけど、今日はイタリアまで2人できていた。まだ幸護は産まれて間もない2歳になったばかり。当時、幸護の子育てで忙しいお母様と2人っきりっていうのが嬉しかった。
「さあ、着いた。ちゃんと挨拶してね」
「はーい」
「9代目、雪姫です。失礼します」
「しつれいしまーす!」
お母様に習って大きく挨拶。挨拶はしっかりねといつも言われているから気をつけないとと思っていてちゃんと出来るとお母様が褒めてくれたからそれが嬉しかった。
「こんにちは、フィロメーナちゃん」
「こんにちは!9代目!」
「ほほっ元気だね」
「ええ、そうなんです」
9代目に褒められて嬉しくなる。特に9代目は優しい大好きなおじさんという印象を当時持っていたから余計嬉しい。
「昔の君にそっくりだ」
「!?いつの話ですか!」
「あわててるおかあさまはじめてみました!」
「気になるかい?」
「はい!」
「フィロメーナ!」
お母様の子供の時の話。それはとっても気になる。お母様は、9代目が9代目になってから出来たらしくそれまでは8代目の雪の守護者だったお祖母様が代理でしていた。大きくなってやっと9代目雪姫を継いだとは聞いていた。どんな子供だったのか、そして私が産まれる前に亡くなったもう1人の雪の守護者でお母様の妹である叔母様の話も聞きたかった。
「それはまた今度ね。今日は君に話があるんだ」
「?」
9代目がソファに座るようにと手で示してきたので私とお母様は9代目の向かいに腰掛ける。9代目が私にということが幼いながらも緊張していてがちがちだった。
「今日、フィロメーナちゃんを呼んだのはしばらくこっちに住んでもらいたいからなんだ」
「え?ボンゴレ、ほんぶにですか?どうしてですか?」
「それについては、私からいいですか?」
「もちろんだよ」
「フィロメーナ」
「はい」
横に座っていたお母様がこちらに身体を向ける。その表情は真剣で幼心にこっちも真剣に聞かなきゃ!という気持ちにさせられていた。
「あなたは次期雪姫を継ぐもの。私は産まれてからしばらくはあなたをこの世界から隔離して少しの間だけでも何も知らずに優しい子に成長して欲しかったの。でもね」
「でも?」
「あなたに会わせたい人ができたの。その人はね。なかなかここに馴染めてないみたいなの。だからフィロメーナが友達になってあげて欲しいの」
「ともだち……」
友達。私にはいなかった。家は同じくらいの子はいてもみんなが様付けで友達なんて滅相もない!なんてタイプの子ばっかり。かといって外にもそんな周りの子が過保護で出してくれず。友達という単語に過剰に反応してしまっていた。
「その人と仲良くなることできっとボンゴレをもっと知ることになるわ。まだ難しいことだらけだろうけどね。あなたもまだ子供だけど物わかりはいい子。もう外の世界を知っても大丈夫だと判断したの」
「引き受けてくれるかい?」
「……どれくらいお家にかえれないんですか?」
「少なくとも1年。それからは君の自由だ」
「……その、あわせたい人とあってからでもいいですか?」
「ああ、もちろんだよ。では、案内しようかついておいで」
「はい!」
9代目に案内されて本部の廊下を歩いている。どんな人なのか、仲良くなれるかなとか色々考えていて緊張してお母様の手を掴んで離さなかった。ある部屋の前で9代目が止まると、扉をノックして中に入っていく。私もそれについていく。入ると大きな机があってそこに足を乗っけてこちらを見てくる自分よりもかなり年上の少年が見えた。迫力にびっくりして思わずお母様の後ろに隠れる。
「久しぶりね、ザンザス」
「……何のようだ」
「ザンザス、君に紹介したい子がいるんだ。おいで」
「……はい」
威圧的な視線を感じて足がすくみそうになるけど、頑張って9代目の隣に移動する。身体が震えているのが自分でもわかる。
「雪姫の次期当主の雪姫フィロメーナちゃんだ。しばらく私の子になる。君の妹になる子だよザンザス」
「(あれ?9代目さっき妹になるって……この人9代目のむすこさんなのかな?)」
「……そいつが?」
「フィロメーナちゃんがここにいる間、ザンザスにはフィロメーナちゃんのお世話をして欲しい」
「え!」
友達になるだけじゃないのか。私はこの人にお世話になるらしい。大丈夫かな、やっていけるかな。不安が沢山でてくる。
「なぜ俺がガキのお守をしなきゃならねえ」
「この子が君には必要だからだよ。だからよろしく頼むよザンザス。フィロメーナちゃんもザンザスに挨拶をしなさい」
「はい………雪姫フィロメーナです…よろしく、おねがいします………お、おにいさま」
「ちっ」
舌打ちなんてされた事ないし、迫力が怖すぎて9代目の背中に逃げてぎゅうっとスーツを掴むとあやすように9代目が頭を撫でてきた。
「では、戻ろうか。明日から頼むよ」
部屋を出た所でお母様に抱きつく恐怖から解放されたからか涙も溢れてくる。泣きじゃくっていた。
「落ち着いて。予想はしていましたが、思ったよりフィロメーナは怖いみたいですね」
「そうだね。でも、2人は相性はいいと私の超直感が告げているんだ。きっとこれからよくなるよ」
「はい……」
9代目の執務室に戻ってもしばらく私は泣き続けていた。それから数十分が経ってようやく落ち着いた頃、9代目が私に優しく話し掛けてくれた。
「フィロメーナちゃん、明日からお母さんや雪姫から離れて本部に暮らせれるかい?」
「っ……がんばります。9代目がわたしにおねがいしたことですから……ちゃんと雪姫のとうしゅとしてせいちょうできるように…なりたいです」
「フィロメーナ…」
「そうか。偉いねフィロメーナちゃん」
さっきまで泣きじゃくっていたけど、9代目に褒められ撫でられ一気に機嫌を急上昇させる。単純な年頃です。
「では、明日から私の娘としてよろしく頼むね」
「はい!9代目!」
この日は、既に荷物を持ってきていたみたいで案内された部屋に1人じゃ寂しいだろうと心配してくれたお母様が雪姫の本家で私の世話をしてくれた人を数人だけ連れてきてくれてその人達と荷物整理をして終わった。